——ミッドナイト・路地裏

逃げ出してから相当な時間が経った…でも、やっぱりアルトたちは見つからなくて…すれ違いが起きちゃってるのかしら?でも、それにしたって…。

ルナ

あたし、忘れられちゃったのかなぁ…

トミー

そんなことありませんよ。アルトさんたちはお仲間なのでしょう?きっと、すれ違いが起きてしまっているだけですよ

ルナ

そうかなぁ…ところで、トミー?

トミー

はい、なんですか?

ルナ

あなた、こんなに逃げるのが上手かったなら、あの時もこうして逃げてくれればよかったのに…どうしてわざわざ捕まったの?

トミー

ああ…あれは…

トミー

ルナさん、電磁砲って知ってますか?

ルナ

…でんじほう?

トミー

はい。アンドロイドの暴走を止めることが出来る武器なんです。あの…職員の二人も持っていたと思うのですが…

ルナ

あー、あの大きな大砲みたいなやつね…あれがあると、うまく動けなくなっちゃうの?

トミー

はい…情けない話なのですが…

トミー

武器の先から、強力な電磁波が発されるのです。それによって、運動機能の一部にエラーが出て、行動不能になってしまうんです

ルナ

そうだったの…その前はずっとこの調子で逃げていたわけ?

トミー

……いえ、それが…

トミー

おかしな話なのですが、ルナさんに名前を貰ってから、なんというか…リミッターが外れた感じがして…

ルナ

???

トミー

あ、えっと…新しい力が沸いたって感じです

ルナ

へー!何かわからないけど、アンドロイドって凄いのね!!

トミー

僕も何が起きたのか…って感じですが、ルナさんを守れるなら、不利益はありません

ルナ

あなたもよくわかってないのね…でも、害が出てないのなら、心配することは無いわね!

他愛もない会話をしながら裏路地を移動する…トミーは口元に笑みを浮かべて、時折あたしの方に目を向け、様子を確認していた。ほんと、気が利く子なのね…。

ルナ

ねえ、トミーさえよければ、なんだけど…アルトたちと合流したら、あたし多分ここ出なきゃいけなくなると思うの

トミー

そうですね…第一級犯罪者認定されてしまっていますし…

ルナ

でね、もしそうなったら…あたし達の旅についてきてくれない?

トミー

え…いいのですか?

ルナ

もちろん!だって、トミーもずっとここにいたらスクラップにされちゃうんでしょう?そうなるより、あたし達とイマガイを回る旅をした方が楽しいと思わない?

トミー

そうですね…そうできたらいいと思います

ルナ

じゃあ、行きましょう!きっとみんな歓迎してくれるわ!あんたとってもいい子だし、色んなことできるし!

トミー

……はい。本当にいいのですか?

ルナ

いいのいいの!次の目的地は、モーヌスーンっていう村でね、こことは正反対で、かがくより魔法ってかんじだけど、自然が綺麗な村なんですって!

トミー

そうなんですか…僕、人口の植物しか見たことがないので、楽しみです!

トミーの掌からふわりと体を浮かせる。植物にはちょっと詳しいから、トミーがそう言ってくれたのが嬉しかったの。ちょっと興奮してたのね…トミーの周りを緩く旋回しながら、外にはとてもたくさんの植物があることを話してあげた。その度に、トミーは驚いたり笑ったりしてくれて…ちょっと調子に乗って、トミーの頭より高く飛んだ…ときだった。

ルナ

それでそれで、その花はねーー

ルナ

………あ

トミー

!!ルナさん!!

急に、視界が上を向く…あれ、あたし、どうして…羽が、うまく動かなーー

ーーミッドナイト・中央政府

アルト

まさか、隠密行動をとるために通風孔を通ることになるなんて…

俺達は、中央政府の通風孔内にいた。なぜこんなところを通っているのか…俺も途中途中で疑問になったりする…

アルマ

ネプト、本当にこの先に…君の言っている人がいるのかい?

ネプト

ああ。ここの通風孔はな、ある人の策略によって、施設のすべてに繋がってるんだ

アルト

それ…通風孔の意味あるのか…?

ネプト

それがあるんだなー…っと、このへんだな。降りる準備しとけよー

ネプトは何のためらいもなく、そばにあった蓋を開け、少し首を出して確認すると、そこから飛び降りた…え、こっから飛び降りんのか…!?

アルマ

よっ…と

アルマもほとんど躊躇いなく行ってしまったので、腹をくくって空いた穴に飛び込んだ……着地は失敗。け、ケツが……。

ネプト

あっはは、お前wwwどんくさwwww

アルマ

あ、アルト!!大丈夫!?

