タツキ

なあなあ!せっかくだしさ、どっかに俺たちがいたって証、残そーぜ!



 無事に同じ大学に合格した私とタツキは、卒業式の余韻が忘れられずに、誰もいない教室に二人残っていた。

ミユ

えっ、でも、怒られるんじゃ……

タツキ

大丈夫だって!ばれないばれない!


 タツキがイタズラっこのような笑顔をするときは、私が何を言っても聞く耳を持たないのだということを、この一年間の付き合いで知っていたから、止めてもしょうがないなと思った。


 それに……卒業式だからか、ちょっとタツキのアイディアに賛成している自分もいた。

 卒業したら、この思い出が消えてなくなってしまいそうだったから。

タツキ

どこがいいかな~

ミユ

机の裏、とか?

タツキ

でもさ、机だと案外ひっくり返したりするからバレるんじゃない?それに、机買い替えたりとか、あるだろうし

ミユ

確かに……

タツキ

あ!


 タツキは何か閃いたらしく、にいっと笑った。

ミユ

懐かしい……


 3-8と書かれた教室に一歩足を踏み入れると、ふわっと懐かしい香りが鼻を掠めた。自分たちがいたときよりも机が一回り大きく、新しい物に変わっていたことを除けば、あとは一緒だった。

ミユ

ここの席だ

 廊下側から四列目の、一番後ろ。それが、一番最初の私の席だった。その隣が、いたずら好きのタツキだ。

 ここで、何度タツキと一緒に笑ったことだろう。一緒に勉強して、一緒にお弁当を食べて、一緒にふざけて……。高校時代の思い出が、ぶわっと頭に甦る。

タツキ

ミユ!よく来れたな!

 そんな声が前から聞こえた気がして、私は教卓の方を向いた。

ミユ

……そう言えば


 卒業式の日、教卓に二人で落書きしたことをふと、思い出す。

ミユ


 もしかして……と思い教卓の裏を見ると、そこにはタツキと一緒に書いたミユとタツキの名前が、薄くはなっているがそこに確かに残っていた。そして、その隣にはアツヒコくんからもらったものと同じ空色の封筒が貼ってあった。

2通目 高校の教卓の落書きの隣(3)

facebook twitter
pagetop