――キルケー魔法女学園 研修施設 部屋――
――キルケー魔法女学園 研修施設 部屋――
はぁ、はぁ……よくわからないまま部屋に飛び込んでしまいましたけど、この部屋は……?
さらにほこり臭くなったねー。物置なのかな? 色んな物が置いてあるけど
回廊を抜けた場所にあった部屋は暗く、室内を照らす電球の一つは切れていた。
家具や本などが雑多に置いてある中、ひとかたまりの山がサニーの目に留まる。
なんかこの辺の物、面白そうだなー。この時計とか、普通とは文字盤が違っててオシャレだよ。
動いてないのかな、時間が全然合ってないし――
何の気なしに、サニーが置き時計を手に取り、反時計回りに針を動かす。
しかしそれを見た友人たちは、サニーを指差して固まった。
サリー、あなた……!!
あはははは。サリー、背が縮んじゃってるよ
へ?
当人が自分の姿を改めると、確かに言われた通り身体が一回り小さくなっていた。
しかし、背が小さくなったと言うよりは。
なんで子供になっちゃってんの?
……子供の頃のサリーも、今と大差ないのですね。あらゆる意味で
何それどういう意味
成長が感じられないと……いえ、今はそれどころじゃありませんでしたわ
ど、どうするんですかその姿……! その時計のせいでしょうか!?
まあそうだろうね
サニーが頷きながら時計を棚に戻すと、すぐに彼女の容姿は元に戻った。
手に持たないと効力がないみたいだね
ああ、よかった……
なるほど。針の先の文字が『-5』になっているな。
5歳若返った姿になる、ということだろうか
へええー、おもしろーい。歳を取るほうもやってみてよサリー
なんで人にやらせようとすんの。ていうかこの文字盤……100まである……
100年後の姿――
それ以上は誰も続けない。
またも寒気を感じたようで、レイリーは友人たちを部屋から出るように促す。
ど、どうやらこの部屋には魔法道具があるようです。
安易に触ったら危険かもしれません
そ、そうですわね。とりあえず……100年後の姿なんて見たくありませんわ……
次の部屋次の部屋へと、急ぐサニーたちだった。
――キルケー魔法女学園 研修施設 廊下――
最後にたどり着いたのは。
地下に潜ったはずの階段を、また登ったところにあった突き当たりの部屋だ。
扉には月桂樹を模した装飾が彫られており、ついさっき掃除したかのように汚れはなく、美しかった。
立派な扉だね。もう残ってるのはこの部屋くらいかな。
……でも鍵がかかってる
何かありそうですね。気になりますけど、鍵がかかってるなら――
夫人は鍵開けの魔法使えたよね~?
ええ、使えますけど……開けるんですか? 本当に?
ここまで来て諦めるのもおかしいでしょ。この部屋で最後なんだから
そうかもしれませんけれど……
何かあったらすぐ逃げられるようにしておこう
うん。大丈夫だよ、アタシが先頭を歩くから
……わかりましたわ。では――
エマニュエルがひとことふたこと呟き、小さな光がドアノブ周辺を包む。
何度か瞬いたあとそれらは弾け、代わりにガチャリと音がした。
成功です
おっけー。じゃあ、行こう
迷いなくサニーはドアノブに手をかけ、扉を開く。
友人たちもためらいながらそれに続く。
こういう時のサリーはやけに頼りになって、恐ろしいくらいですわね
自分の意思がハッキリしていて、羨ましいな……
ちゃんと先頭行ってくれるのは助かるよね~
無謀とも思えるが、サリーが決断してくれるからこそ前に進める
褒めすぎると調子にのると思いますけど。
でも、そうですね――サリーのそういうところは、私も好きです
ゆっくりと扉を開いた先の部屋は、光に満ちあふれていた。