絵美が自宅へと帰って来た。
ただいま~。
絵美が自宅へと帰って来た。
おかえり。
家の奥から絵美の母が返事をした。
絵美は家に上がると、そのままリビングへ行く。
絵美の母は台所に居た。
遅かったわね。
それとも、早かったのかしら!?
どうして?
絵美はリビングで座りながら、母に訊き返した。
俊君、今日は
アルバイトじゃないの!?
午後からにしたんだって。
そうなんだ。
どうりで中途半端な時間に
帰って来る訳ね。
そう言いながら、
絵美の母もリビングに来て座った。
お父さんは?
隆行と釣りに行ったわ。
そうなんだ。
この間の釣りで、余程、
気分を良くしたみたいね。
そっか。
でも、隆行がお父さんと二人で
出掛けるなんて、珍しいね。
隆行はこの間の汚名返上しに
行ったみたいよ。
ふ~ん。
それより、あんた。
何?
俊君のところに泊まって、
セックスはしたの?
実は、昨日、俊君チには
泊まっていないんだ。
じゃあ、何処に泊まってきたのよ?
へへぇ~。
昨日は俊君と一緒に
ホテルへ行ったんだ。
あら、そうだったのね。
この前、俊君チへ
泊まりに行った時にさ。
うん。
俊君のお母さんに、
家でHをしちゃ駄目だって、
言われちゃって。
まったく、この子ったら。
絵美の母は頭を抱えた。
それで、俊君のお母さんが
ホテル代を出してくれて。
そんな事まで、
して貰っちゃったの!?
うん。
恥ずかしいったりゃ、
ありゃしないわ。
でも、今後は自分達で
なんとかしなさいって言われた。
そんなの当たり前でしょ。
そうだよね。
それにしても、俊君のお母さん、
よく出来たお人だわ。
うん。
私もそう思う。
そう思うって、あんた。
どうしたの!?
何でもないわ。
それより、あんた。
何?
そんなにセックスがしたいの?
え!?
少しの間をおいてから、絵美が答える。
うん。
じゃあ、仕方がないわね。
何が!?
来月からは、私が
ホテル代を出してあげるわ。
本当に!?
俊君だって、お金を貯める為に
アルバイトをしているんでしょ!?
うん。
だったら、ウチは絵美も隆行も
俊君に勉強を見て貰う訳だからね。
だから、家庭教師代って事でね。
お母さん、ありがとう~。
それに、迷惑をかけた上に
ホテル代まで出して頂いちゃって、
今更、山ノ井さんに
何とお詫びをしたらいいのか
分からないわ。
えへへ。
だから、それくらいさせて頂かないと。
その代わり、月に一回分だけだからね。
うん。
それと。
何!?
ちゃんと勉強はしなさいよ。
勉強はちゃんとしているよ~。
それは解っているわよ。
だから、そのご褒美でもあるんだから。
そうなんだ。
そして、今後もって事。
了解。
大丈夫。
大丈夫!?
私、今は勉強を好きになったから。
本当なの!?
本当だよ。
でも、あんた、ウチで一人で
勉強をしているところなんて、
見た事が無いけど。
一人で勉強なんて、
する訳が無いじゃん。
そんなんで、よく勉強が好きに
なったなんて、言えるわね。
えへへ。
まったく。
でも、私もう、俊君に教えて
貰わなくても、自分で勉強が
出来る様になったんだよ。
そうなんだ。
ただ、俊君が傍に居ないと、
勉強をする気になれないんだ。
本当に呆れちゃうわね。
まあ、いいわ。
えへへ。
それじゃ、
ちょっと掃除をするから、
自分の部屋へ行っていなさい。
はーい。
絵美はそう言うと、立ち上がって自室へと行った。
自室に行ってから、
幾らもしない内に絵美の携帯が鳴る。
由佳からの電話だった。
もしもし。
あんた、今、何処に居るの?
今はウチに居るよ。
そっかぁ。
じゃあ、これから、
ウチに来れる!?
いいよ。
そんじゃ、後でね。
絵美は携帯を切ると、リビングへ戻り、
掃除をしている母に声を掛ける。
お母さん。
ん!?
どうしたの?
私、由佳んチに行ってくるね。
あんた、お昼はどうするの?
いらない。
分かったわ。
それじゃ、行ってきます。
いってらっしゃい。
絵美は家を出ると、自転車に乗って、
由佳の家へと向かった。
もう幾らもしない内に正午になる。
照り付ける太陽が、まだ夏が終わっていない、
という事を主張しているかの様だった。