ーー12年前・トワイライト王城

ネプ・・・ネプ!いないのか・・・?

お父様!私はここですわ!!

おお、ネプ・・・またビアンカの書斎にいたのか。

ええ・・・だって、ここには色んな物語本がおいてあって、楽しいんですもの!

そうかそうか・・・それで、何を読んでいたんだ?

「ロビン・フッド」ですわ!

!!?

私、このお話が大好きなんですの!
権力に決して屈しない、貧しい人々のヒーロー・・・ああ、私も、こんな女王になりたい・・・!

・・・・・ネプ、その話はダメだ

へ・・・?

姑息な蛮族の話じゃないか・・・そんな物語に憧れるなんて、トワイライト王家との者して、許されることじゃない。

で、でも・・・お父様!!

全く、これだから平民出身は・・・いいか、もう二度とそんな本を読んではならない。いいな?

・・・・・・はい、お父様・・・

わかれば良いんだ・・・お前は私たちの自慢の娘なんだからなーー

ネプテューン

ーーイマガイ・トワイライト前

アルト

ありがとうございました!

俺たちは、馬車での三日間の旅を終え、トワイライトに到着した。移動の間にアルマも無事に目を覚まし、今度こそ平和に過ごせると思っていた。

ルナ

無事目を覚ましたといっても、病院には行った方が良いと思うわ・・・二日間も意識が戻らなかったって、異常よ?

ネプト

そりゃそうだわな・・・どうする、アルマ?

シルフ

いらないと思うよ?寧ろ危険じゃない?

アルト

へ?どうして・・・

シルフ

医者にかかるってことは、身元が割れるってことだろう?それが天族とかに流れたりなんかしたら、また面倒なことになる。

アルト

ああ・・・そうだな。一応追われてる身だし・・・

アルマ

僕は平気だよ!ゆっくり休めたから、なんだか身体が軽いし♪

シルフ

ほら、本人もこう言ってるし

ルナ

うーん・・・アルマがそう言うなら・・・

アルマ

そういえば、ネプトはこの辺りでお別れなんでしょ?トワイライトに帰るまでって話だったし・・・

ネプト

アルマくん冷たい-!

ネプト

せっかく目の前まで来たんだ。普段入国もしないし、ちょっと見て回ったっていいだろ?

アルマ

一人で勝手にやってれば良いじゃん・・・

ネプト

俺ったらほんとに嫌われてんなー

アルト

ま、まあまあ・・・とりあえず入ろう?

シルフ

なんか・・・賑やかな国なんだな。騒ぎ声が外まで聞こえる

そりゃあまあ、トワイライトではお祭りの真っ最中だからな!

アルト

ふうわ!?

ネプト

ん・・・?

ネプト

あっ、お前・・・!

やー、おひいさん?元気してた?

アルマ

あれ!?ミッドナイトの・・・?どうしてここに・・・

ルナ

何々、知り合い?

ネプト

知り合いってか・・・義賊団の仲間だ。

ウィル

ウィル・シャーウッドって言いまーす、よろしく☆

シルフ

ネプトの兄弟?姓が一緒だけど・・・

ネプト

んにゃ、ロビン義賊団初期メンバーは、みんな「シャーウッド」を名乗ってるんだ。

ウィル

そうそ

ウィル

ま、そん中でも俺はおひいさんのトクベツだから!

ルナ

トクベツ・・・?

ウィル

んー、将来を誓い合った仲ってことかな?

アルト

!?

ルナ

まあ!!

シルフ

ほう・・・

アルマ

お幸せに

ネプト

違う!!断じてそういう意味じゃないからな!!

ネプト

お前も変な言い方すんなバカ!!

ウィル

ちぇー

ウィル

小さい頃のおひいさんはかわいかったのになー。「将来はウィルをお婿さんにしてあげますわ」って・・・

ネプト

いい加減黙らないと縛り上げるぞ

ウィル

し、縛りプレイ・・・?ごめん、お、俺慣れてないけど・・・

ネプト

これ健全な話だから!!そういう発言は極力控えろ!!

ウィル

まあ冗談はさておき

ネプト

もう俺何も言わねえ!!

あのネプトがペースを崩されてる!?
ウィルさんはくるりと俺たちに向き直り、首をかしげた。

ウィル

人数増えたよね?前は三人だったのに・・・

アルト

あ・・・あの時はルナがいなかったから・・・それに、シルフはモーヌスーンで加わったし・・・

ウィル

へー、このちっちゃいのがルナで、白いのがシルフ?

ルナ

ち、ちっちゃ・・・!?

シルフ

シルフ・タナイストです。よろしく、ウィルさん!

ウィル

うん、よろしくね☆

ルナ

ちょっとあんた!!ちっちゃいって何よちっちゃいって!!

ウィル

んあ、だって、事実だろ?

