――キルケー魔法女学園 研修施設 書斎――
――キルケー魔法女学園 研修施設 書斎――
わぁ……
高い天井に光を取り込む大きな窓。
反対側は一面書棚で、ギッシリと魔法書が並んでいる。
窓の近くには書斎机が置かれていて、遠くからでも香りそうなくらい艶のいい薔薇が生けられていた。
書斎、でしょうか
ここは清掃されているし綺麗だな。何より――あの薔薇が人の出入りを証明している
ええ。少なくとも数日の間に
うふふ、施設管理者を殺した犯人だったりして。もしくは幽霊かな~?
また脅すようなことを……サリー?
立ち並ぶ巨大な書棚を目の前に、サニーはひとことも発しなかった。
たくさんの魔法書。それも見たことのないものばかりだ。
それ自体がじんわりと魔力を帯びているようにも見え、サニー以外はそうそう近寄ろうとはしなかった。
サリー。考えなしに触れないほうがいいかもしれません。
何か罠があるかも
でもこの魔法書、図書館にもなかった本ばっかりだよ。
高等魔法の理論と発展……特殊な魔法道具の作成法……魔界と冥界について……
……サリー
高位悪魔との交渉と、召喚――……
サリー!
本の題名を口にしながら、サニーは引き寄せられるように書棚に向かう。
レイリーが名を呼ぶ声もまったく耳に入っていない様子だった。
待て、サリー。そんな魔法書ならなおのこと、勝手に触れては駄目だ
でも、この魔法書があれば……召喚、できるかも……!!
友人たちの制止を振り切り、サニーの指先が魔法書に触れる。
いや、触れようとした。その時。
バチッと電撃のような衝撃がサニーの手を襲った。
――結界?
強力な結界ですわ。こんな立派な結界、そこら辺の魔女では――
張ることができないだろう、とエマニュエルが言いかけた。
しかし彼女の声の代わりに響く声があった。
凜としてよく通る、淀みない女性の声。
ごめんなさい、ケガしなかったかしら?
え……!?
この声……!!
だいぶお騒がせしてしまったみたいだし、お詫びをしなくてはね
声の主を探して全員が辺りを見回す。
女性の姿は見えないが、パチンと指を鳴らすような音がした。
すると天井からふわりふわり、太陽の光に包まれながらいくつもの花びらが降ってくる。
すごい花びら……!
……桜吹雪みたいだ……
舞い落ちる花びらは床に落ちると雪のように消える。
それを見て初めてこれは魔法なのだとサニーたちは気付く。
部屋はまるごと花畑になったような香りで満たされ、その場にいた全員の表情が和んだ。
美しいものを見ると、たいていの人は心持ちが変わる。
なんて美しい光景なんでしょう
こんな魔法もあるんだ~。へええぇ
…………
そして花びらがすべて落ちきった頃、いつの間にか書斎のイスに一人の女性が座っていた。
あ……!
私の書斎へようこそ。今のはささやかだけれどお詫びの気持ちということにしておいて
キルケー学園長!!
全員が驚き、姿勢を正す。ただしサニーを除いての話だが。
……え? 学園長??