Episode 6
Episode 6
立一の部屋。
……
立一が、自室のベッドで眠っていたところ、違和感を感じたのが事の始まりである。
朝目を覚ますと、隣に人の気配を感じ身を捩った。
……
確かこの青年の名前は、ノル。
トラブルにより地球に不時着した宇宙人で、しばらくの間、立一と共に暮らす事になった。
昨日、島から話の経緯を聞いた時は、馬鹿馬鹿しい話だと全く信じていなかったのだが、この青年の持つ独特な雰囲気は、何処か不思議で惹きつけられるものがある。
宇宙人が居たら、こういう感じなのだろうか……等と、馬鹿な事を考えてしまう程度には。
いや、今は、そんな話をしている場合ではなかった。
現在、立一に課せられた最大の難問は……
すーすー……
……近い
何故か、自分のベッドに潜り込み、しがみついて離れないこの青年への対処だ。
起こすと厄介だな
主に 島が
こんな所を島に見られては、何を言われるか分かったものではない。
おい 起きろ……
すーすー……
軽く揺すってみるも、起きる気配はなく、むしろ余計にしがみつかれてしまった。
抱き枕か何かだと思われているのだろうか……。
はぁ……
立一が、為す術なくノルにしがみつかれているとバタバタと騒がしい足音が廊下から聞こえて来た。
た 大変だッチュ~ !
立一
ノルちゃんが居なくなったんだ
突如ドアが開け放たれ、慌てた様子で顔を出したのは島とその肩に乗っかったC-HUであった。
ん……
身じろぎと同時に漏れた声に、一人と一匹は、立一から目線を落としベッドの上に目を見張る。
着崩れした服に、少し乱れた髪。
小さく寝息を立て、眠るノルがそこに居た。
しかも、立一にしがみついた格好で。
いや…… 違うぞ
不穏な空気を察した立一は弁明し、ベッドから降りようとするも、どこにそんな力があるのかと思うほど眠りこけるノルの力は強く、思うように動く事がままならない。
ノル居たッチュー!
立一君
抜けがけとは やってくれるね
不敵な笑みを浮かべる島の目は、笑っていない。
立一の危惧していた事態は、そこにとどまらかった。
その背後から、ただならぬ殺気を漂わせている人物が迫って来ていたのだ。
きーーーーさーーーーまーーーーー……
うわ
もっと めんどくさいのが来ちゃった
言いながら、楽しんでいる様子の島を忌々しく思いつつ、立一はノルを何とか引き離そうと試みる。
クッ
くそ…… どいつもこいつも
……リューイチ
名を呼ばれ眼差しを向けると、眠っているノルは少し嬉しそうに微笑んだ様な気がした。
しばらくすると、 閑やかな寝息が聞こえ思わず、じっとその表情を見つめる。
……
…… 何だと言うんだ
立一は、自分の中に不思議な感情が見え隠れし、戸惑いを覚える。
ノルという人物の記憶は、今の自分には無い。
そのことに対して、胸の中へポッカリと空いた空間を感じる自分がいた。
この空間に、彼は居たのだろうか。
塵と化せ…… !!
チュッ !?
馬鹿ソル やめるッチュー !!
俺も添い寝しちゃおうかな~
貴様もかーーー !!
そんな立一の心緒を誰も知る由も無く。
騒がしくも、いつもと少し違った朝を迎えた。