お告げだったんだ。
君を探しながら、あのチカラを見つけてしまった。
君も知っているだろうけれど、あのチカラは万物を凌駕する。
まさか御伽噺のようなそのチカラに遭遇するとは思っていなかった。
このままでは暴走し、森が危険だ。
見つけてしまった以上、何もしないわけにはいかなかった。
僕に出来ることは、そのチカラをどこかに封じ込めることだった。
たまたま持っていたペンダントに、月のパワーを借りて、そのチカラを封じ込めることに成功した。
これが夢見のペンダント。
僕自身は初めて作ったけれど、過去の資料の中に、僕みたいな不思議な力をもった人間が何度も夢見のペンダントを作っている。
僕は預言者なんだ。
未来を占うことができる。
ただの占いじゃないよ。
予知能力のようなもの。
キミの能力とは違うけど、僕も普通の人じゃない。
……だから、会いたかったんだ。
あの夢見のペンダントは僕が作った。変な言い方をすると、初めて作った割にはうまく出来たんだよ
…………
あの子なら……。僕の予言に出てきた女の子なら、こんなチカラになんて負けないんじゃないかって思った。
だけど、甘い期待だったみたい
フェミリアは普通の女の子だよ。そんな女の子が、万物のチカラに敵うはずがないんだ。
……本格的に暴走を始める前に止めないと、あの子が死んでしまう
……ごめんね
あんたが謝ることじゃない。分かるよ、どうしようもないチカラを見つけてしまったんだからね。
……わたしが見つけていたって、多分同じことをしていた
目の奥が黒い。そして表情がゆがみ始める。
見る見るうちに、フェミリアがフェミリアでなくなっているようだ。
……どうして、こんなことに……？
アルフは身体が麻痺したように動けなくなっていた。
呼吸も苦しい。
わけも分からず、だけど異常な状況だということだけが理解できた。
フェミリア……
最後の力を振り絞り、名前を呼ぶ。だけど、届かなかった。
伸ばした右手が宙を掴む。
うふふ……
フェミリアは笑っている。
黒く、歪んだオーラを纏ったまま。
……まだ、かなり遠い
森の道を、駆け足で進む。
詳しい事情は分からないけれど、金持ちの求婚から逃げてお尋ね者になっているらしいからね。相当遠くまで逃げたんだろう
静かに暮らしていたナタリーに体力はない。
走っているうちに息が切れだし、額に汗も浮かんできた。
抱っこしようか？
嫌だ
遠慮しなくてもいいのに
そんな顔をしても駄目だ
ケチ
ケチじゃない
まるで子供のような会話をしながら走っていく。
……空が飛べたなら。
幼い頃に夢想して、だけどその能力は身につかなかった。
ナタリーに持っているのは浮遊とテレポートの移動能力。
ただし移動できるのはかつて行ったことのある場所のみ。
フェミリアがどこにいるのか分からないから、使えない。
そうだ、いいこと考えた！
預言者が声を上げる。
やっぱ抱っこしてあげる。そして僕を君が浮遊すればいいんだよ。そうすればお互い楽だし、空を飛べる！
…………
え？ 何？ その目
もう突っ込む気力もないよ
走り続ける。
気付くと、アルフが倒れている。
フェミリアは何が起こったのかわからず、急いで駆け寄った。
アルフ？ アルフ！ あぁ、いったいどうしてしまったの、アルフ！
揺さぶってもピクリとも動かない。
アルフ！ アルフっ！！
アルフは目が覚めない。
悲しみにフェミリアは涙した。
あ、そうだ、これがあるわ！
思いつくと、フェミリアは夢見のペンダントを取り出した。
お願い、アルフの目を覚まして……！
夢見のペンダントがきらりと輝く。
光がアルフを飲み込むと、ふわりとやさしい何かに包まれた。
アルフは目を覚ます。
あぁ、アルフ……。よかった
フェミリアはアルフに抱きついた。
フェミリア……。よかった、もどったんだね
アルフの言っていることがフェミリアには分からなかったが、生きているアルフの存在が嬉しくて、何度も頷いた。
よかった、わたし、アルフに何かあったら……
フェミリア？
最後まで言うことができず、フェミリアは崩れ落ちた。
