夏の蒸し暑い空気の中。

 ほぼ人のいない夕暮れの裏門に、二人の男子生徒があった。

 果たし状を渡された新島 椿(にいじまつばき)とそれに付き合う彼の友人、相原 千秋(あいはらちあき)。  
  
  
 彼らはその果たし状の相手である1年生たちを待ち続けていた。  

新島 椿(にいじま つばき)

・・・・・・。

相原 千秋(あいはら ちあき)

・・・・・・もう諦めたら?
あれから20分待ったけど来ないじゃないか。

新島 椿(にいじま つばき)

先に帰ってもいいぞ。
俺は一人でも待つ。

相原 千秋(あいはら ちあき)

・・・・・・。

新島 蓮華(にいじま れんげ)

あ!
お兄いた!!

新島 椿(にいじま つばき)

蓮華! なぜここに?

新島 蓮華(にいじま れんげ)

千秋くんから連絡もらったの!

新島 椿(にいじま つばき)

いつの間に・・・・・・。

 なかなか帰ろうとしない椿。

 そんな友人に下校を促す為、千秋は新島の1つ年下の妹に連絡を取っていた。

相原 千秋(あいはら ちあき)

このままじゃお前、朝までいるでしょ。
何かあってオレの責任になったら困るし。

新島 椿(にいじま つばき)

・・・・・・。

新島 蓮華(にいじま れんげ)

も~!
変な事に友達巻き込んじゃダメじゃん!
ほら、帰るよ!

新島 椿(にいじま つばき)

しかし男には守るべき約束がある。

新島 蓮華(にいじま れんげ)

その約束を破ったのは相手なんだから!
お兄が気にすることないよ!

新島 椿(にいじま つばき)

それはそうだが・・・・・・。

南波 みか(なんば みか)

ではお手紙を置いておくのはどうでしょう。

 妹に説得されても更に渋る椿に提案をしてきたのは妹の友人である南波 みか(なんば みか)だった。

新島 椿(にいじま つばき)

!!

お前も居たのか、南波!
相変わらず全く居る気配を感じさせない素晴らしい隠密力だな!!

相原 千秋(あいはら ちあき)

新島の場合本気で褒めてるんだろうけど、女子にとって隠密力は褒め言葉じゃないからね。

南波 みか(なんば みか)

ふふ。
恐れ入ります、お兄さん。

相原 千秋(あいはら ちあき)

まんざらでもなさそうだなあ・・・・・・。

新島 蓮華(にいじま れんげ)

手紙なら任せて!
私がさっくり書いてあげるよ!

新島 椿(にいじま つばき)

いや、俺が受けた挑戦だ。
まだ帰るつもりはないが念のため用意しておくか。

新島 蓮華(にいじま れんげ)

お兄の字ってぐっちゃぐちゃの死んだテヅルモヅルみたいなやつじゃん?
相手読めないんじゃないの?

相原 千秋(あいはら ちあき)

すごい例え。
さすが新島の妹・・・・・・。

新島 椿(にいじま つばき)

何だと!?
心を込めれば通じるはずだ!

新島 蓮華(にいじま れんげ)

そうかなあ?
私だったらただの悪戯書きに間違えてちぎって捨てた後に靴でグリグリ踏んじゃうと思うけど。

新島 椿(にいじま つばき)

そ・・・・・・そこまでするのか。
わかった、お前が書いてくれ。

新島 蓮華(にいじま れんげ)

おっけー!
読んだ相手が感動してお兄に弟子入り求めるぐらい素晴らしい文章を書いてあげるね!

相原 千秋(あいはら ちあき)

わぁすごいね。
オレも期待しておくよ。

南波 みか(なんば みか)

れんちゃんかっこいい。

 未だ裏門に現れぬ1年生たち。

 どうしても帰ろうとしない椿に提案された解決策は彼らへ向けた手紙を書く事だった。

 果たして1年生カルテットは現れるのか?

 蓮華の書いた「相手が感動してお兄に弟子入り求めるぐらい素晴らしい文章の手紙」とは?


 次回、最終回。

第5話 椿先輩とカルテット再び②

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