蒸し暑い昼下がり
空は中途半端な雲行きで、いつでも降らせる準備だけはしてあるようだった。
気だるげなサラリーマンは手で仰ぎながらいそいそと歩いていた。

……はぁ――

深いため息を漏らし自販機を後にする。
汗はとっくに出尽くしたかのようにピタッと止まり、少し意識がなかった。

流石に……マズイかな。
とはいってもなぁ――

昔のことを思い出した。
体育祭の頃、水筒を忘れた僕にお茶を分けてくれた友人を。
彼は「気にすんな」といっていた。
その笑顔に、僕はどう答えたっけ……

こんなところで寝るとは、あまり感心できないぞ?一君

……ん?アッツ――メタい?

意識がはっきりする頃に、額に刺激が走る。
とても熱い感覚かと思った瞬間、ひやりとした感覚が襲った。

え?あ――あれ?

ふふ、面白いな。君は

なるほど、熱中症で倒れたのか。馬鹿なのか?

うん。まだ何も言ってない。

天気が悪くてもお茶を飲めと言われなかったか?
ちなみに、麦茶が良いぞ。体温を下げる効果があると先日テレビでやっていた。

それはどうも。ご親切に……

……

ん?どうした?僕の顔になにか付いてるのか?

いや、あまり無理はするなよ。
お前の人生だ。どう生きようと構わないが、誰かが心配していることを忘れるな。
たとえ見えなくても。だ……

……

分かった……

ところで、なんでこんな所にいるんだ?

たまたま用があってな。
自販機が見えたからお茶でも買おうかと思ったら君が倒れていただけだ。

なんか……おかしくない?それって

なんだ?君を尾行してるとでもいいたいのか?
そんなわけ無いだろう?自惚れるな。

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