椅子に座り、お茶を一口啜る。
その瞬間、すごく香りが広がって、
今までに飲んだことがないくらいに
味も美味しい。
なんか心が落ち着いてきて、幸せな気分っ♪
椅子に座り、お茶を一口啜る。
その瞬間、すごく香りが広がって、
今までに飲んだことがないくらいに
味も美味しい。
なんか心が落ち着いてきて、幸せな気分っ♪
なんかサララを見ていると、
シーラの姿が重なって見えるねぇ。
シーラさん……ですか……?
今まで私の世話を
してくれていた子さ。
ほんの少し前に旅に出たけどね。
そうでしたか……。
果たして再び会える日が
来るかどうか。
私の命はそんなに長くないからね。
そんな気弱なことを
おっしゃらないでください。
きっとシーラさんという方も
悲しむと思います。
ふふっ、そういう優しいところも
シーラにそっくりだねぇ。
ウェンディさんは温かな笑みを浮かべた。
なんだか私まで心が穏やかになっていくような
安らかな笑顔だ。
それでサララは何をしに
ここへやってきたんだい?
はい、実は――
私は事情を説明した。
それをウェンディさんは小さく頷きながら
静かに聞いてくれている。
全てを話し終わると、
ウェンディさんは難しい顔をしながら
口を開いた。
そういうことだったのかい。
なるほど、全て理解したよ。
何か心当たりはありませんか?
おそらくサララのご主人様は
この洞窟の奥で封じられている。
だが、残念ながら今のお前の力じゃ
破ることはできないだろうねぇ。
やっぱりご主人様に
アクシデントがあったんだ……。
ウェンディさんは静かに頷いている。
ということは、
詳しい事情を知っているに違いない。
ここでいったい何があったのだろう……。
しかしあの邪悪な魔族の使い魔が
お前のように純真な心の持ち主とは
想像も付かないね。
てはは、それはよく言われます。
でもご主人様も本当は
すごく優しい方なんです。
私は知ってます。
……なるほど。
アレス様もそれを無意識のうちに
感じ取っていたのかもしれないね。
アレス……様……?
なんでもないよ。こっちの話さ。
でもご主人様を封じるなんて、
誰がやったんだろう?
ここだけの話ですけど、
ご主人様はすごく力の強い
魔族なんです。
確かにそうかもしれないね。
でも相手が悪かったね。
ウェンディさんは苦笑した。
相手が悪いってどういうことだろう?
だってご主人様は魔王様の四天王の1人。
逆の立場なら話は分かるけど……。
つまり相手はもっと強い力を持った誰か――
ここに残っている気配!
もしかして、
ご主人様を封じた人のものっ!?
ほぉ、それを
感じ取っているのかい。
四天王の使い魔ってだけはあるね。
ご主人様が魔王様の四天王だって
ご存じだったのですかっ?
魔界でもまだ
そんなに知られていないのにっ!
まぁね。話だけは聞いている。
詳しく教えていただけますか?
誰がご主人様を封じたのです?
……勇者様の一行だよ。
ふぇっ? ゆ、勇者様っ!?
かつて先代の魔王ミュラー様を
倒したという、あの勇者様っ?
その御方の子孫さ。
…………。
――それで納得した。
相手が勇者様なら、
ご主人様が封じられてしまったのも頷ける。
ご主人様はもちろん、
私みたいな使い魔じゃどうにもならない。
きっと封印を破ることなんて無理だ……。
でもね、勇者様を
恨んではいけない。
あの魔族の命を助けたのは、
ほかならぬ勇者様なんだからね。
えっ!?
勇者様がご主人様をっ?
殺されそうになったところを
勇者様が助けたんだよ。
その後、
ウェンディさんは事情を説明してくれた。
それを聞いて私は涙が止まらなくなる。
勇者様には感謝してもしきれない。
なんて慈悲深い方なんだろう。
ご主人様が今までやってきたことを考えれば
問答無用で滅されてしまっても文句は言えない。
それなのに仲間を説得してまで
ご主人様の命を助けてくれた。
しかもご主人様は勇者様に
敵対する意思を示しているにもかかわらず。
いつかお会いして、お礼を言いたい……。
……ご主人様のところへ
行っておやり。
封じられていたとしても、
話くらいはできるだろう。
はいっ!
茶を淹れてくれた礼だ。
途中まで案内してやろう。
ありがとうございますっ!
私はウェンディさんに頭を下げた。
いよいよご主人様に会える。
元気でいてくれるといいな……。
次回へ続く!