きっとシャイン様が事態を知ったら、
ご主人様を封じている結界を破ってくれる。
もちろん、封じた勇者様たちには悪いけど……。
でもご主人様が自由になることが、
私にとってなによりも大切だから。
もし勇者様にお会いすることがあったら、
その時に謝ろう。
だから勇者様、許してください……。
きっとシャイン様が事態を知ったら、
ご主人様を封じている結界を破ってくれる。
もちろん、封じた勇者様たちには悪いけど……。
でもご主人様が自由になることが、
私にとってなによりも大切だから。
もし勇者様にお会いすることがあったら、
その時に謝ろう。
だから勇者様、許してください……。
ありがとう、エルくん!
ただし、対価はお安くないよ?
それは承知の上だよね?
ッ!? 対価?
うん、対価。当然でしょ?
サララのお願いを
聞いてあげるんだから、
俺のお願いも
聞いてもらわないとね。
ニヤニヤしながらしれっと言い放つエルくん。
確かにただお願いするだけというのは
虫の良すぎる話かもしれない。
おカネかな? 何かの仕事を手伝うのかな?
でもご主人様を助けてもらうんだもん、
できる限りのことは協力したい。
私は意を決し、エルくんに訊ねてみる。
お願いって何ですか?
俺の彼女――いや、
奴隷になってよ。
どんな命令にも忠実な奴隷にね。
なっ!?
嫌ならこの話は
なかったことにしよう。
でもいいのかな?
今まで面識がなかったシャイン様に
話があるってことは、
ほかに頼れる方がいないんだよね?
エルくんは喉の奥でクククと笑った。
――私は完全に足元を見られてる。
確かにエルくんの言う通り。
でもほぼ断れないことを分かってて、
そんな要求をするなんて!
私は敵意を込めてエルくんを睨み付けた。
っ! 卑怯者っ!
嬉しいな。その言葉は
魔族にとっての褒め言葉だよ?
それくらい分かってるよね?
すごく心地いいよ。
で~もっ♪
そういう魔族らしくないところも
サララの魅力だけどね。
で、どうするの?
あまり私を
怒らせないでください。
――本気で消しますよ?
おぉっ、怖っ!
一気に憎悪と威圧感が
膨れあがったね。
そう、それがキミの本質なんだよ。
普段は理性で抑えこんでいて
表に出ていないけど、
根本にある性質は魔族そのもの。
さすが四天王の使い魔だ。
私は四天王であるご主人様の使い魔。
エルくんもシャイン様の使い魔。
立場としては同じ。
――でも実力には大きな差がある。
当然、ご主人様同士の実力差が
その使い魔である私たちにも反映される。
つまり普通にぶつかったとしたら、
私はエルくんに勝てない。
こうなったらご主人様に怒られるかもだけど、
魔王様に頼むしかない。
ううん、怒られたっていい。
エルくんの奴隷になるよりマシだ。
私がお仕えするのはご主人様だけだもん。
もうあなたには頼みません。
シャイン様に会えなくてもいいの?
ほかに手段を考えます。
さようなら。
私は立ち上がり、家を出ていこうとする。
すると私の前にエルくんが立ち塞がり、
不敵な笑みを浮かべた。
このまま帰すと思う?
残念だな、力ずくでキミを
屈服させないといけないなんて。
穏便に済ませたかったよ。
……やめた方がいいと思いますよ?
怪我じゃ済まなくなります。
私、手加減ができないので。
へぇ……。
俺に勝てると思ってるの?
はい、とっておきの
極大攻撃魔法を覚えましたから。
……そんなの嘘だ。ただのブラフだ。
でもそうでも言っておかないと、
精神的にもエルくんに優位に立たれてしまう。
それにちょっとした考えもあるし。
く……くくく……
あーっはっはっ! 面白い!
いいよ、試してごらん。
見ててあげるから。
後悔しますよ?
それが通じなかった時の
サララの絶望する顔が
見たいんだよ。
今から楽しみだ。
余裕でいられるのも
今のうちです!
私は魔法力を高め始めた。
ただし、攻撃魔法を使うためじゃない。
それはこの状況を打破するための魔法――。
失敗するかもだけど、
最近は魔法の成功率が上がってる。
スペルだって暗記してるし、
集中力も魔法力も今までにないくらいに
高まっている。
きっと成功する! 成功させてみせる!
私は自分の力を信じてスペルを唱えた。
次回へ続く!