セイさん! ……セイさんが、この物語を作ったなんて、知りませんでした

くそー、エンの記憶、消しとけばよかった。

こんなメタな話ってある? 

僕の作った物語の主人公と、僕が、しゃべってる。夢みたいだ

今までもずっとしゃべってたじゃないですか

それはほら、僕が知ってるだけだったでしょ。双方に知ってるって、メタメタだよ、エンのやつめ

……セイさんが、作った物語だったんですね、この話

 うん、とセイさんはあっさり肯定する。

そうだよ。僕が初めて作った物語。

さっきエンが言ってたろ、物語を書くと、キャラが勝手に動くことがあるんだ。

神様を殺そうとするなんてね……っていうか、それ以上に、まさか、物語が終わったあとに、世界壊そうとするようなやつだと思わなかったんだよ

物語の終わりのあと……の物語も、あるんですね

そりゃそうさ、物語の終わりと、人生の終わりは別。

ちなみに世界の終わりもさらに別! 

物語が終わるところまでは俺の責任、その後は別の神様に責任をなすりつけることもできたけど……まあ、僕のつくった世界だから、僕のせいだよねー

予想外だったんですね、俺を生み出したのに、俺の行動が

創作ってのはそういうものだよ……っていうか、やけにあっさり受けとるよね。君にとって僕は世界の神様! ってかんじなのに

うーん、まあ、なんだろう、しっくりきたので

あ、そうなの

 ニヤリ、とセイさんは口の端で微笑む。

その確認をしたくて、僕を呼んだの?

……いえ、お願いがあって

うーん、君からのお願いか……珍しいから引き受けてあげる。何?

この物語のクリア条件は?

 冗談のように言った。俺が何を言いたいのか察したセイさんは、えーと露骨に嫌そうな表情を浮かべる。

やだよ、そんなのないよ

率直に言いましょうか、物語が終わるまでここにいてくださいよ

僕にナビゲーターになれって言うの? 僕は、ミドリが作ってくれた物語を、外側から眺めていたいんだよ

不安なんですよ、筋道がわからないと

未来は知らない方が面白いよ

また世界ほろぼそっかなー

やめてよ、勘弁してよ

やろうと思えばできるんですか? 

だって、俺の運命は、ミドリが紡いだ物語によって決まっているはずなのに

さあ、知らない

 セイさんは、足を伸ばして、肩をすくめる。

運命なんて、あるかどうかもわからない。筋道は決まってるけれど、でも、それを壊すこともできる、かもしれない

……筋道通りになってこその物語だと、僕は思っていたけれど

 セイさんが、静かに、俺を見つめる。

もし、本当に世界を壊したいのなら、壊していいよ

9 記憶があるまま 君との再会(4)

facebook twitter
pagetop