ゼシカのおすすめを手に取り、ヒカルが試着室へと入る。
ヒカルはこっちの服とか似合うんじゃない?
変に女の子らしくするより、ボーイッシュなところを生かしつつ、可愛らしいアクセントがある服がいいと思うの。
そ、そうか……?
このオレンジのキャロットスカートに、このとろみ生地のブラウスとか似合うわね。
胸元に大きめのリボンがあるけど、これなら可愛くなりすぎないし
なるほど……着てみる
ゼシカのおすすめを手に取り、ヒカルが試着室へと入る。
おい、ヒカル。
お前は服買う必要ないだろ。
部屋ごとこの世界に来てるんだし、タンスにいっぱい女物の服があるだろうが!
ヒカルは少女趣味だ。
つい可愛い服を買っては、あまりにも似合わなすぎてタンスにいっぱいしまってあることを俺は知っていた。
アオイ……凄いぞ
しかし、シャとカーテンを開けたヒカルは、俺の言葉なんて聞こえてないようで。
どこか浮かれた顔をしていた。
何がだ、ヒカル
これ、ちゃんと女の子っぽいのに、私に似合っている!
しかも動きやすいズボンなんだ!
まぁ確かにな
ゼシカのセンスはいい。それは認めざるを得なかった。
ふふふ……女の子のショッピングみたいで、楽しいな……
いや、女の子のショッピングっていうか、そのとおりだしな
ヒカルは浮かれている。
そういえば、こいつ女の子の友達いなかったな。
ヒカルは女の子に囲まれることは多かったけど、彼女達は皆、ヒカルを自分達と同じ女子ではなくイケメンの男子として扱っていた。
こんなふうに、女の子とショッピングという状況に、ヒカルは憧れを持っていたらしい。
ねぇ、アオイ。こっちとこっちの色、どちらがいいと思う?
あーどっちでもいいんじゃないかな? どれも似合うよ?
しかし、買い物長いなぁ。
いっぱい選んでもらったし、ゼシカに連れてきてもらって正解だったとは思ってるんだけど。
ただ、長い。
もっとパッパッと決めて欲しいんだけど、選ぶ時間もまた楽しそうにしてるんだよな……。
……
あっ、まずい。
適当に答えたのがばれたのか、ゼシカが面白くなさそうな顔してる。
どちらかといえば紺がいいかな
えー、少し野暮ったいかなと思ったんだけど
ゼシカが不満そうな声をあげる。
答えたら答えたでそれか!
着替え終えたヒカルが、ゼシカの近くへと歩み寄った。
ゼシカには大人びた紺も似合うが、私はこっちの柔らかな桃色がいいと思う。
春らしいし、ゼシカの華やかさを引き立てる色あいだ
そ、そう?
ワタクシもこっちがいいんじゃないかと思っていたの!
テンション高く、ゼシカはそんなことをいう。
桃色がいいと自分で思ってたなら、最初からそれを選べばいいのに。
俺、少し外の空気吸ってくるね!
まだ時間がかかりそうだなと服屋を抜け出せば、大通りを歩く姫林檎さんとスカーレットの姿を見つけた。
あの二人もショッピングへきていたらしい。
それでいて、スカーレットさんの頭にも……姫林檎さんと同じシャンプーハット……もといヘッドドレスがあって。
ワタクシがプレゼントしたヘッドドレス、よく似合ってますわ。スカーレット
はは……ありがとうございます……姫林檎様……
満足げな姫林檎さんに対し、スカーレットさんは涙目だ。
たとえ買い物時間が長くても、一緒にショッピングする相手がゼシカでよかった
その光景を眺めながら、俺はしみじみとゼシカに感謝した。