金剛寺が、愛川 恵に手伝われながら、ベッドから起き上がって言った。
あの時、あいつは剣技を使ったように見せかけていたが、あれはただの魔力の塊だ。
剣技じゃない。
金剛寺が、愛川 恵に手伝われながら、ベッドから起き上がって言った。
そんな、あれが魔力の塊?そんなはず……。
一番近くで見ていたのは俺です。
あれが剣技であるか魔力の塊であるかの区別は俺が一番分かっている。
風宮が、「そんなはず無い。」と、言おうとすると、金剛寺がその言葉に被せて言った。
金剛寺が穏やかに、しかし、悔しそうに下を向いている。
それもそのはずだ。魔力で負けたということは、剣技の善し悪しや、相性に関係なく、基礎的な所から負けているということだからだ。
それに、金剛寺は副会長の席に着いてから、申請試合では一度も負けていない。
金剛寺が負けたのは、副会長になる前に行った最後の申請試合。つまり、風宮との申請試合のときだけだ。
金剛寺にとって、この負けは、精神的に大きな負担になるはずだ。
ということは、まだ、希さんの能力を見抜けていないということになるわね。
風宮が、ため息を一つついた。
すると今度は、新道が口を開いた。
お前らの言っている希の剣技に関しては、俺が直接聞いておく。
だから、今日はゆっくり休め。
二人にそう言うと、新道は医務室を出て行った。
結局は何も分からなかったってことね。
今朝の試合のときに、希さんが最後に出そうとした技。
あれも使わなかったし、分析用の隠しカメラも、希さんの魔力の衝撃で壊れていたし。
風宮は生徒会室の地下から持ってきた、壊れた記録用カメラを手に持って見ている。
すみません。力が及びませんでした。
金剛寺が静かに風宮に謝罪する。
いいのよ。
あなたが責任を感じることでは無いわ。
風宮が答える。
ですが、会長。
会長の見たかった剣技というのは、一体なんだったんですか?
金剛寺が風宮に聞く。
それより、あなたは、自分怪我の心配をしていなさい。
風宮は金剛寺に優しく言い、医務室を出た。
今朝、私に入れようとした最後の一撃。
希さんは一体何を隠しているのかしら。
風宮はそう呟き、生徒会室に向かった。
風宮は一人、生徒会室に戻り、自分用のノートパソコンを立ち上げていた。
そして、あらゆる情報網を使って、神裂 希について調べていた。
彼女の経歴から生い立ちまで。
文字通りすべてにおいて調べつくそうと試みた。
しかし、出てきたのは、希と新道が知り合いだったということだけだった。
これだけ調べも何も出てこないということは、それだけ特別な存在ってことかしら。
風宮は、独り言を呟く。
でも、新道教官に聞けば何かしらはわかるはずよね。
そう言って風宮は、ノートパソコンを閉じた。