ルナ

~~~~!!!!

ルナはカッと顔を赤くして、ウィルさんの肩をたたきまくっていた。

ウィル

あっはっはっは、冗談だよ!妖精さんは可愛いなぁ♪

ルナ

嵌められたぁぁぁぁ!!!

ネプト

ほら、そのへんにしとけ…

ウィル

あははは!おひいさん、こんな楽しい人たちと帰ってきたんだねぇ。羨ましい限りだよ!

ウィルさんはぽむぽむとネプトの頭をなで、何事かを耳打ちした。それにネプトは一度頷いて答えると、俺達に向き直って言った。

ネプト

先入って観光しててくれよ。あわよくばノーツモニュメントの用も済ましちまいな。

アルマ

やっぱりついてく気満々なんだ…さっさと帰ればいいのに…

ネプト

ホント連れねーなぁ、アルマきゅんは…

アルマ

き、きゅんって…!!変な呼び方するな!!気持ち悪い!!

シルフ

そうだそうだ!アルマきゅんだなんて、俺だって呼んだことないのに!!ネプトだけズルイ!!

アルマ

シルフ…その件については後でゆっくり聞かせてもらおう……

ネプト

ザンネン!アルマきゅんの初めては俺のもんだな!!

シルフ

重ねてザンネンだがそれはないな。

シルフ

アルマのファーストキスと初恋は俺だから

ネプト

な、なんだと…!

アルト

え!?どういうこと!?

ルナ

アルマ、シルフ…やっぱりあんた達そういう…

アルマ

初恋は…そう、だけど……ファーストキスは誤解だ!!!!

ウィル

それはそれで問題ある気がするけど…

ウィル

おひいさん、そろそろ

ネプト

ん?……ああ。

ネプト

そんじゃ、俺は団の方にちょっと顔出してくるわ。

アルト

結構かかっちゃったもんね…ゆっくりしておいでよ!

アルマ

そのまま帰ってくんなばーか!!!

ネプト

はいはい、んじゃ、いい時間になったらノーツモニュメントの前な?結局みんなそこに向かうんだろうし!

ルナ

了解!行ってらっしゃい♪

ネプトとウィルさんは、来た道を戻っていった。
残された俺達はというと…

シルフ

それじゃ、俺達は…とりあえずモニュメント探すか?

アルト

そうだな…ネプトは知ってるんだろうし

シルフ

んじゃ、用が済んだらアルマは俺とデートな♪

アルマ

デート(事情聴取と処刑)だね!わかった!!

シルフ

俺の望むデートとニュアンスが違うっぽいけど…まあいっか

ルナ

それじゃ!行きましょうか!!

意気揚々と門を潜ろうとした、その時。

アルト

うわ!?

わあ!?

男の子が飛び出してきて、勢いよくぶつかってしまった…

アルト

ご、ごめんね!!大丈夫…?

助けて!!

アルト

え…?

僕、悪いヤツに追われてるんだ!!
多分、ここにもすぐ来るから、僕がどこに行ったか聞かれたら「森とは反対方向に行った」って言って!お願い!!

アルト

え、え…?わ、わかったよ…?

ありがとう、お兄さん!それじゃ!!

ルナ

な、何だったのかしら…

アルマ

ねえ、シルフ…今の子…

シルフ

……ああ、そうだな

男の子が森に向け去っていった直後、初老の男性が息を切らせながら走ってきた。

す、すみません…こ、ここに、子どもが来ませんでしたか…?10歳くらいの…

アルト

あー…えっと、それなら…

シルフ

森の方に逃げてったぜ。

アルト

シルフ!?

さ、左様でございますか…ありがとうございます!!

初老の男性はそれを聞くと、男の子のあとを追って森に入っていってしまった…

アルマ

シルフ!なんで言っちゃうの!?

ルナ

あれじゃあの子の居場所バレちゃうじゃない!!

シルフ

それでいいんだ。君たちはあの子の正体知らないからそう言えるんだ…

アルト

正体…?

アルマ

そ、それでも…

シルフ

王子様のお忍びほど危険な行為はないってこと。

ルナ

お、王子!?

シルフは見事なドヤ顔をかましつつ、アルマのことを一瞬だけするどくにらんだ。それに対し、アルマは困り顔のような笑顔を浮かべていたーー。

ーーイマガイ・トワイライト付近

ネプト

……それで、なんかわかったか?

ウィル

わかったというかなんというか…おひいさんが求めてる情報とは違うかもだけど…

ウィル

…スコアホルダーは2人…でも、願いを叶える権利を与えられる者は三人いるって話

ネプト

番人……

ウィル

なんだ、知ってたんだ。情報早いなぁ

ネプト

それに関してはあいつが教えてくれてな

ウィル

ああ…あの子?

ネプト

ああ、そうだ。

ネプト

その代わりっつーとなんか違うけど…俺の正体も割れてる

ウィル

嘘!?大丈夫?何もされてない?

ウィル

もしされてんなら……

ネプト

あーまてまて、それは大丈夫だ!何もされちゃいねえよ…