アルト

うう…だ、大丈夫…

ネプト

さあ、目的地はもうすぐそこだ。もうちょい頑張れ

それから俺達はまたネプトを先頭に、監視カメラの資格と思しき道をこそこそと歩いていった。大体、なんでこんなことしてまでこんなところに…?

ネプト

付き合ってもらっちゃって悪ぃな。

アルマ

別に…なんか、大事な人なんだろ?冷静装ってたみたいだけど…目が険しかったからね

ネプト

そうかよ…まあ、そうだな。大事な人だ。義賊団で世話になったじーちゃんの孫が捕まってる

アルト

孫…?本人じゃなくて?

ネプト

ああ…本人はとっくに死んじまってるよ。

おもむろに歩みを止め、俺達は一つの独房の前にたどり着いた…そこには…

ネプト

よ、お前か?ロイじいの孫ってのは…

だっ……?

まだ幼さが残る少年が閉じ込められていた。耳に何か機械のようなものを付けている…。明らかに警戒を示す少年にウインクし、ネプトは取り付けられた電子パネルを操作し、一分立たずに独房の扉を開けてしまった。

アルト

ね、ネプト!?いいの…?

ネプト

いいんだ。こんなユルい電子ロックなんかに頼ってんのが悪ぃ…時間はあんまねえんだ。話は移動しながらするから…歩けるか?

………どうして…?

ネプト

問題ないみたいだな。さ、急ぐぞ!

あっ、まっ…!!

アルト

……よくわかんないけど…大丈夫だ。俺達は何もしない。どういう風の吹き回しかは知らないけど、お前を助けに来たんだ

………はい

少年は恐る恐る独房から出て、耳元についた機械をくるくると回し、先頭にいるネプトに声をかけた。

そっちはダメです…人が歩いてきます

ネプト

あ?マジかよ

進むなら反対に…100m進んだ場所に、特定感圧式の脱出口があります。

アルマ

よく知ってるね…

逃げる準備だけはしてきたんです…いずれこうなる事は、おじいちゃんからもよく聞かされていたので…

脱出口を開くための動作はすべて覚えてますので、まずはそこに

ネプト

さすがロイじいだ…この調子だと、帰りは良い良いだな。事情説明もゆっくりできそうだ

アルト

やっとか…いや、もしかしたら犯罪に加担してるんじゃないかって気が気じゃなかったんだ…

ネプト

俺ってば信用ないなぁ…

アルマ

あんなことすりゃ尚更ね…

実際、それから先少年のいうとおりに進んでいくと、簡単に外に出ることが出来た。その間に、ネプトは簡単に事情を説明してくれた。
この少年は、かつて天才学者として名を馳せたトーマス・ロイドの孫—『エディ・ロイド』。現在、幼いながら国家学者として政府に務めているという話だったが、その裏では、知らずのうちに、首相の恐怖政治のための開発をさせられていたそうだ。戦闘型アンドロイドを制作したところで事実を伝えられ、首相に反発。アンドロイドを逃がしたために、地下独房に閉じ込められていたそうだ……。

アルマ

それは…災難だったね

エディ

はい……あの、あなた達はどこでこのことを?

ネプト

ちょーっとチーム連携をしただけさ。俺は義賊でな。ここにも何人か投入してた…

エディ

義賊…もしかして、ロビン義賊団?

ネプト

ああ。ロイじいには世話になったからな。このヘッドフォンも、ロイじいがくれたもんだ

アルト

ああ、そうだったんだ…どうしてもイマガイの世界観にヘッドフォンが合わなかったけど…

エディ

ヘッドフォン…じゃ、じゃあ、もしかして…あなたがトワイライトのーー

ネプト

おし、着いた!おい!

エディの言葉を遮るように、ネプトは大きく声を張った。すると、建物の影から男が1人出てきた…この人が、潜入してたっていう…?

ひいさん、無事だったか!

ネプト

その呼び方やめろって…ほら、こいつがロイじいの孫。保護頼む

了解!いやー、すげえぜ!政府内部の情報ダダ漏れにしたら混乱が波紋みたいに広がってよ!

ネプト

まーあんなこと画策してるなんて話流れたら混乱だって起こるさね。

アルト

え…もしかして、この情報全部流したのか!?

ネプト

ん?おう。これが本当の、政府の陰謀説だな!はははは!!

アルト

わ、笑い事じゃ…!

こんなことしたら俺達も犯罪者になるんじゃ…!?早くルナ見つけなきゃ…!

んあ?こいつが例のスコアホルダー?

