絵美の家に俊之がやって来た。
こんばんは。
絵美の家に俊之がやって来た。
今日は隆行の家庭教師をする予定だ。
しかし、いつもの時間より、
少し早めに絵美の家に来た。
いらっしゃい。
絵美が出迎えに来た。
俊之は家に上がり、二人でリビングへ向かう。
こんばんは。
こんばんは。
リビングで座っていた絵美の父が応えた。
こんばんは。
今日は早いのね。
台所から絵美の母が言った。
今日は絵美と余り話をしている
時間が無かったから、少し
絵美と話をしたいな~って思って。
あら、そうなの!?
俊君、まあ、座んなさい。
その前に昨日は
お魚を頂いちゃって、
どうもありがとうございました。
そんな事は
気にしなくていいんだよ。
昨日は隆行も釣ったから、
ウチだけじゃ食べ切れない。
それで山ノ井さんにも、
おすそ分けをしただけなんだから。
とても美味しかったです。
そう言うと、俊之は絵美の父の正面に座った。
絵美は俊之から見て左の側に座る。
そう言って貰えるだけで、釣って
きた甲斐があるってもんだよ。
そして絵美の母が麦茶を持って来る。
はい。
どうぞ。
絵美の母が麦茶を俊之の前に置く。
すみません。
そして絵美の母が俊之から見て右の側に座った。
それで、長谷川はどうだったの?
俊之が絵美に訊いた。
うん。
一応は大丈夫そうだったよ。
そか。
でも、明日も学校は休むみたい。
そんなに酷い風邪なの?
夏風邪だからねぇ~。
俊君は体は丈夫な方なのかしら?
俺は殆ど風邪なんて、
ひいた事がないですね。
そうなんだ。
風邪をひいている暇なんて、
ありゃしない。
そりゃ、頼もしい限りだな。
それに何とかは
風邪をひかないって。
あら、それを言うなら、
絵美の方なんじゃないかしら!?
お母さん~。
ははは。
絵美も体は丈夫なんですか?
そうね。
この子も小さい頃から、
体だけは丈夫だったわね。
だけって、何よ~。
いいじゃんか。
風邪で寝込んだりしたら、
退屈で退屈で嫌気がさすと思うよ。
木綿子もそう言っていたな~。
だろ!?
だからさ、木綿子、
私達が帰ろうとすると、
必死に引き止めようとするんだよ。
ははは。
そっか。
でも、私達はそんな事をしたら、
余計に木綿子の風邪を
長引かせちゃうんじゃないかと思って、
すぐに帰って来たんだけどね。
それで、すぐに家に帰って来たの?
ん~ん。
私はちょっと由佳んチで
遊んできたんだ。
そっか。
そんじゃ、そろそろ
隆行ん所でも行くかな。
私も勉強をしよ。
俊之と絵美は立ち上がる。
俊君、いつもありがとうね。
いいんですよ。
隆行はもう、
俺の弟みたいなもんだし。
そうね。
私達、いつの間にかに、
こんな孝行息子が出来ちゃったわ。
少しは絵美を見直さなきゃならんかな。
お父さん、見直すって何よ!?
ははは。
笑ってごまかす、絵美の父。
もぅ~。
俊君、行こ。
俊之と絵美は歩いてリビングを出る。
ちょくちょく、そっちも覗くから。
うん。
そして絵美は自室へ、俊之は隆行の部屋へ行く。
うぃ~っす。
俊之が隆行の部屋の戸を開けて入って来る。
俊君、いらっしゃい。
昨日は釣れたんだって!?
そう言いながら、俊之が部屋の戸を閉めた。
そりゃあ、ちゃんと
釣りをすれば釣れますよ。
そうなのか!?
俊君も次、ちゃんとやれば、
絶対に釣れると思いますよ。
じゃあ、今度は、
ちゃんと釣りをしてみるかな。
俊之が隆行とテーブルを挟んで、
対面する様に座った。
そして鞄から勉強道具を出し始める。
俊君。
何?
勉強を始める前に、ちょっと話を
聞いて貰ってもいいですか?
いいよ。
んで?
俊之は手を止めた。
香織の事なんですけど、
順調だって、
言ってなかったっけ!?
うん。
だから、それで、
うん。
今度、香織の家に呼ばれちゃって。
いつ?
今度の日曜日なんですけど。
そか。
香織は親が、
知人の結婚式に行くから、
家に居ないって言っていて。
ほう。
それって、やっぱり、
隆行が言い辛そうにしている。
そうだな~。
難しいところだな。
因みに、俊君はもう姉貴と、
再び隆行が言い辛そうに、
言葉を途中で止めてしまう。
Hの事か!?
そうです。
しているよ。
やっぱり。
ふふふ。
姉貴が俊君のところに、
泊まりに行ったりしているのは
知っていたから。
そんなに
恥ずかしがらなくてもいいだろ。
そうなんですけど、
なんか照れ臭くて。
彼女、同い年だったよな!?
はい。
難しいよな。
思春期の女って。
全然、分かんないんですよ。
思春期じゃなくても、
難しいのかもしれないけどな。
ははは。
それも、そうですね。
男みたいに、
もっと単純になれないのかなぁ。
因みに、俊君はいつなんですか?
