私は弟子が二人いた。
二人ともディスナティでも指折りの厄介者で、上層部から半ば押し付けられる形で引き受けたわけだが。

当時自分のことしか見えてなかった私は猛反対したが、今は受け入れてよかったと思っている。

彼らが必死に目をむこうとする姿が、どこかまぶしかった。

ソール・グルナディエ

……………………

風ノ助

……なぁ、なんでこいつこんなに疲れてんだ?湯浴みにいっただけだろ?

古森

水男殿のことだ。きっと野生の熊と相撲でも取っていたんだろう

風ノ助

……元気だな

若奈

あ、みんなお帰り♪

シャルム・ソー

お帰りなさい

風ノ助

…………ダレ?

古森

妹が知らない男を家に上げている…………

若奈

あぁ、この子ソールさんの知り合いなんだって

古森

水男殿の息子と座敷に上がったのか…………

風ノ助

……座敷って何?

シャルム・ソー

みなさん、ボクの先生がご迷惑をおかけしました

古森

なかなか礼儀正しい子供だな

風ノ助

いやいや、迷惑どころかすげぇ世話になってるぜ、君の先生にはな

古森

水男殿も起きたらどうなんだ?

ソール・グルナディエ

……………………

シャルム・ソー

まったく、仕方ないですね

シャルム・ソー

えいっ!

ソール・グルナディエ

ぐふっ!!

シャルム・ソー

目が覚めましたか、先生?

風ノ助

先生相手に容赦ないな、この子……

ソール・グルナディエ

…………シャルム!?

シャルム・ソー

随分とお寝坊さんですね、先生は

古森

水男殿、この子は?

ソール・グルナディエ

私の弟子だ。名前は、シャルム・ソー

シャルム・ソー

どうぞよろしくお願いします!

風ノ助

ああ。よろしくな

シャルム・ソー

お兄さん、賊っぽい顔してますね

風ノ助

よく言われる…………

ソール・グルナディエ

ところでシャルム、何故お前がここにいる?

シャルム・ソー

決まってるじゃないですか。先生を連れ戻しに来たんですよ

ソール・グルナディエ

何!?

シャルム・ソー

どっかの誰かが泳げもしないくせに海に飛び込むから、こうして来たんですよ

ソール・グルナディエ

耳が痛い!!

風ノ助

つまり、ソールさんを引き取りに来た、と

シャルム・ソー

そうです、山賊さん

風ノ助

風ノ助です……

ソール・グルナディエ

……シャルム、お前はどうやってここまで来た

シャルム・ソー

軍の転送アイテムを拝借しました!

若奈

それって、つまりどろぼうだよね……?

ソール・グルナディエ

……予備はあるのか?

シャルム・ソー

え?あとは先生の魔法でなんとかなるんじゃ?

ソール・グルナディエ

使えるのだったらさっさと帰ってると思わないか

シャルム・ソー

…………あ

古森

ちなみにだが、ここの船ではディスナティまでは行けないぞ

シャルム・ソー

………………

風ノ助

すんげぇショック受けてるぞ、この子

若奈

シャルム君も帰れなくなっちゃったんだね

ソール・グルナディエ

それにシャルム、私はしばらく帰らん

シャルム・ソー

どうしてですか?

ソール・グルナディエ

確かめたいことがあるのだ。そのために、私は王都まで行かねばならん

風ノ助

王都に!?

若奈

ソールさんってディスナティの軍に所属してるんだよね。それと関係あるの?

ソール・グルナディエ

それに近いと言えばいいか。軍はあくまでついでだが

古森

王都へは何度か行ったことがある。私が案内してやろう

シャルム・ソー

ボクも先生についていきます

ソール・グルナディエ

シャルム?

シャルム・ソー

先生は目を離すと、すぐどこかに行っちゃうんですから

風ノ助

…………なぁ、ソールさんが先生なんだよな?逆転してる気がするんだが

ソール・グルナディエ

先生です!!

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