新道が煙草を吸いながら、空を見つめている。
ふうー。
新道が煙草を吸いながら、空を見つめている。
いるんだろ。出てこいよ。
新道がそう言うと、体育館の扉の誰もいない場所から魔方陣が展開し、透明化の魔法を解いて、一人の生徒が現れた。
さすがですね。
ロングヘアーに、豊満な胸、しっかりと着こなした制服。そして、制服の左腕につけている黄色い腕章。生徒会長の風宮 梓であった。
気配も消していたんですが、ばれてしまいましたか。
風宮が悪びれもなく言った。
当然だ。あまり俺を甘く見るな。
新道が、煙草を口にくわえたまま言った。
何度も言うようですが、学園内は禁煙ですよ?
風宮は、新道に近づきながら言う。
そんなことを言いに来たのか?
新道は煙草を口から離した。
もちろん違います。
私が聞きたいのは、希さんの経歴についてです。
風宮は、新道に言う。
ああ、そろそろ聞きに来るころだとは思っていたよ。
新道は煙草を携帯灰皿に入れる
俺から言えることは、ここに来る前の一年間だけだ。
新道は風宮に言う。
それと、あなたがここにくる前の話。
つまり、アメリカにいた時の話もできますよね?
風宮が新道に言った。
そうか。
もう、調べ済みってことか。
新道はため息を一つする。
で?
何が聞きたいんだ?
新道が風宮に聞く。
まあ、色々と知りたいことはありますけど、まずは、あなたと神裂 希がいつ知り合ったのか。
神裂 希が、どのような訓練を受けてきたのか。
それを聞きたいですね。
すると、新道は真剣な表情をして、風宮言った。
風宮。
お前は、それを聞いてどうする?
新道は、風宮を真剣な目で見る。
私は、彼女が学園生活を送る上で危険が及ばないように配慮がしたいだけですよ。
風宮が平然と言う。そして、こう続けた。
それに、あなたも知っているかもしれませんが、私に希さんをどうこうする権限はもうありません。
風宮がそう言うと、新道は煙草を一本取り出し、ライターで火を点けた。
配慮ねぇ。
新道は呟く。
話しても良いが、俺が話すことができるのは、俺がアメリカに居た時の話と希がここに来る前の一年間だけだ。
そして、この話は俺が知っている事実だけだ。
かまいません。
新道の答えに、風宮は承諾する。
あれは、俺がアメリカ軍の教官として……。
その前に、立ち話もなんですし、生徒会室で紅茶を飲みながら話しましょう。
新道が話そうとすると、風宮がそう提案した。
……わかった。
あと、生徒会室は禁煙ですので、煙草は消していただけますか?
風宮は淡々と言う。
……今、火をつけたのに……。
新道は渋々、煙草を消した。
そして、生徒会室に向かった。
新道のやつ、どこ行ったんだ?
控え室を出た俺は、新道を探しに、体育館を出てきた。
体育館を出ると、新道と風宮会長が何かを話している。
しかし、ここからでは話の内容までは聞こえない。
俺は、新道と風宮会長の話が終わるのを待つことにした。
……わかった
新道が、風宮会長の意見に承諾し、風宮の後を追って、生徒会室のある校舎に入っていった。
あれは……。
風宮会長に新道……。
何の話をしていたんだ?
俺は、二人の後をバレないように、ついていくことにした。
二人の後をついていくと、二人は生徒会室に入っていった。
生徒会室の扉は閉められ、中の音は一切聞こえない。
そのとき、俺の電子生徒手帳に連絡が入った。
言い忘れていたが、この電子手帳は、生徒同士で連絡を取り合うこともできる優れものなのだ。
もしもし?
俺は生徒手帳を耳にあて、電話に出る。
優斗、今どこにいるの?
次の試合、私がやることになったから、審判変わって欲しいんだけど。
電話の相手は瑞希だった。
わかった。今、生徒会室の前にいるから、すぐに戻るよ。
俺は瑞希にそう言って、体育館に走って向かった。