うーっす、おはよう宇佐美ちゃん!

おはよっす

あ! おはようございます! えーっと……

そう言って宇佐美はポケットから手帳を取り出し、ペラペラとめくる。

以前の出来事や人物を手帳に書いて記録しているというのは正人から聞いているので、驚きもせずその思い出すのを待つ。

むしろ、僕の隣で無駄に顔を輝かせている正人がキモくてそっちのが気になった。

あっ、アラタさんですね? 昨日はごはん、ご一緒させていただいてみたいでありがとうございました。

いいっていいって。気にすんな宇佐美

いや、気にしろよぉおおおお! 奢ったの俺なんですけど!? あと、宇佐美ちゃんナチュラルにシカトすんのやめて!?

はい? えーと、あなたは……?

嘘でしょ!? 手帳にでかでかと俺のマイプロフィール書いたのに!?

あ、ありました。藤原さん(バカ)と書いてあります。ていうか、いたんですか、藤原さん

君は慣れてくるとナチュラルにS行為を働く娘だったんだね……でも大丈夫! かっこいい俺はどんなS行為すらも受け止めてみせるよ!

わかりました。藤原さん(変態。近寄ると危険)と書いておきますね

さらにひどくなってる!?

二人の微笑ましいやりとりを眺めながら、僕と神様は

正人とやらとこの宇佐美という娘、本当に仲良いのぅ

あぁ。正人がきっと「見えない部分」も慮ったからこそのあの距離感なんだろうよ

ふふ、「見えない部分」----か

なに、この前の使徒の言葉が嬉しくての。「神はいる」と我を肯定してくれたあのときの言葉が、我にとってとてもの

言ったろ? 使徒として当然のことを言ったまでだと

ふふっ。そうであったな

なんて僕と神様が話していると、

おーい、アラタ行こうぜ

ん。おう、そだな

あ、そうそう。俺らが受ける講義、宇佐美ちゃんも興味あんだって。だから、今日は一緒受けるから

よろしくお願いしますね、アラタさん

あぁ、よろしくな宇佐美

あれ宇佐美ちゃん、俺は?

セクハラされそうなので距離を置いて座りますね

いや、そうじゃなくて……えー?

そして、僕と正人と宇佐美(あと神様)と講義を受けた。


「セクハラしそうだから近づかない」と嘯いていた宇佐美もわからないところはなんだかんだ正人に聞いている。

なんだか、見てて微笑ましくなる二人だ。

使徒よ。あの二人仲いいのぅ

だな。さっさと付き合っちゃえばいいのによ

ふふっ

きっと正人も同じことを思っておるぞよ

お主と茜のことでの

……あいつのことはいいんだよ

よい、よい。照れるな照れるな。ときに茜とやらは最近見ないがどうしたのじゃ?

友達と旅行にいってんだとよ

ほほう。最近見かけないからどうしたのかと思ったのじゃ

心配しなくてもまたうるせー声を聞かせてくれますよ、神様

うむ! 楽しみにしておるぞ!

楽しみにせんでいいです

おーい、アラター。講義終わったぜー

意外です。意外過ぎます。藤原さんがまさかあんなにも物知りだったなんて

ふっふっふ! 俺ってばいざとなればやる男なんよ! ……まぁ、大体はアラタから教わったんだけどね

そうだったんですか。では、次からはアラタさんに聞きますね

ちょおおおおおい! 俺に聞いて俺に聞いて! なんなら、俺の好みの女の子のタイプも!

藤原さん(どや顔と知識自慢と絡みがうざい)……と

メモ帳に新たな俺の罵詈雑言を追加するのやめて!?

見てて飽きない二人だのぅ

だな

盛り上がってるところ、いいかしらアラタくん、藤原くん?

そんなこんな話しているとミドリ先生が話しかけてきた。

なんなりと。なんなら昼だけなく夜もお付き合いをーーーー

それは茜ちゃんと、ね。で、アラタくんと藤原くん今いい?

あぁ……じゃ、宇佐美ちゃんまた明日

え、えぇ。まあ、明日には藤原さんのことなんか忘れてるでしょうけど、

また、明日

そう言って宇佐美は駆けていった。

ーーーーで、話は宇佐美のことですか?

さすが、アラタくん。察しがいいわね

宇佐美ちゃんがどうかしたんすか?

多分、もうすぐ宇佐美ちゃん本人にも話がいくと思うんだけど……

宇佐美ちゃんね、もうすぐ元いた場所に戻ってしまうの

……!

……

う、嘘でしょ!?

本当よ。あと1週間ほどでね

…………

…………

君たち二人は宇佐美ちゃんとすごく仲良くしてたから……伝えないとって思ったの。短い間だけど、宇佐美ちゃんとこれからも仲良くね?

はい……それはもちろん

……

よかった……引き留めてごめんね? じゃ、また明日

そう言って誰よりも麗しいミドリ先生は僕らにぺこりと頭を下げて出て行った。

やがて、茫然としていた正人が口を開く。

……アラタ

……なんだ

俺、どうすればいいかな?

……神様

む?

神様ならこのときどうする?

ふふっ

迷える使徒のために一つ意見を述べてやろうかの。

我ならーーーー

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