何が?
初Hです。
ああ。
俺は絵美が初カノだし、
つい、この間だよ。
そうなんですか!?
俺は隆行と違って、中学の時は、
全然、もてなかったからさ。
そうは見えませんけど。
ははは。
取り敢えず、サンキュ。
でも、本当なんだよな。
そうなんだ。
だから、正直に言うと、
分かんねーんだよね。
そっか~。
男はさ、中学生にもなれば、
したくてしたくて仕方がなく
なったりもするんだけどな。
そうですね。
勿論、女の子も関心そのものは、
ない事もないのかもしれないけど。
興味はあるでしょうね。
Hに対して、
積極的な意味での関心なのか、
抵抗を感じているのかは、
微妙だよな。
本当に女って、分かんないです。
ただ、基本的には女の子も
助平ではあると思うよ。
そうなんですかね。
絵美も最初は、
そうでもなかったけど、
最近はHに対して、積極的に
なってきた部分があるからな。
それは聞きたくなかったです。
あはは。
隆行は、そうかもしれないな。
そうですよ。
だから、姉貴の話は、
ちょっと聞き辛くて。
とにかく、所詮、人間は
男も女も助平だとは思うんだ。
男も女も、かぁ。
助平なのが、
どちらかだけだったら、
人類は此処まで歴史を築く事は
出来なかったんじゃないかって。
なるほど。
俊君、上手い事を言いますね。
ただ、環境や経験によって、
個人差が生じたり。
そうですね。
場合によっては、
例外も出てきたりするからさ。
例外ですか!?
性に関心を持てない人間とかさ、
性の対象が同性だったり。
ははは。
ちょっと話が逸れちゃったけど、
結局は、当事者が肌で感じとる
しかないんじゃないかな。
やっぱり、そうなっちゃいますか。
正直、俺にも分かんねーって。
ただ、Hをする様な展開になる事は
考えておいて、コンドームだけは、
ちゃんと用意をしておいた方が
いいだろうな。
そうですね。
今度、使わなくても、いずれ、
そう遠くない時期に使う機会は
あるだろうしさ。
それなら、いいんですけどね。
なんだったら、
俺のを少し分けてやろうか?
それはいいですよ。
自分で用意をします。
遠慮をするなって。
遠慮じゃなくて、そこまで
俊君に頼っちゃったら、
香織に申し訳ないなって。
そか。
因みに、隆行はどうなのよ?
どうって、どういう事ですか?
だから、隆行は彼女と
Hをしたいのかって事。
そりゃあ、したくてしたくて
仕方がないって感じですね。
あはは。
そうだよな~。
俺も、そうだったもんな。
ただ、いざとなると、
怖くなってきちゃって。
そか。
今まで、何も出来なくて。
ふふふ。
でも、香織の家に行ってまで、
何も出来ないんじゃ、
駄目なんじゃないかって。
そうかもな。
それで俊君に話を
聞いて貰ったんですけど。
そっか。
結局は、俺がしっかりしなきゃ
いけないんですね。
まあ、そういう事だな。
どうもありがとうございました。
隆行が頭を下げた。
もう、いいのか!?
はい。
じゃあ、始めるか。
はい。
隆行は勉強道具を揃え出す。
取り敢えず、今日は先ず、
自分でやってみて。
はい。
それで分からない所があったら、
後で纏めて教えるから。
分かりました。
俺はちょっと、絵美の様子を
見てきてからにする。
はい。
俊之は立ち上がって、隆行の部屋を出る。
隆行の部屋の戸を閉めると、
絵美の部屋の戸を開けて、
絵美の部屋へ入って行く。
ちゃんと、やっているか~!?
やっているよ~。
そか。
偉い、偉い。
俊之は絵美の近くまで行って、絵美の頭を撫でた。
子供扱いをしないでよ~。
あはは。
ごめん、ごめん。
俊君がすぐ傍に居ないのは、
ちょっと寂しいんだけど、
それでも、隣の部屋に居るって
思うと頑張れるんだ。
俊之は絵美の後方に回って、
絵美のベッドに座った。
それだけ、
ちゃんと勉強をしていたら、
今度のテストは楽しみだな。
そうかな!?
絵美は上半身だけ、俊之の方へ振り向いた。
このまま、順調にやっていけば、
50番以内はいけるんじゃないかな。
本当に!?
そう言いながら、絵美は体全体で
俊之と向き合う形に座り直した。
うん。
ウチの学校は特別に
進学校な訳じゃないし、
ちゃんと勉強をしている奴なんか、
そんなにはいねーはず。
そうなのかな。
だから、ちょっと勉強をするだけで
大違いなはずだよ。
そっか~。
きっと、みんなを
びっくりさせられるよ。
だったら、いいんだけどね~。
佐藤の口、
閉じなくさせてやろうぜ。
うん。
話、変わるけどさ。
何?
絵美、中学の時も俺の事を
好きだったんだよね!?
うん。
絵美が少し照れる。
当時の絵美って、俺とHを
したいとか思ったりしたの?
