ミユへ

これを見てるってことは、無事にアツヒコから手紙を受け取って、俺たちが最初に出会った、3年8組の教室にいるってことだな!まずは1通目、お疲れさん!
でもあと4通あるからな!油断するなよ~笑

俺が初めてミユを見たのは1年生の頃で、廊下ですれ違って、この子めっちゃかわいい!ってずっと思ってた。つまり、初めて見たときからおれ、ミユにピンと来てたんだ。

で、3年生までまったく接点がなくって、話しかけるチャンスもなかったから忘れてたんだけど笑、神様のいたずらか、まさかの隣の席になってさ。

正直、めっちゃチャンスだと思った。だから、たくさんわざと忘れ物して、ミユと喋れる機会無理やり作ってたんだ。

知らなかっただろ?優しいミユは、しぶしぶ文句いいながらも、俺に毎回机をくっつけて見せてくれてさ。

そんなミユが俺、すっごい好きだった。今も好きだけど!

さあ、次の手紙は、どこにあるでしょう?ミユなら、わかるよね?
じゃあまたあとで。

タツキ

ミユ

先生、ありがとうございました


 九年前、私たちの担任だった工藤先生は、まだこの学校で教師として働いていた。三十代で若めの男の先生だったのに、もう髪の毛にはちらほらと白髪が混じっている。

 私はあまり行ってなかったけれど、同窓会をやるために友達がアドレス交換をしていたので、その子に連絡を取って教えてもらい、今回学校にいれてもらったのだ。

工藤先生

誕生日より、ちょっと早めに来たんだな

ミユ

ハイ。……先生、タツキもここに来たとき、先生に?

工藤先生

ああ。お前らがまだ付き合ってたなんて、知らなかったよ


 そう言って微笑む工藤先生は、高校時代の時からよく私たち二人を気にかけてくれた、とてもいい先生だった。悪いことをしたらきちんと怒り、いいことをしたらきちんと褒めてくれる。そんな当たり前のことを当たり前にしてくれる先生だった。

工藤先生

お前たちの卒業した年はな、俺がこの学校に赴任してきて、初めて三年間を通して担当した学年だったから、思い入れがあったんだ。巣立っていった時、寂しくてな……

ミユ

確か先生、卒業式の時泣いてましたよね?

工藤先生

あれは……涙ではない。汗だ


 体育教師のいいそうな発言に、思わず少し笑みが零れた。

工藤先生

……やっと笑ったな、立花。さっきから、体調が悪そうだったから、少し心配してたんだ。腕も細いし、筋肉をつけないと、老後老いるのが早くなるぞ?

ミユ

先生、それ生徒時代の時も同じこと言われました

 
 工藤先生は、やっぱり変わってない。

工藤先生

ハハ、そうか。そう言えば北川から伝言だ。“ミユの歌声が好きだ。よく一緒に歌った場所で会おう”って言ってたぞ


 工藤先生は、アツヒコくんが私に伝えてくれたように、タツキからの私への言葉を口にした。

 私はタツキが死んでしまったことを先生に言おうか迷って、結局伝えるのをやめた。

2通目 高校の教卓の落書きの隣(4)

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