召喚士さん、下がってください!
ゆ、勇者様!? でも……
どうか、お任せくだされ!
伊達にこれまで剣術の修業をしてきたわけではない。
こんな時こそ……女性を守らなくてどうする!
お言葉を返すようで恐縮ですが……
私の方が攻撃力が高いですよ?
その証拠に、ほら……
レベル:20
攻撃力:267
防御力:255
すばやさ:152
魔法力:102
固有スキル:有
レベル:75
攻撃力:335
防御力:359
すばやさ:331
魔法力:863
ね?
……
と、とにかく、気合ですぞ!!!
あら? よく見れば、勇者様に固有スキルが発現してる……?
しかも……!? これは……!!!
そして、魔獣が姿を現した!
「スライム」 魔獣レベル1
スライムですね……
ならば、殺生せずとも……
いいえ! 容赦なく、ぶっ〇しちゃってください!
え……!?
大丈夫ですから!
一思いに、サクッと……
いやいやいや……何が大丈……
プルルー!
そうこうしている内に、スライムが襲ってきた!
南無三!
「プ……ル、ル……」
……すいません
勇者様、謝る必要はありませんよ?
え?
プルルン☆
な、何と……!?
確かに斬りつけたはずのスライムが……生きていた。
しかも、先ほどの禍々しい殺気は微塵も感じられない。
いや……むしろ、犬であった時のチャッピーにも似た可愛らしささえ感じる。
固有スキルのおかげですね!
? 固有スキル?
召喚士さんの話によると、私に「固有スキル」とやらが発現したらしい。
その固有スキル名は「リストラクチュアリング」。
あの荒々しかった魔獣のスライムが、愛らしいスライムへと変貌したのは、その「固有スキル」の効果とのこと。
なお、固有スキルというのは一定のレベルに達すると、個人の資質等により発現する能力との説明であった。
固有スキル:有
スキル名 :リストラクチュアリング
スキル効果:斬った相手の殺意や悪意を斬り捨てる
な、なるほど……?
これはすごいことですよっ!
なぜなら……
魔王に一撃でも浴びせれば……我々の勝利なのですからっ!
なっ……
何ですとー!!!
魔王を倒し、この世界を救うだなんて、私には正直、荷が重いと感じていたことは事実である。
一方、会社をリストラされ、何をすべきか見失っていた私にすべきことを示してくれたこと。
そのことにどうにかして報いたいという気持ちがあったこともまた事実。
それが……たった「一撃」。
いや、その一撃を入れることは至難の業であることは想像に難くない。
……でも、相打ちならば、何とかなるかもしれない。
たとえ刺し違えても、この世界の方々の為になるならばこの命、惜しくはない……
必ずや魔王を倒してみせますぞっ!
勇者様……その意気です!
んー、困ったことになりましたねぇ?
岸壁の上から、聞き覚えのある声。
その声は……もしや!?
どうも、お久しぶりです♪
ローブを脱ぎ捨て、現れ出たのはいつぞやの刺客。
その隣にはゴーレムの姿。
念のための監視でしたが……さすがに危ない芽は摘んでおきましょうか
魔王様には後で叱られるでしょうけどね……ふぅ……
さぁ、お行きなさい!
勇者様! 備えてください!
がってん承知の助!
ゴーレムが雄たけびを上げながら、落下してくる。
師匠殿から学んだ技を繰り出すべく、剣を強く握りしめ、私は構えた――。
-次回を待てっ!-