レイリー

さて……もうすっかり夜も更けましたけど

サニー

だいたい解読出来たね。呪文もばっちり

レイリー

ええ。にしてもまさか、魔界への門を作る魔法があるなんて思ってもみませんでしたけど。
そのための魔法書をサリーが持ってるっていうのも……

サニー

うん、まあ、偶然ね……

レイリー

あとは手順通りに魔方陣を描いて、門を開くだけですね。
一応その前におさらいです。さっきノートにもメモしましたよね?

サニー

うん。えっと――

改めてサニーはノートを見返す。
そこには以下のことが記してある。

・門は現世では魔方陣の上に現れる。出口が魔界のどこになるかはわからない。


・門は呪文を唱えた術者しか開閉できない。術者が門を離れると門は効力をなくし閉じる。


・閉じた後でも、呪文を唱えれば門は開き、現世に戻ることが出来る。


・ただし現世側の魔方陣が消失してしまったら、もう呪文を唱えても門は出てこないので、新しく魔方陣を描き、魔法をやり直す必要がある。

サニー

……わかるよーで、わかんない……

レイリー

要は門を開閉する呪文が重要だってことです。
門は術者が離れたら閉じてしまいますから、呪文でもう一度開かないと

サニー

めんどくさいね

レイリー

でも術者が離れた時に、門が開きっぱなしだと困るでしょう。
他の誰かが勝手に利用してしまうかもしれませんからね。

そのためにあえて、この魔方陣は魔力の持続性を低くしているそうです

サニー

なる……ほど……

レイリー

ちゃんと意味わかってます、サリー?

サニー

呪文が! 大事! 

でしょ!?

レイリー

…………まあ、それでいいですけど。
 さて復習したところで、物は試しです。やっちゃいましょう

サニー

え。でも寮での魔法は使用禁止だよね?

レイリー

いいじゃないですか。『ゲート』の魔法ですから、何を喚び出すわけでもなし。
ひとまず様子見で魔法を唱えてみて、用が済んだら閉じればいいだけの話です

サニー

そ、そっか。レイリーが一緒だし、平気だよね

レイリー

危険な魔法ではないようですから大丈夫ですよ

サニー

……わかった。じゃあ門を確認したらすぐ閉じよう

レイリー

はい。魔方陣は私が書きますね

サニー

うん。アタシは呪文の確認を

レイリーは魔法書を見ながら大きめの羊皮紙の上に魔方陣を描く。

サニーはノートにまとめた呪文に間違いがないか、今一度確認をする。

そんな風にして、二人は『魔界への門』を開く魔法の準備を整えた。

サニー

き、緊張するね……

レイリー

そうですね……開いたら、すぐ閉じますね。
閉じる呪文は私が唱えますから

サニー

うん。じゃあ、アタシがこれから――

サニーがそう言いながら魔方陣に触れた、その時。

魔方陣がまばゆく光り出し、周囲の空気が揺れた。

サニー

へっ!?

レイリー

なっ……なんですか!? 
呪文もまだ唱えてないのに……!

光はさらに輝きを増し、魔方陣の中心から空間が歪んでいく。

サニー

アタシ何もしてないよ!?

レイリー

わ、わかってますよ……!!

そして。


歪んだ空間は一段と大きくなり、光は魔方陣の周囲にいたサニーとレイリーを巻き込んで――消えた。

光が消えた後、二人の姿はすでになく、魔方陣の描かれた羊皮紙だけが残されていた。

11-4│あきらめたくない【6/8更新】

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