――魔界 オロバスの街 中央通り――

レイリー

夫人の……変態……

ヴェロニカ

へんたい~☆

チズ

痴女だな

エマニュエル

なんてこと言うんです、サキュバスならこれくらい普通でしょう!?

一同は身を隠すこともなく、堂々と魔界の通りを歩く。


というのもエマニュエルの提案で、サキュバスに扮することになったからだ。
サキュバスは見た目が人間に近く、服装や身体の一部を変えるだけでそれらしく見える。
サニーたちが悪魔に紛れて行動するにはうってつけだ。



しかし、その衣装はとにかく露出が激しい。

ナタリア

コスプレマニアのエマニュエルらしいですね……

エマニュエル

ナタリアまでそんな。
わたくしのハイクオリティな変化魔法を褒めて欲しいですわ

サニー

そうだねー。おかげでコソコソしないで済むし、人捜しもしやすそうだよ

チズ

ハイクオリティか……しかしどうもわたしたちは目立っているようだ

レイリー

視線を感じますね。バレてる訳ではないみたいですけど

サニー

ま、少しの間だしなんとかなるでしょ。
ねーねー、この辺でオレンジの髪のきれーな悪魔見なかった?
すっごいセクシーな感じの

レイリー

さ、サリー……!!

ためらうことなく悪魔に声をかけて情報収集を始めるサニー。
これには友人たちも驚きが隠せない。

ナタリア

よ、よく普通に話しかけられますね……

レイリー

本当に、サニーの順応力は恐ろしいくらいです……

そうして尋ねて回りながら、街の中央に向かって歩いて行く。
歩けば歩くほど悪魔の数は増え、街の様子は賑やかになってくる。

ヴェロニカ

フツーの人間の街みたいだね~。すごーい

チズ

アニー、発言には気を付けろ。……だがその意見には同意だ。
彼らもこのようにして独自の文化を育てているんだな

エマニュエル

面白いですわね。
何度となく召喚された悪魔を見てきましたが、
普段は魔界でこのように生活しているなんて知りませんでしたわ

魔界の街の様子に感心しながら歩いていると、先行していたサニーが大きな声をあげる。

サニー

えっ、それっていつの話!?

今さっきだよ。向こうの路地に行ったはずだ。
あんたディアボロス三姉妹のファンか?

サニー

ディアボロス? あの人そういう名前なの?
あっ、とりあえず追いかけなきゃ! ありがとっ

レイリー

サリー!? 見つかったんですか?

サニー

わかんないけど、こっちの路地へ――……いたっ!!

一気に駆け出すサニーと、それを追いかけるレイリー。
そして取り残された四人も同じように走り出そうとした時。
先ほどサニーと話していた悪魔が、訝しげな顔でこちらを見た。

……にしてもアンタら、見かけねぇ顔だな

チズ

そ、そうか?

サキュバスにしちゃ変わってるな。なんていうか、どうも……

色気がねェな

ナタリア

そこなの……!?

匂いもしねぇし、アンタらまさか……

街外れに現れたっていう人間と関係あったりしねぇだろうなァ?

エマニュエル

な、な、なんのことだか――

ヴェロニカ

えーもうめんどくさい。コイツの頭と身体、切り離しちゃっていい?

エマニュエル

いいわけないでしょう!

慌てた四人の足元に、突然ゴロンと転がる物があった。
ナタリアが持ち込んだ、予備の閃光弾だった。

ナタリア

――あっ

こりゃなんだ? 人間が使う道具によく似てるな

気が付けば四人は大勢の悪魔に囲まれており、無遠慮な視線を注がれていた。

エマニュエル

……わ、わたくしたち急いでますの。そこをどいてくださいまし

ちょっと待ちな。人間なら逃がす訳にはいかねぇ

チズ

触るな。なぜ人間だと決めつける

なに、捕まえればすぐにわかることだ。クックク……

賑わう通りを歩いていたことが仇となり。
逃げることも抵抗することも敵わず、四人は悪魔たちに捕らえられてしまった。
もちろん悪魔たちが四人を魔法で姿を変えただけの人間だと見抜くまで、そう時間はかからなかった。

pagetop