風宮 梓

そういうことですか……。

 風宮は、新道の話を聞き終わると、ガラスのテーブルの上のレモンティーを手に取り、口をつけた。

新道 進一

 ああ……。

 俺が希に関して言えることはここまでだ。

 希が行方をくらませていた時期については俺もわからない。

 新道もテーブルの上のレモンティーを手に取る。

新道 進一

 でも、どうやって調べたんだ?

 俺と希が元上司と部下の関係にあったってことなんて、アメリカ軍のトップシークレット事項の一つだっただろ?

 新道が風宮に聞く。

風宮 梓

 大丈夫ですよ。アメリカの情報網にはハッキングしていませんから。

 風宮は笑って言う。

新道 進一

 じゃあ、どこからの情報なんだ?

 新道が風宮に聞く。

風宮 梓

 本来なら、こういった情報源は言うべきではないのですが……。

 でも、今回は大丈夫でしょう。それに今後のこともありますからね。

 これを見てください。

 そう言うと、風宮は一枚の紙を新道に渡した。

新道 進一

 今後?
 
 どういうことだ?

 新道は、差し出された紙を見るなり、新道は両膝をついて、生徒会室の柔らかな絨毯に崩れ落ちた。

新道 進一

情報源はお前かよ!

 その紙には、編入の志望理由の欄に、アメリカでの主な戦闘内容と、新道との関係について詳細に書いてあった。

 情報を漏らしていたのは、外部の人間ではなく、まさかの希自身であった。

 というのも、自分の履歴書に、国家機密級の内容を当然の如く書いていたのだ。

風宮 梓

 一応言っておきますけど、この件に関しては、一切外に漏らさないから大丈夫ですよ?

 風宮は微笑んで言った。

 そして、こう続けた。

風宮 梓

 あと、このことは希さんに直接伝えといてください。国家機密は本来、公にできないものですからね。

新道 進一

 ああ、そうするよ。

 じゃあ、俺は体育館に戻るわ。

 そう言うと、新道は立ち上がり、生徒会室のドアに手を掛ける。

風宮 梓

 新道教官。あと一つだけ良いですか?

 風宮は新道を呼び止める。

新道 進一

 何だ?

 まだ話があるのか?

 新道は風宮の方を振り返る。

風宮 梓

 はい。

 最近起きている一連の事件についてです。

新道 進一

 灰の街周辺で起きている事件についてか……。

 何か掴めたのか?

 新道は風宮に聞いた。

風宮 梓

 いいえ。

 でも、バックに大きな組織が絡んでいることは間違いありません。

 そう言うと、風宮は一枚の画像を空中に呼び出した。

 そこには、六人の人影が映っていた。

新道 進一

 どうして、こいつらが日本に?

風宮 梓

 わかりません……。

 入国審査では引っ掛からなかったので、恐らく偽造コードを使って入国したのかと……。

新道 進一

 厄介なことになってきやがった。

 新道の表情が緩む。

風宮 梓

 状況を楽しむのも良いのですが、対処法を考えてくださいよ?

 風宮は、笑みを浮かべている新道に言った。

新道 進一

 わかってるよ。

 いくつかプランはある。

風宮 梓

 では、そのプランが纏まったら、私にも報告してください。

 バックアップ程度なら力になれます。

新道 進一

 まあ、必要になったら使わせてもらうよ。

 

 そう言うと、新道は 生徒会室を出て行った。

第二十九話:《風宮と新道》

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