燈莉達の演奏は無事に終わり、ライブ自体も滞りなく終了した。その後、終始話題になっていたのは、燈莉のバンドとティモのバンドについてのことである。ライブハウスの客は出演バンドの友人知人などで構成されることが多く、当然楽器を演奏する人間も多い。同じ楽器を弾く立場であるからこそ、瑠華の巧みな演奏技術に魅入ってしまうのだろう。
それに対してティモは、もちろん美しい歌声に対しての評価が高かったのだが、それを軽く凌駕してしまうインパクトを与えてしまったため、歌う男の娘のイメージが先行していた。
ライブが終わった後、打ち上げと夕飯を兼ねて飲食店に入ることにした。ここでもあの店がいいこの店がいいと意見が交錯したが、近辺のイタリアンの店に落ち着いた。
六人掛けのテーブルの真ん中に燈莉が座り、左側には都流樹。右にはバンドメンバーがみんな帰ってしまって寂しいと言いながら着いてきたティモが座っている。向かいには一番左にいる聖夜とその隣の瑠華が話し込んでいた。燈莉が耳を傾けると今日の演奏についての評価や課題点などを真剣に話しているのが聞こえた。
天羽は何かを企んでいるような表情で口角の片方を持ち上げ、都流樹とアイコンタクトを取っている。