桜花

昨日はけいちゃんにアイスを奢ってもらったのですが

実のところ入学してから、桜花は雫としか登下校をしたことがなかった

部活の一件があったとしても、今までの習慣というか生活リズムというか…やはり先輩が欠けていることに対して物足りなさがあるのであった

桜花

ほぼ毎日一緒に居るのに、浮いた話が一個もないか
…この思いを先輩に言えたら一番いいのですが

足取りは重く、それでも前に進むのであった

そして、いつも通りの集合場所にて雫が来るのを待つ
「本当にいつものように先輩は来てくれるのかな」
一抹の不安が体内で跳ね上がる、自然と時間の流れも遅く感じられる

おっはよーす
って桜花、どうしたのその顔?

桜花

へ?
私の顔変ですか?

変っていうか…捨てられそうな子犬みたいな顔してるわよ

「あはは…」
と雫の言葉に苦笑いを示しつつ、桜花は雫の横に並ぶ

昨日の今日で雫が口をきいてくれないのではないか。一緒に登校してくれないのではないか…そんな不安を雫という存在はかき消してくれるのであった

それにしても桜花
今まで気づいてあげられなくてごめんね

桜花

何がですか?

何って…桜花の好きな人のこと

慧人君から昨日きいたんだよね

桜花

へ…え?
けいちゃんにですか?

え、ちょっとけいちゃん何勝手なこと言ってるのですか!!!
これは、つまりそういうこと…?
雫先輩に私の思い全部バレてしまっているということなのですか?待ってください。その心の準備体操がってそうじゃないですよね。あうう

脳内会議の結果、桜花は混乱するという選択肢しか選ぶことはできないのであった

桜花

いや、それは違うというか…違わないですけろぉ…

そんなに慌てなくていいよ、桜花

なかなか言いにくいことだったよね

雫は桜花の肩に手を置き、桜花が落ち着くようにと配慮をする

もちろん桜花には効果抜群である…逆の意味で

一呼吸おいて、桜花は再度雫の方に向きなおす

桜花

…そう、ですね
こんなこと言ってしまえば嫌われると思いました

何心配してるのよ
私が桜花を嫌いになる訳無いじゃない

桜花

せん…ぱい
ということは!

私の思いを知ってもなお、嫌われない…?
つまり、それはオッケーということなのでしょうか

期待高まる胸の前でギュっと手を握りしめる
そして、雫の口がかすかに開き、言葉を紡ぐのであった

私も好きだよ







二次元男子!!!

桜花

へ?

ハトが豆鉄砲を食らうとか、目が点になるとかそういう表現は小説の中の世界でのお話…そう思っていました
…この瞬間までは

やっぱり三次元より二次元よね
しかも実らない恋…あー、燃えるわね

桜花

そうですね

王子様に求愛されたり
はたまた自分の最愛の人を殺さないといけない定めだったり…最高じゃない

桜花

そうですね

あー、やっぱり恋っていいわ
いろんなことが想像できて、幸せね

隣で絶賛乙女モードを発揮している雫

桜花は生返事を繰り返すロボットにジョブチェンした気分を味わっていた

そうそう、桜花
これだけは約束してほしいんだけど

桜花

なんですか?

もう、私を置いて帰ったりしないでね

桜花

…はい

合わせたわけでも無いが揃う歩幅
隣に雫がいるこの日常に幸せを感じる…これは贅沢かもしれない

とけない魔法を掛けて、閉じ込めてしまいたい
わたがしの甘さに溺れる感覚を桜花は感じるのであった

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