ダン・ニャムニャは僕を地下室に連れていった。
埃っぽくて不気味な階段を下って行くと、
色んなものがごちゃごちゃに置かれた倉庫みたいな空間が広がっていた。
部屋のちょうど真ん中あたり。
床に何か描かれてる。
数字や文字や図形が複雑に組み合わさった……これって、魔法陣ってやつじゃないかな。
そうと決まれば善は急げだ!!
ダン・ニャムニャは僕を地下室に連れていった。
埃っぽくて不気味な階段を下って行くと、
色んなものがごちゃごちゃに置かれた倉庫みたいな空間が広がっていた。
部屋のちょうど真ん中あたり。
床に何か描かれてる。
数字や文字や図形が複雑に組み合わさった……これって、魔法陣ってやつじゃないかな。
さて、相談者一号くん。
君は故郷の街を歩いている際に、何やらおかしな状況に遭遇した……というか《襲撃》に遭った、といったほうが正しいか……。
ここまでは合っているかな?
どうしてそのことを知ってるの……?
スーパーイケメン相談員、ダン・ニャムニャ様の手にかかれば、気絶している相談者の頭の中を覗き見するなんて朝飯前に決まっているだろう。
それってあまり、自慢してはいけないことのような気がするけど……ニャムニャさんはお構いなしだ。
そして君は、襲って来た《敵》に倒されて……死んだ! めでたく冒険失敗! という筋書きだ。
冒険失敗……? 死んだ!?
あのままだったら……って話だけどな
なんだ、そういうことか。
いきなり「死んだ」とか言われてびっくりしたが、言い方が紛らわしすぎるだけみたいだ……。
しかし……今のままここを出ても、君は遅かれ早かれ死ぬ。そうではないかね?
うっ……
確かに。
という言葉を思わず飲み込んだ。
僕はあのとき、突然現れた《何か》になすすべなく――気がついたら、ここにいたんだ。
もしもあのままだったら、本当に死んでいたかもしれない。
安心したまえ。
俺様はどうすれば君の冒険が成功するのかを考えるためにいるのだからな。この相談所を訪れたからには、大船に乗ったつもりでいたまえよ、少年!
不安を和らげるように、ニャムニャさんは言う。
自信満々といった口調が、心細い気持ちを不思議と奮い立たせてくれる……そんな気がした。
まっ、敵を知れば百戦危うからずだ。
まずはお前を襲った《敵》が何なのかを知るところからはじめようじゃないか。
ニャムニャさん……
華麗なるダン様と呼びなさい
嫌だ!
意外とハッキリ物を言うよね、君……
さて、はじめよう
気を取り直して、ニャムニャさんは僕を魔法陣のそばに立たせる。
行くぞ~?
そして、持っていた杖を構え、振りかぶった。
ちょうど、野球のバットみたいに。
これからまさにフルスイングしますってポーズで。
待って……何するの!?
君は事件の混乱で敵の形状を認識できていないが、頭のどこかには残っているはずだからな。
こういうのは頭の中から取り出して、実際に見てみるのが一番いいんだ。
じっとしてろよ~?
何を訳のわからないことを……うわ、やめろ~~~!!
所長の杖は綺麗な弧を描いて、僕の頭を打ち抜いた。ばこーん! ……という頭蓋骨が砕け散る音はしなかった。
杖の先は僕の頭を通り抜けて行った。
ピカッ。
閃光とともに、魔法陣が輝きはじめた。
その前で、ニャムニャさんは頬杖を突いて、なんだかワクワクした表情をしている。
さ~て何が出るかな?
大本命はドラゴン、しかしゾンビやゴーストといった線も捨て難い。
それともはたまた宇宙生命体とか……?
いったいこの人は何を言ってるんだ…?
そのとき、魔法陣にある変化が起きた。
不思議な音と共に、煙が湧く。
そして、何もなかったはずの魔法陣の中心に《何か》が現れた。
僕たちは煙の向こうに目を凝らす。
……そこにいた《何か》の姿を見て、ニャムニャさんは驚きの声を上げた。
こ……これは……!
これは……?
これは……
これは……?
何……?
知らないのかよ!!!
僕は突っ込んだ。
なんであの妙なバケモノが実際に魔法陣の上に現れたのかとか、あれだけ思わせぶりで自信満々だったくせに全然知らなかったという事実とか、気になることはたくさんあったけれど、今季一番の鋭いツッコミができたのであまり引きずらないことに決めた。