神 斬
髪 切 り屋
神 斬
髪 切 り屋
参の巻 金剛
2.石道 3
光野山(こうややま)の麓、慈尊寺(じそんじ)に車で向かう道すがら、コンビニで必要なものを買って再び車に乗り込む
ところで、朱右よ、便利な時代になったものよのぉ
人は、太古より、闇を恐れて生きてきた、しかし、今はどうじゃ、こんな真夜中の闇をも明るく照らす。
人の欲の力というものに、我(われ)は逆に、怖ささえ感じてしまうぞ。
そうかもしれませんねぇ、便利な世の中になったかもしれませんが、そのぶん、人は大切な何かを、失くしてしまっているのかもしれませんね。
では、朱右よ再び出発じゃ
俺は目的地まで車を走らせた、まだ、真夜中の静けさが辺りを包んでいる。
さすがに、こんな時間じゃ、走っている車も少ないですね。
夜明けまで、まだ少し時間がありますし。
1時間ほど経過
白狐さん、慈尊寺(じそんじ)に着きましたよ
白狐さん[大声]
すー・すー・すー[寝息] もうラーメンは食べられないのぉ
さっきから、俺の話に全然返事がなかったのは、寝てたからなのか、寝言まで言ってるし。
白狐さん、おーきーて下さい着きましたよ[大声]
おおっ朱右、いやー、良く眠れたわい、運転ご苦労様じゃ
しかし、人に運転させておいて、呑気に寝てられますね
朱右、そう、嫌味を言うでない。我は、これから重大な事を成さねばならぬのじゃ
無駄に体力を消耗することは、何事においても、愚策というものじゃ。しっかり、肝に銘じておけ
朱右 では、これから準備をするぞ、車のトランクに積んである。
荷物を降ろすのを手伝ってくれるかのぉ。
わかりました、しかし、何でこんなに大きな荷物なんですか?
それは、すぐにわかる事じゃ、ほれ、まずは靴をこれに履き替えるのじゃ。
次に、この杖、それにこの日本手ぬぐいは頭に巻く用
上着はこれを着よ
そして、我が作った弁当が入っておるリュック。
これに先ほどコンビニで買った、ペットボトルを入れてじゃのぉ。
朱右よ、このリュックには、寒さに耐えれる、防寒着や、カイロ、魔法瓶の中身には暖かいお茶、登山用のライト、などが入っておるので、いざという時には使えるじゃろぅ。
よし、これで準備万端じゃ。
朱右は白狐の持ってきた装備をまとった、リュックが異常に重い
ふむ、朱右よ、なかなか似合っておるではないか
上から頭に、日本手ぬぐい、白衣(はくえ)の上着、白いズボン。
手には、よくわからない、ひらひらの赤いリボンが括り付けられ鈴のついた金剛杖(こんごうじょう)
足には地下足袋(じかたび)、背中には、重そうなリュック
白狐さん、この格好って・・・・
ほとんど、修行している、お坊さんが、でっかいリュックを背負っているようにしか見えませんが(汗)
なんじゃ、気に入らぬのか。
では、そなたが、子供の時に黒髪の龍と戦かった時に着た、白装束と袴に、我の呪でちゃちゃっと・・・・
思い出しました、あの、服って・・・
神社の神主さんが着ていそうな服ですよね。
もう俺、コスプレイヤーの気分で泣きそうですよ。
なら、今の格好でよかろう
それに、朱右よ、そなたが、神主様が着てそうな服といっておるが、白という色は特別の力を持っておるのじゃぞ
特に、白い袴(はかま)に紋入り(もんいり)をはいてよいのは、特級の神主様だけなのじゃぞ。
神である、我の呪で作り出す、それは高貴な装束なのじゃぞ。
ここで白狐様の豆知識じゃ
神主様の袴の色について
神主様の袴の色は階級によって違うのじゃ
神主様=神職は普段はいている袴の色と紋入りかどうかで、階級が一目でわかるのじゃ
最上位の特級神主は白袴に紋入りの袴をはいている
この特級神主は、全国に2万人ほどいる神主様の中にねたった、70人ほどしかいないのじゃぞ。
ちなみに、大きな神社でよく見る水色っぽい袴を、はいた神主様がいるが、浅葱色(あさぎいろ)の袴で三級の神主様じゃ。
祭などの特別な日には、白袴を階級にかかわらずはくこともあるがのぉ。
ついでじゃが、神主様と宮司様の違いも説明するぞ
神社には、大小に関わらず、各一名代表となる神主様がいる。
この代表神主様の事を宮司様と呼ぶわけじゃな。
以上で白狐様の豆知識
おわりじゃ
朱右、そなたが、子供の時に黒髪の龍と戦った時に、一時的にでも、龍の攻撃を防げたのは、霊験あらたかな装束であったからじゃぞ、それをコスプレとは、罰(ばち)当たりな発言じゃぞ。
あの白装束と袴って、そんなにすごいものだったんですか?
知らない事とはいえ、すみませんでした。
まー、わかればよい
しかし、最近、白狐さん、身体でいるときは、お洒落な服を着てますよね。
神体の時は、相変わらず、巫女服みたいなの着てますけど。
おお、朱右、そなたも、この服がよい感じなのがわかるのか。
最近ネットを見ておったら、お洒落な服の載っているサイトを見つけてのぉ。
たしか・・・桜子ワールドブランディングとかいう、ファション雑誌にも、よく出ているメーカーのサイトじゃったか。
げっ、めっちゃ有名な世界的なブランドですやん、そこだけ女子力高いのか
心の中で突っ込みをいれる朱右だった。
そのサイトの服のデザインを参考にして、我の呪でちゃちゃっと生成してじゃのぉ。
どうせなら、俺も、もっとお洒落な、登山用のパーカーとかをちゃちゃっと、生成してほしかったです。
ならば、リュックに入っている、お洒落ぇなぁ防寒着を着ればよかろう。
どうせすぐに脱ぎたくなって、リュックに戻すはめになるじゃろうが。
俺は、リュックから、防寒着を取り出し
上着の見た目だけは僧侶から登山家にジョブチェンジした。
ところで、話を進めるが、これから、そなたには、本当に修行をしてもらう、だから、上着を脱いだ格好でも、じきに違和感もなくなるじゃろう。
白狐さんが、いじわるそうな顔で、俺をみていた。
えええっ、修行って俺に何を、させるんですか!!
つべこべ、言ってないで、修行の無事をお願いしに、まずは、慈尊寺(じそんじ)にお参りじゃ。
霊峰光野山(こうややま)の麓に位置する。
慈尊寺(じそんじ)は、女人光野と呼ばれている。
なんでも、近代まで、光野山は女人禁制(にょにんきんせい)だったらしい、白狐さんに、半ば強制的に修行させられる事となった俺は、慈尊寺にお参りをすませ修行のスタート地点に立っていた。
参の巻 金剛
2.石道 4に続く