――魔界 オロバスの街 池のほとり――

サニー

……だいぶ歩き回って、色々考えてはみたけど……

レイリー

……収穫はナシですね……

悪魔に出くわさないようにと隠れてばかりいるせいで、まともに進むこともできない二人。
そのため帰る方法を探すどころか、よい見晴台にたどり着くことさえ出来なかった。

サニー

ちょっと気が滅入るね。耳にする会話はあんなのばっかりだしさ

レイリー

残虐なことばかり口にして、下品な声で笑って……。
悪魔以外の生き物のことは道具か玩具のようにしか思ってないみたいです。
いえ、それ以下かも

サニー

まあ……悪魔がそういう生き物だとは聞いてたけど

レイリー

そうですね。
悪魔は契約を交わし召喚しなければ、本来利己的で危険なものだと授業でも教わりましたし

サニー

…………

レイリー

……あの、全部の悪魔がそうだと言ってるわけじゃありませんよ?

サニー

うん、わかってる。ありがとレイリー

レイリーのフォローに頷きながら、サニーはその場に腰を下ろす。
街外れの池のほとりに座り込み、ようやく一息つくことが出来た。

サニー

でも見れば見るほど、聞けば聞くほど……
悪魔ってそう生やさしいもんじゃないなって思うね。
だんだん自信なくなってきたよ、アタシ――

レイリー

サリー……

そしてサニーは目の前の池に手を突っ込み、パシャパシャと水面を揺らした。
思いのほか綺麗な水で、その水の冷たさがサニーを冷静にしてゆく。

レイリー

……? なんだか一段と騒がしくありませんか

サニー

そうだね。どこかへ走って行く悪魔もいる

不思議に思い二人は池のほとりを離れ、コッソリと通りを覗いてみる。
すると悪魔たちが騒ぎ立てながら、どこかへ駆けてゆくのが見えた。

――魔界 オロバスの街 中央通り――

サニー

何かあったのかな……?

レイリー

今の悪魔――

こっちだ。街のはずれに現れたらしい

しっかり案内しろ。現世への門が現れることなんて滅多にないんだからな

その言葉にサニーもレイリーも青くなり、顔を見合わせる。

サニー

現世への、門……?

レイリー

まさか、門がまた開いたんでしょうか。
これで帰れる……けど――

サニー

悪魔が門の向こうへ行っちゃったら大変だ……!!

レイリー

い、行きましょうサリー。
早く門にたどり着いて、向こうから門を閉めてしまわないと!

サニー

ああ~~~こんな騒ぎになってるんじゃ、悪魔がいっぱいいそう!

レイリー

ううぅ想像したくないぃいいい

情けない声を上げながら、二人は慌てて駆けていく。

そして街のはずれへ向かうその途中。ただ一人、皆とは反対方向へと歩いて行く悪魔がいた。


今はそれどころじゃないと思いながらも、サニーの視線はその悪魔の顔を捕らえた。

…………

サニー

えっ!?

すれ違った一瞬で脳裏に焼き付く。
その白い肌。夕焼けのような色の巻き毛。漆黒の翼。

サニー

今の……!!

レイリー

サリー!? 急がないと!

サニー

……っ!

レイリーに急かされ、サニーはやむなく門の方角へ走る。
ただ、あの悪魔の顔は忘れられない。

サニー

似てる……

サニーを助けてくれた美しい悪魔と、瓜二つだったのだ。

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