ワオーーーーンッ!!

その声は、慟哭。
その声は、懺悔。
その声は、決意。

自分が仕出かしてしまった取り返しのつかない愚行。
あの人は、自分の為に死んでしまった。
弱い自分が、殺したのだ。
愚かだった自分が、殺した。

…………。
もう、迷わない。
もう、逃げるものか。

逃げたら、迷ったら、彼女の死が無駄になる。
あの言葉はきっと激励であり、喝であり、謝罪。
頑張れであり、逃げるなであり、ごめん。
それを、生きている最後の一人が引き継がないといけない。
生きている、最後の狼である自分の役目だ。
全員、殺してやる。殺して……やるッ!!

やりたくないとか、そんなこと言ってる場合じゃない。
やらなきゃいけないことがあるんだ。
たとえ、殺さなければいけなかったとしても。
死にたくないなら……殺すしかないんだ。

だから……。
進むんだッ!!

今日は、満月だったのか。
空を見上げる一匹の狐。
やる気に乏しく、どうなろうがあまり興味がない。
死んでしまうならそれはそれでいいんじゃないかな?
どうせ、生きながら死んでいるような人生だ。
目指すことも、目指すものもない虚ろな中身。

お団子が食べたい。油揚げが食べたい。
非常事態に考えていることはこの程度。
帰れなくても、なるようにしかならない。
だから、関係ない。やりたければやればいい。
生きていれば勝つらしいから、特別何もしない。
勝手に殺し合いしてればいい。狐に関係ないから。

狐はしっぽを振りながら、月を見上げていた……。

狩人は弓を番えた。
今夜の狙いはもう分かった。
ニオイでわかる。
獣臭いあいつが狙うのは、きっと彼女だ。
優先順位を鑑みるに、きっと彼女を狙うはず。
そんなことをさせるものか。彼女を守るのは私だ。
私がたとえ死んだとしても。
彼女だけは絶対に守り通す。

あの子は希望だ。村人の希望であり、唯一の可能性。
灯火を奪われたら最後、暗闇の中を手探りで行かないといけない。
そんな危険な橋を渡らせるつもりはない。
狼の牙を、絶対に届かせない。生命に代えても!

クールに進めていこう。
霊能者は決め顔で考える。
これで有利に傾いた。
死んだ彼女は真実を言っていた。
つまりはあの少女は、本物だということになる。
いらぬ探り合いをしなくてもよさそうだ。

彼女の占い先は知らないが、きっとグレーを占うのだろう。
その結果次第で、明日の方針を決めるとしよう。
霊能者は水晶玉を弄びながら、不敵に笑う。

……。
…………。
……………………。

誰を占おうか?
怪しいと思った人?
そんなの、全員怪しい。
みんな敵に見える。
自分が白だと分かったあの人以外はみんな敵。
それを探るために、今夜動く。
もしも、もしかしたら。
これが最後になるかもしれないけど。

優先順位は、恐らく私が一番高い。
私は真占い師。一番の奴らの天敵。
狩人がどんな動きをするのかは分からない。
仮の霊能者を守るか、真の私を守るのか。
……私の生命は、私の知らない誰かにかかっている。
願わくば。私を最優先で守って欲しい。
死にたくない。お願いだから、助けてよ。
ちゃんとやるから。ちゃんと戦うから。
ねえ、私を守って。私は、価値のある人間だから。

私を、助けて。

ワオオオオオオオオオンッ!!

pagetop