早速、席を変える。私は、窓際の後ろから二番目の席だった。北川くんは、真ん中の前から二列目。隣の席になった女の子と、二人で喋っている。
せめて、二人が視界に入らない席だったらよかったのに。そうすれば、こんな黒いもやもやした気持ちを胸の中に感じなくてもいいのに。
……残念だなあ
早速、席を変える。私は、窓際の後ろから二番目の席だった。北川くんは、真ん中の前から二列目。隣の席になった女の子と、二人で喋っている。
せめて、二人が視界に入らない席だったらよかったのに。そうすれば、こんな黒いもやもやした気持ちを胸の中に感じなくてもいいのに。
ねえ
そんな中、私の後ろの席の男の子が声を上げた。
俺、目が悪くて黒板見えないから、一列目か二列目の人たちに変わってほしいんだけど、誰か変わってくれる人いない?
だってー誰かいる?
はいはいはい!
何人かの生徒が手を上げている。その中には、北川くんも含まれていた。
じゃあこれで帰りのホームルーム終わりにします。きりーつ。さようなら
さようなら
一斉に鞄を持って、みんなが部活や塾へと向かい始める中、私も荷物を整理していた。
やっぱ俺、運いいかも
じゃんけんを無事に勝ち抜き、私の後ろの席を勝ち取ったのは、北川くんだった。
北川くんにずっと後ろ姿を見られているかと思うと、授業中はいつもよりさらに気が抜けなかった。
できれば、立花さんの隣がよかったけど、後ろ姿が見られるっていうのも、なんかイイね
イタズラな笑みを浮かべる北川くんのセリフを、どういう意味か頭の中で必死に考える。
立花さん、俺……立花さんのこと、好きだよ
えっ!?
北川くんの言った言葉に、思わず大きな声で聞き返してしまった。
だって、今、私のこと好きって言った、よね……?
まだ、教室には人がいる。数人でがやがやとおしゃべりをしていたせいか、こっちの会話は聞こえてはいないようだった。
立花さんが、好きです。付き合ってください
私の目を真剣な表情で見てそう言う北川くんの瞳に、射抜かれる。
私も……北川くんが、すき、です
人に聞かれないようにと思って言葉にしたら、語尾が消え入りそうになってしまった。
それでも、私の言葉を聞いた北川くんは、ぱあっと目を輝かせて笑顔になった。
ほんと、に?
う、うん
ほんとのほんとに?
ほんとのほんと、に
や、やったー!!
北川くんが万歳して大声でそう言うと、クラスのみんなは一斉にこちらを振り返った。
あ、ごめん。嬉しくてつい
はにかむ北川くんの笑顔が、とても好きだと思った。
俺だけがこんなに好きなのかと思ってたから、嬉しい。超嬉しい
北川くんだけじゃ、ないよ。私もまた隣になりたいなって、思ってたもん……
北川くんは、少し顔を赤くして照れているようだった。
うわ、だめだ……可愛い
か、かわ……!?
可愛いなんて男の子から言われたことなんてなかったから、顔に熱が集まってしまうのを感じた。
ミユ
う、あ、ハイ!
しかも名前でいきなり呼んでくるなんて……反則だ。
慌てすぎ
だって、北川くんが……
タツキ
え?
タツキって呼んで
た、タツキ……?
よくできました
そう言うとタツキは、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。