休憩を入れながら走り続けると、大きな町に来た。
森の道をどこまでもどこまでも行った先。
街と街を繋ぐ街道では行けない、どこの町にも繋がっていない町。
休憩を入れながら走り続けると、大きな町に来た。
森の道をどこまでもどこまでも行った先。
街と街を繋ぐ街道では行けない、どこの町にも繋がっていない町。
……これじゃあラック・バードも見つけられないな。
ナタリーは息を整えながら、辿り着いたばかりの街を見渡す。
ついたね。ここに夢見のペンダントがあるよ
……そうみたいだね
チカラの膨らみを感じる。
そしてここに、フェミリアもいる。
ナタリーは少し緊張していた。
金持ちの求婚から逃げたのはいいが、どうしてこんなところまで来てしまったんだ。
行く当ては他になかったのか。
今どうしているのか。
ひとりで生きているのか。それとも誰かと一緒なのか。
あっちだよ。行こう
ナタリーは預言者の後をついていく。
庭先の花が黒かった。
淀んだ空気がその家を包んでいる。
遅かったか!?
ナタリーがその家へと走り出すと、預言者もあわてて後を追った。
フェミリア!
大きな音を立ててドアを開く。
フェミリアが倒れていた。
あああぁぁぁ。なんてこと……!
ナタリーは膝から力が抜け崩れ落ちる。
おっと
預言者がそれを支えた。
フェミリアは、とても穏やかな表情をしたまま倒れていた。
死んで……いるのかい?
夢見のペンダントに中てられたんだ。
……生きているほうがすごいよ
どなたです?
ナタリーの知らない若い男が、奥の部屋から現れた。
目の下は窪み、やつれているようにも見えた。
フェミリアの、おばだよ。こっちは……
預言者
ナタリーが名乗ると、若い男は驚いたような表情をした。
あなたがフェミリアの。
……彼女はずっと貴女に会いたがっていた
あんたこそ誰だい?
僕はフェミリアの夫、アルフです
夫!?
ナタリーは驚いて、再度倒れそうになった。
フェミリアが結婚したなんて聞いてない。
だが、読めてきた。
そうか。フェミリアはこの男のために逃げたのか。
……フェミリアと一緒に暮らしていたんだね?
はい
説明してくれるかい?
アルフは、フェミリアやこの家で起こったことを説明した。
何がなんだかよく分かりません。だけど僕はフェミリアを救いたかった
……そうかい
ナタリーはフェミリアに近づくと、両手をそっとフェミリアの額に乗せた。
預言者。
どうすればいいか、分かるかい?
僕の予言には何も出てこないよ。
おそらくはこのまま……
役立たず
ひどい
過去の文献を読み漁るよ。チカラに対抗する、何か出来ることがあるかもしれない
ん。分かった
僕も手伝います!
期待してるよ。フェミリアの旦那さん
ナタリーはテレポートの能力を最大限に生かして、持てる限りの書物を持ってきた。
預言者とアルフは読み解きながらチカラに対する記述を探し続けた。
遺体が腐敗する前に。
寝る間も惜しみ根気よく探し続けると、アルフがひとつの記述を見つけた。
森に迷いし万物のチカラ
これを封ずるは月の光なり
満月の浮かぶ澄んだ水面
チカラはここで解き放たれり
これは……!
謎解きみたいだね
いや、すぐに解けると思います
アルフは書物を覗き込んだ後、地図を開いた。
ひとつを指し示しながらアルフが口を開く。
“澄んだ水面”は多分このシャル湖のことです。
精霊が澄んでいるおかげで水が綺麗なんだと言い伝えがあります。
月の影も水面に映るんじゃないでしょうか。
満月が水面に映れば……
アルフは物知りなのだろうか。
ナタリーは感心しながら聞いていた。
なるほど、ここにチカラに中てられたフェミリアを連れて行けばいいんだ。
チカラが解放されれば、フェミリアは元に戻るかもしれない
満月って明日だよ。間に合う?
……満月が明日なんてちょうどいいじゃないか。
あたしを誰だと思っているんだい?