放課後、俊之が絵美の教室にやって来た。
放課後、俊之が絵美の教室にやって来た。
絵美、帰ろうぜ。
ごめ~ん。
今日は由佳と一緒に
帰ろうと思って。
佐藤。
何?
俺が居たら迷惑?
私は別に構わないけど、
山ノ井君の方が、私が居たら
迷惑なんじゃないの?
じゃあ、いいじゃん。
三人で帰ろうぜ。
分かった。
それじゃ、帰ろっか。
三人は教室を出て、廊下を歩き始める。
実は今日、これからさ。
何?
木綿子のお見舞いに行くんだ。
そうなんだ。
どうしたの?長谷川。
風邪を引いて、今日、
学校を休んだんだ。
そっか。
山ノ井君も一緒に行く?
俺は遠慮をしておくよ。
長谷川とは、そんなに
親しい訳じゃないし。
そう。
それにさ。
何?
長谷川んチって団地だっただろ!?
うん。
三人でいきなり
押しかけたりしたら、
長谷川んチが迷惑をするだろ。
それも、そうね。
長谷川の事は二人に任せるとして、
絵美は今日、どうすんの?
分かんないな~。
早く帰れたら俊君チに行くよ。
いいよ。
無理はしなくて。
一日くらい、休んでもいいよ。
何の話をしてんの?
実は私、今、俊君と一緒に
勉強をしているんだ。
え!?
絵美が??
あはは。
由佳、ちょっと、びっくりし過ぎ。
前方から高橋先生が歩いて来る。
山ノ井、川村。
余り人前で
いちゃつくんじゃないぞ。
俊之達が高橋先生に注意をされた。
三人は足を止める。
はい。
気を付けます。
そして三人は高橋先生に挨拶をする。
さようなら。
さようなら。
さようなら。
はい。
さようなら。
高橋先生は俊之達とすれ違って、
俊之達が来た方へと歩いて行った。
怒られちゃった~。
ね~。
そして由佳が俊之と絵美の頭を手で叩いた。
何をすんだよ!?
由佳、ひど~い。
言われた傍から、私の目の前で
いちゃつくなっつーの。
ははは。
悪ぃ、悪ぃ。
まったく、それより、さっきの話。
三人が再び廊下を歩き出す。
うん。
本当なの?
あはは。
本当だよ~。
そりゃ、そう簡単には
信じられないよな。
俊君~。
絵美がちょっとむくれる。
へぇ~。
絵美が勉強をねぇ。
そんなに、おかしい?
勉強をする事はそんなに、
おかしい事じゃないけどさ。
うん。
私は絵美と
付き合いが長いからねぇ。
そうだね。
その絵美が勉強をってなると、
やっぱり。
あはは。
もう~。
まあ、いいじゃんさ。
何が?
今度のテストできっと、
佐藤は開いた口が
閉じなくなっちゃうぜ。
どういう事?
まあ、テストが終われば分かるよ。
な。
俊之は絵美に相槌を求めた。
そうだね。
ふ~ん。
まあ、
お手並みを拝見させて頂くわ。
三人は下駄箱の所でそれぞれ靴を履く。
そして駐輪場の方へ向かって歩き出す。
俺、今日は隆行の勉強を見るから、
どっちみち絵美んチには行くんだよな。
そうだったね。
だったら、今日はもう絵美は
勉強を休んじゃいなよ。
それで長谷川の見舞いを終えたら、
そのまま家に帰れば!?
分かった。
じゃあ、そうするね。
隆行って!?
私の弟。
俺、今、隆行の家庭教師
みたいなもん、やっているんだよ。
そうなんだ。
でも、大変じゃない!?
山ノ井君、それとは別の
アルバイトもしているんでしょ!?
全然、大丈夫。
俺、今、勉強もバイトも家庭教師も
みんな、楽しめているからね。
へぇ~。
私も今は勉強を
楽しんでいるんだよ。
そうなんだ。
やっぱり、あんた達って、
お似合いなんだね。
だろ!?
そうでもなきゃ、絵美が勉強なんて
する訳ないって思うもん。
由佳~。
あはは。
佐藤の言う通りかもしれないな。
俊君~。
別にむくれる事はないじゃん。
佐藤は俺達の事を
認めてくれているんだからさ。
そうなの!?
ちょっと悔しいけど、
結局は、そういう事よ。
そっか。
俊之は一人、離れて、自分の自転車の所へ行く。
絵美と由佳は自分の自転車の鍵を外して、
それぞれ自分の自転車に乗る。
俊之が自分の自転車に乗って、
二人の所まで戻って来た。
そして三人はそれぞれ自分の自転車に乗り、
一緒に学校を出て帰って行く。
三人は絵美の家の前を通る。
絵美はそのまま、
他の二人と一緒に自宅の前を通り過ぎて行く。
そして俊之が二人と別れて、
一人で自宅へと向かった。
絵美と由佳はそのまま木綿子の家へと向かう。
木綿子の家へ向かう途中、
道端の所々で彼岸花が咲いていて、
秋の訪れを感じる事も出来た。