Episode 5
Episode 5
状況は説明したけど
納得はしてないね あれは
島は立一に、彼の記憶が抜けている間の経緯を一頻り説明した。
この部屋の状況、ノルやC-HU達の素性。
そして、立一の身に起こった事。
ソルの一連の出来事については、島なりに気を効かせて割愛してくれたようだ。
……
立一は眉を寄せ、こめかみを押さえる。
まぁ 普通はそうなるよな
で
今 俺達が居る部屋は
この得体の知れん奴らの宇宙船だと
そうだね
それを信じろと ?
うん まぁ 出来れば
立一は、再び黙り込むと気鬱そうに溜息を吐き、苦々しく言い捨てる。
そもそも そんな突拍子もない話
信じられる訳ないだろ
リューイチ
信じて欲しい
声の方へ目を向けると、ノルの吸い込まれるような瞳と視線がぶつかった。
……
その色彩を見つめていると、何故か気持ちが落ち着かず、わざとらしく目を反らす。
試してみるッチュか?
一体何を。
立一がそう言いかける間も無く、部屋の風景がぐるりと反転する。
うわ こんなんなってるんだ
……
初めて、この状態の部屋を見た島は、物珍しそうに辺りを見回す。
立一はと言うと
……
一瞬驚いた表情を見せるも、そのまま押し黙ってしまう。
そうして、暫くすると搾り出すような声を出した。
……わかった
頭痛がするから元に戻してくれ
あ もう戻すんだ
船内を興味深そうに観察していた島へ、立一は冷たい視線を投げつける。
当の本人は「残念」と悪びれる事も無く、意にも介していないようだが。
それじゃ 戻すッチュよ
二人の様子を見ていたC-HUは、手元にコンソールを開くと前足で器用に、それを操作する。
おー 戻った
部屋は再び反転し、元の立一の部屋へと戻っていた。
嘘じゃないって事は
分かってもらえたッチュか?
……まあ 島の悪戯にしては
手が込み過ぎているからな
酷い言われようだ
傷ついたとばかりに、近くにいたノルの肩を引き寄せる島。
ノルちゃん
立一が虐めるから 慰めて
ん…… ?
どうした 島
ノルが、抵抗しないのを良い事に、肩口に顔を埋め頬ずりする。
おい
顔がにやけているぞ 万年発情男
失礼だな
俺は 可愛い子にしか反応しないぞ
……はぁ
その様子に、半ば呆れ溜息をつく立一。
真面目に対応するのも、だんだん馬鹿らしくなってきたというのが、本音でもある。
分かった
暫く 同居って事で良いんだろ
お やけに物分りがいいね
俺が こいつらを拒否したら
どうせ お前が匿う事になるんだろう
正直この友人、頼りにはなるが信用は出来ない。
殊の外、色恋が関わると特に。
友人を
犯罪者にする訳には いかないからな
立一君 分かってるね~
シマ 全く信用されてないっていう点は
否定しないんチュね……
俺としては
ノルちゃんの一人や二人
全然 囲っちゃうけどね
島の立ち回りが功を奏し、なんとか立一の説得には成功した。
傍らで目線を上げたノルは、島と目が合ったのだが、彼は、こっそりウインクを返してくる。
島の思惑通り……といった所だったのだろうか。
ただ一人先程から、わなわなと肩を震わせている人物への対処を除いては。
オ イ……
チュ ?
そんなに震えて
具合でも悪いのか ?
貴様だ 貴様 !!
何だ その手はッ
ソルは、ノルにべったりくっついている島を指さしながら憤慨する。
んー ?
何だろうね ノルちゃん
?
島は、今にも噴き出しそうになりながら、その様子を面白がっている。どうやら分かっていてやっているようだ。
ソルが、忌々しげに睨みつけてくるのだが、ノルの腰に手を回し、さらに煽る始末。
くっ…… 貴様
二人共 やめるッチュ !
事態を静観している立一に気づき、C-HUが慌てて二人を止めに入る。
せっかく話が纏まりそうなところ、要らぬ事で立一の気が変わってしまっては、今までの苦労が水の泡だ。
今のは 島が悪いな
チュ ?
しかし、予想に反して、立一は島の方を咎めた。
? いや どう考えても
こいつのセクハラが原因だろう
はは 悪い
ソル君の反応が面白くて ついね
まったく 油断の出来ん奴だ…!
ソル 何を 怒っている ?
ノル 奴は危険生物だぞッ
ソルの必死な訴えに、ノルは首を傾げる…そんなやり取りの中。
また 騒がしいって怒られるのかと思ったッチュが……
只の頑固者って訳でもないみたいッチュ
C-HUは、独り言つのだった。