ドラゴンのいる環境にすっかり慣れてしまった絵梨香と鈴の心配はだんだん現実的な方向へシフトしていった
そう言えば、龍太郎って何食べるの?
そう言えば分からないわね……
ドラゴンのいる環境にすっかり慣れてしまった絵梨香と鈴の心配はだんだん現実的な方向へシフトしていった
食事か……
確かにこちらの世界での食事について考えてなかったな
いろんなもの持ってくるから、何が合うか実験してみよう!
絵梨香……だんだん楽しくなってない?
不安材料がだんだんなくなってきたからなのか、妙にテンションの高い絵梨香は鈴とともに、キッチンへ向かった。
幾許かの時間が経った後、絵梨香と鈴は様々な食材を抱えて龍太郎の元へ戻ってきた。
ドラゴンって肉食なイメージあるよね
そう言って絵梨香は生肉をとりだした。
よく考えてみれば、年ごろの女の子が生肉を両手に抱えて歩いているのだから、なかなかシュールな光景である。
なんで私まで運ばなきゃいけないのよ……
流れでついていってしまった鈴も両手にいろいろなものを抱えて戻ってきた。
どうやら、大半はスナック菓子の類のようだ
じゃあ龍太郎!
気になるものから召し上がれ!
なぜか食事する龍太郎より絵梨香のほうが楽しそうである。
ふむ……。
やはり、肉は私の口に合うらしいな
ただ、特筆して好きなものはなかったということにもなるかもしれんな
牛や豚や鳥を始め羊など、一通り食べたあとで龍太郎は感想を述べた。
絵梨香の推測通り肉は好物の様だった。
ところで、その手に持っているのはなんだ?
龍太郎は鈴のほうを向き、問いかけた。
鈴が手に持っていたのは棒状のうまい駄菓子だった。
これ?
トウモロコシを使った駄菓子よ
食べてみる?
肉食のあなたの口に合うかは分からないけど
鈴はそう言って袋から取り出した菓子を龍太郎の口めがけて投げた。
龍太郎はその菓子を器用に口で受け止める。
サクッと音を立て菓子は口の中でほどけていった。
香ばしい香りと、サクサクとした口当たりに龍太郎は強い衝撃を受けた
どうかしら?
なんだこれは!
こんなにうまいものがこの世界にはあるのか!
思いがけず龍太郎のテンションがマックスになる。
これに出会えただけで私がこの世界に産まれた意味があるというものだ……
……
……
二人は黙って顔を見合わせた。
その顔は「変にえさ代が高くならずに済みそうだね」と言いたげに見えた。