もしかしたら、とどこかで思っていた。
もちろん、そんなことは無かった。
世界を犠牲にしても、死んだ人を生き返らせることなど、不可能なのだ。
それは、どうあがいても、できないことなのだと、身をもって知ったはずの俺は、それでも泣いた。
泣いて、魔力を使いに使って、生き返らせようとやはり試みて、そして、倒れて――目を覚ますと、青い宝石が心配そうに俺を見つめていたのだ。
もしかしたら、とどこかで思っていた。
もちろん、そんなことは無かった。
世界を犠牲にしても、死んだ人を生き返らせることなど、不可能なのだ。
それは、どうあがいても、できないことなのだと、身をもって知ったはずの俺は、それでも泣いた。
泣いて、魔力を使いに使って、生き返らせようとやはり試みて、そして、倒れて――目を覚ますと、青い宝石が心配そうに俺を見つめていたのだ。
さあ、ここからはどう動けばいいのか、知らない。
でも、きっと動きたいように動けばいいのだ。
筋道にそれそうになったら、神様が止めてくれるさと思いながら、俺は運命を楽しみにする。
ミドリが描いた俺たちのハッピーエンドを、見せてもらおうじゃないか。
俺は、青い宝石にむかって微笑んだ。
黒い魔法のビン、開いた?
え? ……ああ、いえ
貸して、持ってきてよ
開けてくださるのですか?
ああ、じゃないとエン……時間の神様が助かるのに時間がかかってしまうんだろう
俺はまず、エンの力を取り戻させた。
それから、エンとその周りにいる時の神様信者の皆々様に頭を下げ続ける予定だった、が。
魔王は……悪くない。
仕方のないことだ、彼を責めるな、いいな。
皆……いろいろ迷惑をかけた
エンは、目を覚ますと開口一番、そんなことを言ったので、ベッドの周りにいた全員を驚かせた。
魔王……少し、いいか
目覚めたばかりですから、と止める人をはらいのけ、エンは立ち上がる。俺は、言われるがままにエンについていった。
人気の少ない廊下に連れていかれ、俺は居心地が悪くてそわそわしてしまう。
なんだ、何を言われるんだ。
エンは、歩みを緩めると、くるりとこちらにきびすを返し――にやりと微笑んだ。
久しぶりだな、タカシ、と言ったか
俺は、目を丸くした。
トウコとのこと、別の世界でのときも、今も、世話になった。この世界で、やっと、トウコと幸せになることができる
……えっと
混乱しているようだな
は、とエンは楽しそうに笑うが、俺は状況が読みこめない。何が楽しいのかもわからない。
記憶は、ある……のか
ああ、神様だからな
ふん、とエンは胸を張るが、いや、それもよくわからない。
この世界で、君が壊した魔王の物語の世界のこと、そして、その罪を償うために旅に出ていたときのことを知るのは、君と、サンザシと、私だけだ
……あなた、も。どうして?
理由はふたつある。
ひとつは、ミドリという女性だったな、彼女が作った、魔王の物語の筋道に、私と君との関係性は欠かせないから、だそうだ。
記憶が残っていた方が、何かと好都合だと、セイは考えたらしい
筋道に、欠かせない……
そうだ。すでに俺は、この物語で俺がすべきことをしているが、それは君には秘密にしろとも言われている。楽しみにしてて、だそうだ
はん、とエンが笑ったので、俺もつられて笑ってしまう。エンをからかうセイさんが、目に浮かぶようだった。
なるほど……もうひとつは?
もうひとつは、セイへの借りをこれ以上作らないためだ