ご主人様の気配が消えたのは、この洞窟の奥。
きっと何らかの手がかりがあるに違いない。
――でもこの洞窟、普通とちょっと違う。
モンスター除けの結界が張ってあるし、
何かとてつもなく強い力の残滓を感じる。
ご主人様に異変があったとしても
おかしくない。
ご主人様の気配が消えたのは、この洞窟の奥。
きっと何らかの手がかりがあるに違いない。
――でもこの洞窟、普通とちょっと違う。
モンスター除けの結界が張ってあるし、
何かとてつもなく強い力の残滓を感じる。
ご主人様に異変があったとしても
おかしくない。
気を引き締めて行こう……。
私はお腹に力を入れ、
意を決して中へ入ろうとする。
ちょっと怖いけど、
ここまで来たら躊躇なんかしていられない。
このまま少しずつ奥へ。
何者だね?
ひゃっ!?
突然、後ろから誰かが声をかけてきた。
ビックリしながら振り向いてみると、
そこには見知らぬおばあさんが立っていた。
洞窟の横にある小屋から出てきたみたい。
すごく生命力が弱ってる……。
おばあさんには活力が感じられない。
でもなんだろう、
この圧倒されるような迫力は。
睨まれているだけで立ちすくんでしまう。
そしてこの感じ、人間じゃない。
どちらかというと私たち魔族に近い種族だ。
っ? ……あんた、魔族だね?
何をしに来たっ?
おばあさんの目つきが鋭くなった。
敵意と憎しみに満ちたような雰囲気。
必死に命の炎を燃え上がらせている。
いけない、このまま緊張状態が続くと、
ますます体が弱まってしまう。
あのっ、私は怪しい者ではありません。
確かに魔族ですけど、
敵対する気なんてありませんので。
だからどうか楽にしてください。
魔族の言うことなんて
信用できるものか。
お願いです、落ち着いてください。
あなたの体に障ってしまいます。
私のせいで命が縮んでしまったら
悲しいです……。
自然に私の目から涙が溢れた。
私は指でそれを拭い、おばあさんを見つめる。
……娘さん。
確かにあんたには邪念がないね。
魔族にしては珍しい。
あんたを信じることにするよ。
正直、戦ったところで
今の私では勝ち目などない。
自分でも分かっているさ。
おばあさん……。
よろしければ
お話をさせてください。
お訊ねしたいこともあります。
分かった。小屋の中へお入り。
おばあさんは私を温かく迎え入れてくれた。
私は恐縮しながら小屋の中へ入る。
小屋の中には少し前まで誰かがいたような
気配が残っていた。
それも1人や2人じゃない。もっと大人数。
それにどれもそれぞれが大きな力を
持っているような感じ。
いったい、
ここにはどんな人たちがいたのかな……?
お茶でも淹れてやるよ。
椅子に座りな。
あっ、いえっ!
それなら私がお淹れします。
おばあさんは休んでてください。
そうかい?
それじゃ、
そうさせてもらおうかね。
おばあさんは椅子に座り、
入れ替わりに私はお茶の準備を始めた。
どれも年期が入っている道具。
でもすごくキレイに手入れされている。
きっとお世話をしている人がいるんだろうな。
娘さん、名前は?
サララと申します。
私はウェンディ。
サララ、
随分と手慣れているようだね?
はい、家でよくやっていますし、
ご主人様のお世話をする時にも
やっていますので。
ということは、
サララは使い魔なのかい?
はい。ご主人様は、
デリン様という魔族です。
ほぉ……。
えっと、お茶が入りました。
熱いのでお気を付けください。
ありがとうよ。
私はお茶をテーブルへ運び、
一緒にご馳走になることにした。
次回へ続く!