絵梨香の自宅の庭の端で鈴がボソッと呟く。
目の前には家主である絵梨香とドラゴンの龍太郎がいた。
もうすっかりこの光景になれちゃった
絵梨香の自宅の庭の端で鈴がボソッと呟く。
目の前には家主である絵梨香とドラゴンの龍太郎がいた。
見知らぬ土地に放り出されたときにはどうなるかと思ったが……
龍太郎が感慨深げに言う。
龍太郎がここにきて一週間が経過したが、特に大きな騒ぎになることもなく過ごしている。
ところで龍太郎。これからどうするの?
そうよ。
今後ずっとここにいるわけにもいかないでしょう?
元来た場所に帰るのが一番なんだろうけど
二人が龍太郎を眺める。
確かに、いくら居心地がいいといっても所詮はドラゴンだ。通常の世界にはいない生物である。
第三者に見つかってしまえば無事でいられる確証はない
いや、無事でいられることは無いだろう。
何か手掛かりとかないのかな?
絵梨香の言葉に対して龍太郎がう~んとうなりながら口を開いた
実はな、少し気になることがあるんだが……
何かしら?
私はどうもあのタマゴに封印されていたようなんだ
封印?
何か悪いことしたの?
それは分からない……
部分的にしか記憶が戻っていないんだ……
なるほどねぇ……
私は遠く東のほうからやってきた。
そこでだ、私は故郷に戻り、自分が何者であったかを探そうと思う。
えっ!?
えっ!?
龍太郎の発言に絵梨香と鈴は驚きを隠せなかった。
ちょ……ちょっと待ってよ!
いつから?いつからなの?
明日にでも行こうと思っている
急な話になってすまない
そんな……
絵梨香は目に見えて落ち込んだ。
鈴も言葉にはしていなかったが、やはり落ち込んでいるように見える。
そう落ち込まないでほしい
いずれはこうなるものなんだ……
……やだ……
絵梨香殿……
せっかくこうやって会えたんだよ!?
これも何かの縁だよ!?
そうは言ってもだな……
私もいく!
龍太郎についていって、龍太郎が何をしたのか私も一緒に調べる!
何言ってんの?絵梨香!?
絵梨香の後先考えてないような発言に鈴が待ったをかける。
しかし、絵梨香はこの意思を曲げなかった。
絵梨香殿の気持ちはありがたい……だが、それは無茶ではないか?
無茶じゃない!
私が龍太郎の飼い主として責任もって最後までついていくの!
飼い主!?
そう!
べつにドラゴンに乗るのに免許はいらないでしょ?
この考えは絶対変えないから!!!
絵梨香の強い言葉に二人は黙ってしまった
数秒の沈黙の後龍太郎が突然声を上げて笑った
はっはっは!!
こうなっては仕方ないな
いいの?龍太郎?
よくはないな
しかし、それで聞くような人間でないことは貴女のほうが分かっているのではないか?
もっともな発言に鈴は完全は黙り込んだ。
だが、大丈夫なのか?絵梨香殿
学校があるのではないか?
今は夏休みって言って、学校がお休みなの!
ひと夏の冒険ってこと!
絵梨香は自信満々に言った。
これが完全な決め手となったようだ
絵梨香ももの好きね
でも、面白そうかもしれないわ
私もついていく
え?
私がいないと絵梨香はダメダメだからね
うるさいなぁ!
鈴殿……
こうして二人と1匹のひと夏の冒険が幕を開けたのだった……