ネプト

ん?ああ。

へぇ……なんかヒョロいな。

アルト

な…!

んで、こっちが…

ネプト

ああ、そうだ

へぇ、すげえな。天族なんて間近で見たの初めてだ

アルマ

ど、どうも…

……本当に生きてるみたいだ

アルマ

は…?

で、ひいさん。ロイドジュニアはどうすんだ?

男はエディの両肩をぽんと叩き、ネプトに指示を仰いだ。

ネプト

とりあえず…都市外に連れ出すしかないな。経路は前に使ったとこで…

エディ

あ、あの、ちょっと待ってください!

エディ

僕、まだ外に出るわけには行かないんです!!

あ?…だってよ、ひいさん。

ネプト

…やり残したことがあるって感じだな…でもすまんな。こっからは俺達も手伝えねえ…街中うろついてるはずの妖精を探さなきゃいけなくて…

エディ

ーールナ・シャイン、都市内での魔法使用、及び護送車からの逃亡容疑により、第一級犯罪者として手配状が出ている……彼女のことですよね?

アルマ

そ、そうだけど…すごいね。あんな閉じられた空間で…

ネプト

そのイヤホンだな

エディ

はい。このイヤホンは、都市内外すべての情報機器をハッキングし、そこから情報を得ることができます。だから…そのルナさんがどこにいるかも、すぐにわかります

そんなもんも作ってたのか…

エディ

現在は…西繁華街の路地に居るようですね…生体反応がいくつかあります。多分…かなり危険な状態かと

ネプト

すげえな…それどこ情報なんだ?

エディ

……僕が作ったアンドロイドです

アルト

え…?じゃあ、今ルナと一緒にいるアンドロイドは、エディが作ったのか?

ネプト

………マジかよ……

アルト

ネプト?

ネプト

いや…だってよ…エディが作ったアンドロイドって……

あー…そういや、戦闘型アンドロイドだったっけか?あれ凄かったよなー!お披露目会見たんだけどよ!第1作目であんなの作っちまうなんて…本当、ロイドの家系は天才ぞろいだな!!

アルマ

………え、もしかして、今ルナと一緒にいるアンドロイドって…

エディ

……そうです。僕が今まで作ったアンドロイドは、彼ただ1人……戦闘・護衛型アンドロイドT-031……何があったのかはわかりませんが、戦闘モードが起動しています…このままでは、ルナさんの安全を確保できません

ーーミッドナイト・路地裏

ー銃弾が飛んできたのは、マスターの位置から見て11時の方向。弾の速度、熱量、硬度からして殺傷能力は低い。でも、それは人間基準の話であって。妖精の身体能力基準から数値を換算ーー殺傷能力やや高。急所に当たらずとも即死するほどの威力。空気振動から予測するに、敵の数は5~7人程度。いずれも人間。いや、そんな事は二の次でいい。マスターはーー呼吸、心拍数、共に少し異常な数値を示しているが、どちらも命にかかわるようなレベルのものではない。外傷は左翼の損傷と左肩の裂傷のみ。こちらも命に別状はないものの、左翼の復元には時間が必要となるだろう。よかった。いやよくない。これが少しでもズレていたら。少しでも殺傷能力が高いものだったら。左腕が飛ぶだけでは済まなかったかもしれないーー許せない。

刺青がある政府職員

おとなしくしろ…次は外さないぞ

トミー

……マスター、大丈夫ですか

チャラめの政府職員

う、動くな!くそ、電磁砲使うぞ!

トミー

マスター…痛かったでしょう。驚いたでしょう。

刺青がある政府職員

よし、これで…!!

トミー

…………

チャラめの政府職員

お、おい…止まってねえぞ…

刺青がある政府職員

な…ん…!?

トミー

さっきからうるさいですよ……ああ、そうですか。そうですか、あなたが…

チャラめの政府職員

ひっ…!!

トミー

マスターを撃ったのですね

刺青がある政府職員

うっ…う、撃て!もっと出力上げろ!!

トミー

無駄ですよ

チャラめの政府職員

う、そだろ…!?

トミー

喜んでください。マスターを傷つけたあなた達への処遇が決まりました。おめでとうございます。まことに、おめでとうございます。

トミー

鏖(みなごろし)、です

ーー数分後・路地裏

アルト

う、わ……

ネプト

なんだこれ…

そこは、地獄絵図と言うに相応しい状態になっていた。多分、この赤いものは、全部人だったんだ……。その中心に、アンドロイドは静かに立っていた。全体的に黒いそれは、胸元に両手を当て、それに向かって、懸命に話しかけている…肌の部分に飛び散った赤い斑点がよく映えていた。先頭モードの間は、それの主人と、製作者のエディ本人しか近づけないようで…俺達は、ただ見ることに徹する他なかった。

エディ

T-031…

トミー

…!博士!よかった、博士、博士がいればもう安心です…助けてください!

