・・・・・・・!!

愁弥

ちょっ…何なんだよ!!

こちらへと伸びてきた手を振り払い、背後にある闇へと走り出した。
謎の男は自分を追いかけてきているようだ。
先の見えない恐怖と得体の知れないモノに追われる恐怖にどんどん追い詰められていく。

俺は後ろを振り返らずに走り続けた。
しばらく走って振り返ると、そこには誰もいなかった。

愁弥

振り切ったか?

安心してため息をついた。
これだけ走ったのに、自分は汗一つかいていない。

愁弥

突然の出来事で忘れてたけど、これってゲームの中だよな…。
リアル過ぎて下手な悪夢より性質が悪い。

やっと捕まえタ

愁弥

まだいたのかよ!!

背後から低い男の声が響き、気づいたときには身動きをとれないようにされていた。
男の手とは別の異形なものの手が俺の首をゆっくりと絞める。

また逃げようとしたら、脱落させル。
私の話を聞こうとしないのも許さなイ。

愁弥

わかった。逃げないから。話聞くから。
とりあえずこの状態は話を聞けるような状態じゃないから放してくれ。

…わかっタ

やり方は乱暴だが、敵意はないのかもしれない。
俺は手を放して貰うと、少し距離をとった。

ようこソ、プレイヤー。
お前は不運にも、敵サイドのプレイヤーとしてこの世界に登録されタ。

お前の友人たちと行動を共にすることはできなイ。

愁弥

敵サイド…じゃあ、俺は他のプレイヤーの妨害をすればいいのか?

あァ。

お前のクリア条件はただ一つ。
他のプレイヤーを全滅させる事ダ。

私はお前のパートナー。
お前がこの世界で悪役を全うする限り、私は味方ダ。

愁弥

悪役に味方だって言われるのって妙な気分だな

愁弥

話はわかった。櫂斗たちには申し訳ないけど、全力で潰させて貰おう。時間は限られているからね。

愁弥

ところで、君に名前とかあるの?

私の名前はメア。
よろしく、愁弥。

愁弥

あ、うん。よろしく、メア。

愁弥

何で俺の名前知ってるんだよ……

メアは、何もかもお見通しのようで、顔をしかめる愁弥をみてクスリと笑った。
メアが空間に手を伸ばすと、そこから光が差し、異世界へ続くであろう電子の海が姿を現した。

メア

行こう、愁弥。他のプレイヤーは既に動き始めていル。

優しく差し伸べられたメアの手をとり、愁弥は電子の海へ飛び込んだ。
この先にどんな結末が待っているのか、彼はまだ知らない。

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