えーーー!!
何、急に変な事を
聞いてくるのよ~。
ぶっちゃけちゃうとさ。
うん。
俺は絵美とHをしたいって
思っていたんだよ。
へぇ~、そうだったんだ。
男はさ、Hがしたいって気持ちが
先にきたりもしちゃうんだ。
そうなんだ。
Hがしたいから、付き合いたい。
Hがしたいから、好きだ、
みたいな。
俊君もそうだったの?
俺はHをしたいとか思える様に
なる前から、絵美の事を
好きだったからな~。
そっか~。
ただ、Hをしたいと思える様に
なってからは、そういう感じも
なくはなかったよ。
そうなんだ。
だから、俺の場合は高校に
入ってから、真面目になれたりも
したんだろうけどね。
ふ~ん。
絵美とHがしたいから、
付き合いたい。
付き合いたいから、
真面目になろうって。
そっか。
そういう邪な気持ちでもないと、
中々、難しいんじゃないかな。
何だか、面白いね。
邪な気持ちで真面目になるって。
だから、俺が助平じゃなかったら、
多分、俺、今も中途半端な不良を
していたのかもしれない。
あはは。
中途半端な不良かぁ~。
それで、絵美はどうだったの?
私!?
私は、ねぇ。
うん。
Hがしたいとか、
そういうのは無かったかな。
そっか。
仲良くなりたいな~って、
そんな感じだったと思う。
なるほどね。
だって、付き合ってもいないのに、
Hとかまでは考えられないよ。
女の子って、
そういうもんなのかな?
それは分かんないけど、
私はそうだったよ。
そっか~。
でも、付き合い始めてからは、
Hな事をしてみたいと
思う事はあったよ。
少し照れ臭そうに絵美が言った。
そうなんだ。
助平。
俊君の方が助平じゃ~ん。
あはは。
それは否定が出来ないけどさ。
ほら~。
そんじゃ、そろそろ
隆行の方へ戻るとするかな。
俊之は立ち上がった。
ねぇ。
何?
何で急に、
そんな事を訊いてきたの?
ちょっと、気になっていたんだ。
何が?
だから、俺は中学の時から
絵美とHをしたいって
思っていたからさ。
うん。
絵美の方は
どうだったのかな~ってね。
そっか。
じゃあ、
また後で油を売りに来るね。
うん。
俊之は絵美の部屋を出て、隆行の部屋に戻った。
隆行が一瞬、俊之に目を向けるが、
すぐに勉強に集中をする。
俊之は隆行と対面する位置に座る。
キリのいいところで、
一旦、休憩をしよう。
はい。
このページだけ済ませちゃいます。
そして俊之は自分の勉強道具を広げ、
自分の勉強を始める。
俊之はいつも、こうして隆行の勉強を見ながら、
自分の勉強をしていた。
数分もすると、隆行の手が止まる。
終わりました。
じゃあ、先ず、
分からなかったところを言って。
教えるからさ。
はい。
そして俊之は幾つか隆行からの質問に答えながら、
丁寧に教えていく。
その後に休憩に入る。
さっき、絵美に訊いてきたよ。
何をですか?
中学の時に絵美は、
どう思っていたのかって。
そうなんですか!?
それで、中学の時はまだ、
俺達は付き合っていなかったからさ。
うん。
絵美が言うには、
付き合ってもいないのに、
Hの事とか考えられないってさ。
そうなんだ。
男は付き合う前から、
Hな事を考えるよな。
そうですね。
結局、付き合う前の話だから、
余り参考にはならなかったのかも
しれないけどさ。
姉貴の話ってのも、俺からすると
素直には聞けませんけど。
ははは。
とにかく、男女で違いは
あるのかもしれないな。
そうですね~。
因みに、お前等は
いつから付き合ってんの?
夏休み前くらいからです。
何だ、まだ、つい、
この間なんじゃん。
そうですね。
それじゃ、そんなに
焦らなくてもいいのかもな。
そうですか!?
だって、まだ二ヶ月も
経っていない感じだろ!?
もうすぐ二ヶ月、経つ感じですね。
ちょっと早過ぎる感じが
しないでもないな。
俊君は、どれくらい
かかったんですか?
俺は三ヶ月くらいかな。
そうなんだ。
だから、大して違わないの
かもしれないけど、それでも
早いくらいだとは思うからね。
そうかもしれません。
とにかく、
がっつかない方がいいのかもな。
ははは。
がっついていますか!?
ただ、どういう展開になるかは
分かんないから、準備だけは万端に
しておいた方がいいんだろうな。
そうですね。
それで、後は成り行き次第で、な。
その成り行きってところが、
怖かったりもするんですけどね。
まあ、なるようになるさ。
俺だって何とかなったんだから。
そうだと、いいんですけどね~。
それじゃ、そろそろ再開をするか。
はい。
今度は分からないところが
あったら、すぐに訊いて
くれていいから。
はい。
二人は各々の勉強をし始める。
昼間はまだ、残暑も残ってはいるが、夜も更けて
くると、すでに秋になっている様に感じる。
そんな初秋の夜であった。