エディ

……なるほど、主人ができていたんだね…

トミー

はい!とても素敵な方なんですよ!でも、さっき追っ手に撃たれて…それから、回復傾向にあるのに目を覚まさないんです!!

エディ

これは…大丈夫、気絶してるだけ…このくらいなら治せるよ

トミー

本当ですか!よかったぁ…

エディ

……T-031、無事でよかったよ、本当に…

トミー

?僕は平気ですよ!それから、僕、ちゃんと名前をもらったんです!トミーっていうんですよ!

エディ

トミー……そっか。良かったね、トミー…

トミー

はい!それから…ルナさんに…マスターに、旅に誘われたんです!行ってもいいですか…?

エディ

………ああ、もちろん。行っておいで

トミー

やった!

エディ

……でも、その前に…メンテナンスしても、いいかな?

トミー

はい。旅の途中で不具合が起きてしまっては大変ですからね!

エディ

ああ…そうだね。とりあえず、戦闘モードを解除するよ

トミー

はい!

エディ

……このまま、スリープモードにもしちゃうけど、いいかな?

トミー

ええ、構いませんよ。ひとりで運べます?

エディ

大丈夫…手伝ってくれる人がいるから

トミー

あー、そうか。戦闘モードだと、僕、誰彼構わず攻撃しちゃいますからね…

エディ

ああ…よし、終わった。
このままスリープモードに移行するね。

トミー

はい…あの、博士

エディ

うん?

トミー

僕、壊れてなんか、ないですよね?欠陥品なんかじゃ、ないですよね?

エディ

……ああ、そんなわけないだろう。君は、僕の最高傑作だ

トミー

最高傑作……そこまで言われると、ちょっと照れますね

エディ

…………

トミー

博士、僕、ルナさんから名前をもらえて、ようやく誰かの役に立てる気がするんです。

トミー

1人で追われている時は、僕、役立たずだから、博士に捨てられたんじゃないかって心配していました

トミー

でも、ルナさんが、僕はや役に立つって言ってくれて…アンドロイドの僕がこんな事言うの、おかしいかもしれないんですが…僕、すごく嬉しいんです

エディ

………そ、か……

トミー

博士…僕を作ってくれて、ありがとうございます

エディ

………………

トミー

外に出たら、ルナさんが植物についてたくさん教えてくれるんです!旅が終わったら、研究室でたくさん植物を育てましょう!きっと楽しいですよ!

エディ

………そう、だね

トミー

だから、待っていてくださいね、博士!

エディ

…………ごめん

トミー

ーーー

エディの最後の言葉に、怪訝な表情を一瞬だけ見せ、アンドロイド…トミーの顔から表情が消えた。そして、それは二度と戻ることは無かったーー。

ーーイマガイ・ミッドナイト前

ルナ

ん……うう…

あ、あれ…あたし…どうしたんだっけ…?それに、ここは…テント…?

アルト

ルナ!

アルマ

ルナ…よかった、目が覚めたんだね…

ネプト

たく、心配したんだぞ…気をつけろ

ルナ

み……みんなぁ…!!

ルナ

うえええ…怖かったぁ!!なんでいなくなっちゃうの!!バカバカバカバカバカぁ!!!

アルトの鼻先に飛びつき、思いっきりぽかぽか叩いてやった。もう…置いていかれちゃったかと思ったんだから…

アルト

いたたた…ルナ、急に動いて大丈夫?痛みとかない?

ルナ

え…?

アルマ

覚えてないのかい?君、撃たれたんだよ

ルナ

あ…そういえば…

ネプト

その調子じゃ、全然平気みたいだな。さすがロイド博士だ

ルナ

?うーん…よくわかんないけど、助かったのね!よかった!!

ルナ

あ、助かったといえば…みんなに紹介したい子がいるの!

あたしが言うと、アルトたちはわずかに表情を曇らせた…どうしたのかしら?あたし、何か変な事言った?

ルナ

今ここにはいないみたいなんだけど…トミーって言ってね、ずっとあたしのことを助けてくれたのよ!みんなを探すのも手伝ってくれて、すごくいい子なの!

ルナ

みんなと合流できたら、紹介しようと思ってたんだけど…あ、それでね、一緒に度に連れていきたいの!ね、いいでしょう?

アルト

……ルナ……その…

ルナ

なあに?あ、もしかして、上手くやれるか心配なのね!