ウィル

本当?なら良かった…それならいいんだ。
俺のおひいさんに何かあったら…あの人に合わせる顔がないからな

ネプト

よせよその話は…

ネプト

で、真面目な話…そうなると今回はこっちの方が収穫ある感じか?

ウィル

そうみたいだなー…ちょっと悔しいけど…

あー!いたー!!
ピンクのお兄さーん!!

ネプト

…ん?なんだ??

ウィル

あーあ…
今日もご苦労なこって…

ピンクのお兄さん!!団長さん戻ってきた!?

ネプト

ッ!!??

ウィル

あー・・・んと、ちょっと待ってな

ネプト

オイどうなってる説明しろ

ウィル

団長に助けられたと言い張る少年A(王子)が団長に憧れて義賊団に志願してる以上。

ネプト

ウソだろ・・・

って、あれ!?

よく見なくっても団長さんじゃん!!

ネプト

あ・・・あああおう、団長だ。

ウィル

あー・・・あのな、少年。いや、この際王子と呼ばせてもらうが・・・

やだな、王子なんて言わないでよピンクのお兄さん。

エルク

「エルク」だよ

ネプト

・・・・・・・・・・・・・

ウィル

・・・・・・・あのな、知ってんだろ。義賊団と王族が不仲なことくらい・・・

エルク

うん、知ってる!

エルク

だからこそ、僕がそんな王族と義賊団の足がかりになりたいんだ!

エルク

姉さんみたいに!!

ネプト

・・・・・・・・・・・

ウィル

全く・・・

ウィル

何度も言ってるが、それは「姫さん」にもどうにもできなかったことだ。

ウィル

「姫さん」には、な・・・

エルク

だからだよ!
姉さんはそれを果たせずに消えた・・・だから!!

エルク

その意思を引き継げるのは、弟の僕だけだ!!

ネプト

・・・・・・・・・・・・・・・

ネプト

へえ

ウィル

お前・・・簡単に言うなよーー

ネプト

いいぞ

ウィル

おひいさん!?

ネプト

だって面白いじゃねえか。いなくなった姉さんの意志を継ごうっての?燃えるし。

エルク

じゃあ・・・!!

ネプト

でも、今のお前じゃ無理だ

エルク

うぐ・・・

ネプト

彼女の意志を継ぐのはお前じゃねえ・・・

ネプト

この俺だ

ウィル

・・・・・・・・・・・・・・

エルク

な・・・!!

ネプト

だからお前は・・・そうだな。

ネプト

せめて俺よりも強くなってもらおうか?

エルク

え・・・?

ネプト

俺が言ったのは、「今のお前」は無理ってことと、「彼女の意思」を継ぐのは俺だってこと。

ネプト

お前が俺より強くなりゃ、彼女の意志を継ぐ権利をやる。その後は勝手にしろ。

ウィル

おひいさん!!さすがにそこまでは!!

エルク

ほんと!?

ネプト

ああ。俺は嘘はつかねえよ

エルク

やったぁ!!

エルク

・・・あ、でも、強くなるって、どうしたら・・・

ネプト

んー・・・

ネプト

そうだな、俺と旅をしてきた奴らの仲に、ちょうど良い奴がいる。そいつと一緒に、いっちょ俺が戦闘指南してやんよ。

エルク

稽古を付けてくれるの!?やった!!

ウィル

おひいさん、何言ってんのほんと・・・?

ネプト

お前も手伝えよ?なんてったって、俺の「トクベツ」なんだからよ?

ウィル

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

ウィル

・・・もう・・・そんなこと言われたら、やるしかないじゃんか・・・

ネプト

決まりだな!んじゃ、明日の午前九時ーー

ーー11年前・トワイライト王城

・・・ねえ、ウィル?

うん?なあに?

私、やっぱりどうしてもロビンフッドになりたいわ。でも、お父様はきっとこの夢を許してくれない・・・

・・・そう、かもしれないね。
ネプテューンは王女様だから・・・

・・・・・・はあ、王族って、退屈でつまらないわ。あなたがうらやましい。

・・・・そうかい?

ええ。自由に外をかけることができて、仲間を作ることができて・・・いろいろな夢を見ることができる・・・私とは大違い。

・・・・・・・・・

私も、外の世界で自由に生きてみたい・・・夢を見続けていたい・・・対等に接してくれる、仲間がほしい・・・

・・・・・・ねえ、ネプテューン。

なあに?

本当に外の世界で生きてみたい?

ええ。もちろん

・・・じゃあさ、君が10歳の誕生日を迎えたとき、もしその気持ちに変わりがなかったら・・・

君のことを攫ってあげるよ。悪党が、マリアンを攫っていったようにーー。

第六楽章 ネプト、還り咲く 1

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