神裂 希

 はあ、はあ、はあ……。

 私は、信也の攻撃をかわしつつ、信也に攻撃が通じないことについての打開策を考えていた。

榊原 信也

 避けてばかりだと、制限時間が減っていくぜ!

 一試合の制限時間は、三十分と限られている。

 だからといって、打開策の無いまま突っ込めば、体力的にこっちが負ける。

 この間にも、信也は簡易デバイスの斧を振り回し、こっちを威圧してくる。

 しかし、どうして攻撃が通らないのか。

 優お姉さんとの試合でも、こんなに攻撃が通らなかったことは無かった。

神裂 希

 次の攻撃であなたの攻撃を見破る!

私は小さく呟き、再び簡易デバイスの刀を構える。

榊原 信也

 お、覚悟が決まったのか?

 信也が斧を構え、体勢を整える。

神裂 希

 そうですね。

 おそらく、次の攻撃で試合は決まります。

 私は、笑顔で信也に返事をする。

榊原 信也

 へえ、この状況を切り抜ける方法を思いつくとはね。

 たとえ、この試合で負けたとしても、俺は、希ちゃんのSクラス編入の許可をしてあげようと思ってるんだけど。

神裂 希

 いいえ、その必要はありません。

 私は剣を構え直す。

神裂 希

 行きますよ!

 私は一気に距離を詰め、信也に近づく。

榊原 信也

 いいスピードだ。でも、これで終わりだ!

 信也が斧を大きく引き、最大限の力で斧を横一文字に振り抜こうとする。

神裂 希

 思った通り。

 私はそう呟き、自分のデバイスを信也の顔面を目掛けて投げる。

榊原 信也

 え?

 信也は予想外な出来事が起こったかのような声を出し、なすすべなく顔面に私のデバイスが当たり、私のデバイスは信也の上空に跳ねた。

神裂 希

 言ったでしょう。これで終わりです。

 私は、そのまま地面を蹴り、信也の顔面で跳ねたデバイスを掴み、そのまま簡易デバイスを起動。

 そのまま信也目掛けて攻撃を当てる。

榊原 信也

 しまった……。

 「BATTLE END!」

 試合終了の合図の機械音が鳴り、デバイスの武器化が強制的に解除される。

 信也の顔の寸前で、武器化が強制的に解除され、デバイスが元のサイズに戻る。


 そして、体育館が岩場のステージから元の体育館に戻る。

神宮寺 瑞希

 そこまで!

 瑞希は試合の終了を宣言する。

神裂 希

 わっ!

榊原 信也

 マジかよ!

榊原 信也

 うっ!

神裂 希

 きゃっ!

 私は、そのまま信也の上に落ちた。

 「ワァァァァー」

 「よくやったー」

 あまりの急展開に、度肝を抜かれた観客は、一瞬の間を置いて、一気に湧き上がる。

神宮寺 瑞希

 ただいまの試合、神裂 希さんの勝利!

 瑞希が試合の勝敗を宣言し、会場は、より一層湧き上がる。

神裂 希

 いたた……。

 あの、すみません……。

 私は、信也の上から勢いよく退き、頭を下げる。

榊原 信也

 いや、良いんだ。

 こっちは大丈夫だから。

神宮寺 瑞希

 ほら、あなた達、握手しなさいよ!

 試合の最後は握手が原則でしょ!

 神宮寺 瑞希が小声で私と榊原 信也に言ってくる。

榊原 信也

 お、おう。そうだった。

 信也は私に手を出して握手を求めてきた。

神裂 希

 ありがとうございました。

 私は信也と握手をした。

榊原 信也

 今度やる時は、瞬間練成を見せて欲しいな。

神裂 希

 そうですね。考えておきます。

 私は笑顔でそう言って、握手した手を離した。

神宮寺 瑞希

 では、これから三十分間の休憩を挟みます。

 なお、この試合は一応録画されていますので、もう一度見たい人は、封筒に名前とクラスを書き、五千円を封筒に入れて、ここにある「購入BOX」に入れてください。

 後日、各クラスにお送りしまーす。

 瑞希がちゃっかり資金を稼ぐための宣伝をしていると、静香が瑞希に近づく。

霧裂 静香

 瑞希、少し話があります。

 そう言って、静香は瑞希を体育館の外に呼び出した。

第二十三話:《歓迎試合~黄金の魔斧3~》

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