ある夏の日の事だった。

 その日は特に蒸し暑く、夕暮れ時になっても空気には熱がこもっていた。

 生徒たちが続々と下校してゆく中、高校2年の新島 椿(にいじまつばき)は友人である相原 千秋(あいはらちあき)と共になぜか裏門前にいた。

新島 椿(にいじま つばき)

・・・・・・。

相原 千秋(あいはら ちあき)

・・・・・・。

新島 椿(にいじま つばき)

・・・・・・・・・・・・。

相原 千秋(あいはら ちあき)

・・・・・・暑いな。

新島 椿(にいじま つばき)

ああ、暑い。

相原 千秋(あいはら ちあき)

家に帰ってクーラーで涼もうよ。

新島 椿(にいじま つばき)

駄目だ。
1年が今日リターンマッチを申し込んできた。

相原 千秋(あいはら ちあき)

ああ、1ヶ月ぐらい前に絡んで来たとか言ってたあの1年たち?

新島 椿(にいじま つばき)

そうだ。
今朝これを渡された。

相原 千秋(あいはら ちあき)

・・・・・・ずいぶん古風だね。

新島 椿(にいじま つばき)

ああ。
あいつらも本気って事だな!

相原 千秋(あいはら ちあき)

もの好き・・・・・・。

で、約束は何時?
オレそろそろ帰るけど。

新島 椿(にいじま つばき)

時間は分からん。

「授業が終わったら、
 Back gateにCome over here!」

と書いてあった。

相原 千秋(あいはら ちあき)

新島・・・・・・それ、かわれてるんじゃないかなぁ?

新島 椿(にいじま つばき)

あいつ等は必ず来る!
そんな気がするんだ。

・・・・・・だがチャイムが鳴ってからずいぶん経つな。

相原 千秋(あいはら ちあき)

そうだね。

相原 千秋(あいはら ちあき)

正直もう帰りたい・・・・・・。
しかしちょっと面白そうだしどうするかな。

新島 椿(にいじま つばき)

・・・・・・。

新島 椿(にいじま つばき)

よし。
相原、やるぞ!

相原 千秋(あいはら ちあき)

あ・・・・・・これ話が通じない時の顔だ。
この新島は面倒なことを言ってくるぞ。

新島 椿(にいじま つばき)

暇つぶしと言えばあれしかない!

相原 千秋(あいはら ちあき)

ほらきた・・・・・・。

新島 椿(にいじま つばき)

バトルシリトリだ!!!

相原 千秋(あいはら ちあき)

またそれやるの?
新島オレに勝てたことないじゃん。

新島 椿(にいじま つばき)

だからだ!
倒すべき敵は強いほうがいい!!

相原 千秋(あいはら ちあき)

ま、どうせ暇だからいいけどね。

相原 千秋(あいはら ちあき)

■バトルシリトリとは

 面倒だが説明しよう。

 最初に相手が発した単語の最後の文字が頭に単語をつなげていく。しかし存在しない言葉(造語など)や一度発した言葉は使用できない。また、単語の最後に「ん」が付くものも使用不可となっている。

 ここまでは普通のシリトリと一緒だがバトルシリトリでは相手が発した単語よりも強そうな単語を選ばなくてはならない。

 その基準は曖昧なもので大体は新島の独断と偏見で決まる。

 ちなみにオレは34勝0敗だ。

新島 椿(にいじま つばき)

どうした相原?
急に考え込んで・・・・・・。

相原 千秋(あいはら ちあき)

や、何でもないよ。
さっさとやろう(そして早く終わらせよう)

新島 椿(にいじま つばき)

よし!じゃあ俺から行くぞ!!
ドジョウ!!!!!

相原 千秋(あいはら ちあき)

宇宙(ウチュウ)

新島 椿(にいじま つばき)

・・・・・・!!!!!

相原 千秋(あいはら ちあき)

さあ・・・・・・どうする新島?
オレに、宇宙に、勝てるか?

新島 椿(にいじま つばき)

・・・・・・。

新島 椿(にいじま つばき)

・・・・・・負けた。

いま俺はお前の心の中にある宇宙に飲み込まれていた。

ドジョウと宇宙では、力量に差がありすぎる。
さすがだ相原・・・・・・。

相原 千秋(あいはら ちあき)

まさか初っ端からドジョウが来るとは思わなかったからこっちも驚いたけどね。

新島 椿(にいじま つばき)

俺もまだまだ修行が足りないって事だな。
精進する!!!

相原 千秋(あいはら ちあき)

頑張って。
・・・・・・それにしても来ないね。

新島 椿(にいじま つばき)

うむ・・・・・・。

 授業が終わり、時間が経っても一向にその姿を見せぬ1年生たち。

 今、裏門にあるのは暑さに耐え続ける椿と

 どうせ1年たちは帰ってしまったのではないかと思いつつ、面白そうな展開になる事を期待する千秋の姿だけだった。

第4話 椿先輩とカルテット再び①

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