体育館では、神宮寺 瑞希がマイクを持ち、その声を響き渡らせていた。
では、試合の準備もできたところで、これから、Sクラス式歓迎会を始めたいと思いまーす。
体育館では、神宮寺 瑞希がマイクを持ち、その声を響き渡らせていた。
「ワァァァァー。」
「待ってましたー。」
体育館に集まった一般の生徒が、観客席で声を上げる。
Sクラスは、他のクラスと違い、人物の能力値が実践でも扱えるレベルに達していると判断されたとき、つまり、能力値がステージ5の人物のみが、初めて配属を許される特殊なクラスである。
そのため、学園長の判断で配属が決まるのだが、今となっては、この歓迎会が配属試験のようなものになっている。
そして、歓迎会で行うことは昔から決まっている。
配属時にすでにSクラスに在籍している生徒全員と一対一で模擬戦を行うこと。
この試合で、Sクラスの生徒に認められれば、正式にSクラスに配属が決まる。
この試合は、過去に何度か行われたが、今のメンバーが揃ってからは、新たにSクラスに配属を許された者はいない。
では、希さん。前へ。
瑞希が、希に前に出るように促した。
希は言われたとおり体育館の中央に歩いて行く。
「がんばれー。」
「負けるなよー。」
二階の観客席から希を応援する歓声が上がる。
では、今から第一試合を行いたいと思います。
今回は、この箱の中に入っている紙をランダムに私が取っていき、その順番で戦ってもらいます。
瑞希はそう言って箱の中から紙を取り出す。
では、トップバッターの発表です。
会場が静まり返り、第一試合の対戦者発表を待つ。
トップバッターは、榊原 信也です!
その発表により、体育館が歓声で震える。
よろしくー。希ちゃん。
金髪の男が、軽い口調で希に話しかけてきた。
あ、昨日は道案内ありがとうございました。
私は、笑顔で昨日の校長室への案内のお礼を言う。
ああ。あれくらい、礼を言われるまでもないよ。
そうだ、近くにケーキ食べられる喫茶店ができたんだけど、今度俺と行かない?
信也は早速、希をデートに誘おうとしているらしい。
そうですね。
ここに来てまだ二日目ですし、いろいろ案内してください。
希は笑顔で答える。
おう。任せとけ!
信也は、希をデートに誘うことができ、とても喜んでいる
でも、この試合は手加減ができなんだ。悪いな。
いつもなら、女性には手加減をする主義なんだけど、今回はそれをやると怒られるから、手加減はできない。
スタートポジションに着いた榊原 信也が、希に言う。
分かりました。
お手柔らかにお願いします。
希はそう言って、スタートポジションに着く。
今朝の噂、聞いてるよ。瞬間練成だっけ?
榊原 信也が希に聞く。
ああ、あれですか。少し違いますけど……。
まあ、そんなところです。
希は苦笑いで、信也の質問に答える。
へえ。まあ何にしろ、お互いに試合を楽しもう。
榊原信也の目が真剣な目になる。
そうですね。
希は信也の目を見つめ返す。
では、二人とも準備はいい?
瑞希が二人を見る。
オーケー!
もちろん。
信也と希は左腰につけているデバイスホルダーに手を掛ける。
第一試合。はじめ!
「BATTLE START!」
瑞希の試合開始の合図に少し遅れて、模擬戦開始の機械音が鳴り、体育館が岩場のステージに姿を変えていく。
信也と希が同時に簡易デバイスを起動。信也は斧の形に、希は刀の形にそれぞれ変形させる。
いきます!
先に動いたのは希だった。