ルナ

大丈夫!あの子も心配してたけど、取っ付き難い子じゃないわ。

アルト

いや、違くて、その……

エディ

いいですよ。僕が話します

テントの外から、アルトより幼い感じのする男の子が入ってきた。この子は…?

エディ

初めまして、ルナさん。僕は、T-031…トミーの製作者、エディ・ロイドと申します

ルナ

エディ…?え、製作者って…!?トミーのお父さんなの!?

エディ

……ええ、そうですね。お父さんです

ルナ

へえ…!あ、あたしはルナ・シャイン!よろしくね!!

エディ

はい。よろしくお願いします……突然で申し訳ないのですが…話して置かなければならないことがあります。聞いてくれますか?

ルナ

え…?ええ、大丈夫よ…もしかして、トミーのこと…?

あたしが聞き返すと、エディはこくりと頷いた。そして、あたしに金色のネックレスを差し出した。

ルナ

…これは…?

エディ

この中に、トミーの記憶メモリが入っています

ルナ

……へ?

きおくめもり?

エディ

記憶メモリというのは…そうですね、生物で言う、脳のようなものです

ルナ

脳…?え、どういうこと?トミーは…?

エディ

………トミーは……解体しました

ルナ

……かいたい…?

エディ

はい……バラバラにしたんです

え…?

ルナ

なんで!?どうして、どうして!?トミーは何も悪いことしてないじゃない!!どうして…!

エディ

そうです。トミーは何も悪くありません。悪いのは、僕です

ルナ

じゃあなんで!!

エディ

トミーは…元々戦闘に特化したアンドロイドでした…でも、そんなものを作るなんて、間違えてたんです。

エディ

何も知らなかったとはいえ、気軽に作るものではなかった…

ルナ

ならどうして…その機能だけ取り除くことは出来なかったの…?

エディ

主人を危なげなく守るため、トミーの構造はひどく複雑なものになっています。機能を一つ削除するには…解体するしかないのです

ルナ

そんな…すぐに、治せるの…?

エディ

……いえ。

ルナ

……かいたいしたら、トミーはどうなっちゃうの…死んじゃうの…?

エディ

……元々あったものと同じものは、二度と作れません…ですが、その時の記憶だけなら、なんとか残せます。それが、これです

エディはあたしの首にチェーンをかけた。チャームから、ちりん、と小さな音がした。

エディ

トミーは、あなた達と外の世界に行くことを、本当に楽しみにしていたみたいです。もし、ルナさんがよければ…彼の新しい体が完成するまで、彼を預かっていて欲しいのです

ルナ

………この中に、トミーがいるの…?

エディ

……はい。すべて聞こえてます、見えています。言葉は話せなくとも、姿がなくとも…彼はここにいます

ルナ

………

エディ

エゴなのかも知れません…でも、薄暗い研究室でじっとさせられているより、ずっといいと思うんです…どうか、お願いします…

エディが深く頭を下げる…あたしは、首にかけられたネックレスに手を当てた…

ルナ

……そこに、いるのね…トミー……

ルナ

……わかったわ

エディ

ルナさん…

ルナ

でも…約束して。次は、絶対にトミーが幸せになれる体を作って。もう二度と、かいたいしなくてもいい体を

あたしが言うと、エディはさらに深く頭を下げた。

エディ

はい…必ず…同じ失敗は、二度と繰り返しません

ルナ

…………

テントの中は、ひどく静かだった。
ただ、耐えきれずに泣き出した、あたしの嗚咽だけが、こだましていたーー。

第四楽章
ルナ、没収される   Fin

このテンションで終わると思ったか!
残念!!

次回予告だ!!!!

今までとは異なる形で新たな仲間を獲得したアルト一行は、新たなる地、モーヌスーンヘと足を踏み入れた!
しかしそこでなにやら厄介な問題に巻き込まれ・・・?

アルマ

この背景実は二度目なんだよね。

ネプト

アルバスで使おうと思ったらしいんだが、何かタイミング失ったらしい。

ルナ

作者ってばほんと馬鹿ね・・・計画性のなさ天下一品・・・

アルト

もうしょうががないことなんじゃない?諦めなよ。

そーそ。気にしたら負けだよ。そんなこと。

アルト

だよなー

アルト

ってネタバレェッッッッ!!!!!!!

おっと、わりーわりー(罪悪感0)

急にわき出た美少年少女!!果たして彼彼女の性別は・・・!?

次回
「アルマ、戸惑う」
こうご期待!!

アルト

もうほんとに何でも有りになってきたな・・・

第四楽章 ルナ、没収される 4

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