神裂 希

し、失礼します。

 中に入ると、生徒会室のドアから想像される、それ以上の高級感あふれる光景が広がっていた。

 これは、学園長室に引けを取らないレベルだ。いや、それ以上かもしれない。

風宮 梓

あ、そこのソファーに座って少し待ってて。

 奥の部屋から風宮会長の声が聞こえた。

 どうやら、何か作業をしているらしい。

 言われた通りソファーに座ろうとしたとき、背の高い眼鏡の生徒が生徒会室に入ってきた。

金剛寺 猛

邪魔だ。

 男子生徒は私を睨みつけ、それだけ言うと、置くの部屋に入っていった。

神裂 希

あの人、どこかで見たような。

 邪魔と言われたことに関しては聞き捨てならないが、それ以上に、風宮会長に呼び出されたことに関してとても気になっていたので、この事はそのまま見過ごした。

神裂 希

そもそも風宮会長は、どうして私の退学を取り消したんだろ?

 私が悩んでいると、奥の部屋から背の高い眼鏡が出てきた。

金剛寺 猛

会長が呼んでいる。来い。

神裂 希

……。

 眼鏡の生徒から、なんとも雑な扱いを受け、少しイライラしながら奥の部屋に入ると、「会長」と書かれた大きな高級感あふれる机に風宮会長が机に肘を付いて、手を組んで座っていた。

風宮 梓

傷は大丈夫?

神裂 希

あっ、はい。大丈夫です。

 会長から出た第一声が自分を気遣う言葉だったので、私は少し驚きながら、「はい。」と答えた。

神裂 希

あの、風宮会長。

私は何でここに呼ばれたのでしょうか。

 すると会長は、微笑みながら答えた。

風宮 梓

そうね。

私はこの学園で一番強いのよ?

神裂 希

 えっと……。そうでよすね。

 生徒会長ですし。

 私は会長の答えに対し、少し疑問に思いながら言葉を返した。

風宮 梓

 希さん。

 あなたが最後に手加減をしたことについて、私が気づいていないなんて思っていないでしょうね?

 会長から出てきた言葉に私は動揺を隠せなかった。

 しかし、素直に話すわけにもいかないので、私は言い訳を言った。

神裂 希

 あ、あれはですね。

 技を出すタイミングがずれてしまってですね。

 それで技を出さなかったと言いますか。

 出せなかったと言いますか。

 我ながら、とても言い訳じみた言い訳だ。

 すると、会長が言った。

風宮 梓

 そうですか。

 え、あっさり承諾された? 

風宮 梓

 あくまで言わないつもりですか。

 やっぱり承諾されていなかった。

風宮 梓

 良いでしょう。

 言いたくなければ言わなくて良いです。

 風宮会長が手を組むのをやめ、席を立った。

風宮 梓

 では、本題に入ります。

神裂 希

 え、今のは本題では無かったんですか?

風宮 梓

 ええ、個人的に聞きたかったことですから。

 私が聞くと、風宮会長はあっさりと答えた。

風宮 梓

 では、本題に入ります。

 希さん。あなたの処分ですが、私は退学処分を撤回しました。

神裂 希

 あ、はい。さっき保健室で、メグミンから聞きました。

風宮 梓

 ええ。ですが、条件があります。

神裂 希

 え、条件?

風宮 梓

 そうです。

 会長は私を見たまま微笑んだ。

神裂 希

 そ、その条件とは何でしょうか。

 私は恐る恐る聞いた。

風宮 梓

 簡単なことです。

 今から、あなたの隣にいる人と模擬戦を行ってもらいます。

 そう言われ、隣を見ると、さっきの眼鏡がいつの間にか私の隣に来ていた。

神裂 希

 え、えっと。誰?

 私は率直な疑問を問いかけた。

風宮 梓

 さっき、私たちの審判をやっていた副会長の金剛寺 猛よ。

神裂 希

 あー。さっきの。

 私は、テキトウな返事をする。

金剛寺 猛

 お前、俺のこと覚えてないだろ。

神裂 希

あー、バレちゃいました?

金剛寺 猛

はぁ・・・・・・。

 金剛寺はため息を吐く。

 そして、咳払いを一つして、話し出した。

金剛寺 猛

 審判として見ていたが、さっきの申請試合、気になる点がいくつかあった。

 金剛寺副会長は眼鏡の中からこちらを睨んで言った。

神裂 希

 へ、へえ。そうなんだ。

 私は苦笑いを浮かべて返事をする。

風宮 梓

 という訳で、あなたの太刀筋を、もう一度見ておきたいの。

 そう言うと、風宮会長は壁にある赤いボタンを押した。

神裂 希

 わっ――――――!

 ボタンを押すと同時に、私たち三人のいる部屋がエレベーターのように、地下に降りていった。

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