絵美

ただいま~。

絵美が自宅へと帰って来た。

絵美の母

おかえり。

家の奥から絵美の母が返事をした。

絵美は家に上がると、そのままリビングへ行く。

絵美の母は台所に居た。

絵美の母

遅かったわね。
それとも、早かったのかしら!?

絵美

どうして?

絵美はリビングで座りながら、母に訊き返した。

絵美の母

俊君、今日は
アルバイトじゃないの!?

絵美

午後からにしたんだって。

絵美の母

そうなんだ。
どうりで中途半端な時間に
帰って来る訳ね。

そう言いながら、
絵美の母もリビングに来て座った。

絵美

お父さんは?

絵美の母

隆行と釣りに行ったわ。

絵美

そうなんだ。

絵美の母

この間の釣りで、余程、
気分を良くしたみたいね。

絵美

そっか。
でも、隆行がお父さんと二人で
出掛けるなんて、珍しいね。

絵美の母

隆行はこの間の汚名返上しに
行ったみたいよ。

絵美

ふ~ん。

絵美の母

それより、あんた。

絵美

何?

絵美の母

俊君のところに泊まって、
セックスはしたの?

絵美

実は、昨日、俊君チには
泊まっていないんだ。

絵美の母

じゃあ、何処に泊まってきたのよ?

絵美

へへぇ~。
昨日は俊君と一緒に
ホテルへ行ったんだ。

絵美の母

あら、そうだったのね。

絵美

この前、俊君チへ
泊まりに行った時にさ。

絵美の母

うん。

絵美

俊君のお母さんに、
家でHをしちゃ駄目だって、
言われちゃって。

絵美の母

まったく、この子ったら。

絵美の母は頭を抱えた。

絵美

それで、俊君のお母さんが
ホテル代を出してくれて。

絵美の母

そんな事まで、
して貰っちゃったの!?

絵美

うん。

絵美の母

恥ずかしいったりゃ、
ありゃしないわ。

絵美

でも、今後は自分達で
なんとかしなさいって言われた。

絵美の母

そんなの当たり前でしょ。

絵美

そうだよね。

絵美の母

それにしても、俊君のお母さん、
よく出来たお人だわ。

絵美

うん。
私もそう思う。

絵美の母

そう思うって、あんた。

絵美

どうしたの!?

絵美の母

何でもないわ。
それより、あんた。

絵美

何?

絵美の母

そんなにセックスがしたいの?

絵美

え!?

少しの間をおいてから、絵美が答える。

絵美

うん。

絵美の母

じゃあ、仕方がないわね。

絵美

何が!?

絵美の母

来月からは、私が
ホテル代を出してあげるわ。

絵美

本当に!?

絵美の母

俊君だって、お金を貯める為に
アルバイトをしているんでしょ!?

絵美

うん。

絵美の母

だったら、ウチは絵美も隆行も
俊君に勉強を見て貰う訳だからね。
だから、家庭教師代って事でね。

絵美

お母さん、ありがとう~。

絵美の母

それに、迷惑をかけた上に
ホテル代まで出して頂いちゃって、
今更、山ノ井さんに
何とお詫びをしたらいいのか
分からないわ。

絵美

えへへ。

絵美の母

だから、それくらいさせて頂かないと。
その代わり、月に一回分だけだからね。

絵美

うん。

絵美の母

それと。

絵美

何!?

絵美の母

ちゃんと勉強はしなさいよ。

絵美

勉強はちゃんとしているよ~。

絵美の母

それは解っているわよ。
だから、そのご褒美でもあるんだから。

絵美

そうなんだ。

絵美の母

そして、今後もって事。

絵美

了解。
大丈夫。

絵美の母

大丈夫!?

絵美

私、今は勉強を好きになったから。

絵美の母

本当なの!?

絵美

本当だよ。

絵美の母

でも、あんた、ウチで一人で
勉強をしているところなんて、
見た事が無いけど。

絵美

一人で勉強なんて、
する訳が無いじゃん。

絵美の母

そんなんで、よく勉強が好きに
なったなんて、言えるわね。

絵美

えへへ。

絵美の母

まったく。

絵美

でも、私もう、俊君に教えて
貰わなくても、自分で勉強が
出来る様になったんだよ。

絵美の母

そうなんだ。

絵美

ただ、俊君が傍に居ないと、
勉強をする気になれないんだ。

絵美の母

本当に呆れちゃうわね。
まあ、いいわ。

絵美

えへへ。

絵美の母

それじゃ、
ちょっと掃除をするから、
自分の部屋へ行っていなさい。

絵美

はーい。

絵美はそう言うと、立ち上がって自室へと行った。

自室に行ってから、
幾らもしない内に絵美の携帯が鳴る。

由佳からの電話だった。

絵美

もしもし。

由佳

あんた、今、何処に居るの?

絵美

今はウチに居るよ。

由佳

そっかぁ。
じゃあ、これから、
ウチに来れる!?

絵美

いいよ。

由佳

そんじゃ、後でね。

絵美は携帯を切ると、リビングへ戻り、
掃除をしている母に声を掛ける。

絵美

お母さん。

絵美の母

ん!?
どうしたの?

絵美

私、由佳んチに行ってくるね。

絵美の母

あんた、お昼はどうするの?

絵美

いらない。

絵美の母

分かったわ。

絵美

それじゃ、行ってきます。

絵美の母

いってらっしゃい。

絵美は家を出ると、自転車に乗って、
由佳の家へと向かった。

もう幾らもしない内に正午になる。

照り付ける太陽が、まだ夏が終わっていない、
という事を主張しているかの様だった。

エピソード21/朝帰り

facebook twitter
pagetop