ここは大きな川、隅田川が流れる古都、浅草。

その川沿いには大昔から数多くの寺院があり、その寺院の数だけ昔話が脈々と息ついている。

それらの一角にある木母寺には梅若丸伝説というのがある。
















昔々は平安時代、

琵琶湖で人買いにさらわれた少年梅若丸が道中の隅田で病にかかり非業の死を遂げる。


その際に残した時世の句が

『尋ね来て 問わば応へよ 都鳥 隅田川原の露と消えぬと』

といわれ、百人一首でも歌われている。
















その句に呼ばれるかのように梅若丸を探しに来た母、花御膳は隅田にやってきた。
















そして里人たちから梅若丸の死を知らされ、深く嘆き悲しみながらも彼らと共に菩提を建てる。
















花御膳はしばらくその近辺に暮らし始めるが、その悲しみに耐えきれず川に身を投げて命を絶ったと伝えられている。














そんな悲運の母子を供養するために建てられた庵を現代の形に残したのが梅柳山木母寺の起源とされている。
















それから数百年の時の流れの中で、

果たして母子の魂は再会できたのか、

それともいまだ探し彷徨っているのか。
















あるいは輪廻転生の流れに乗り、

現生の母子に生まれ変わってまでもなお運命の悪戯に振り回され、

すれ違い続けているのか。















その物語の結末は誰にもわからず、

ただ徒に時の風の中で真実とも嘘とも区別できずに揺らめいている。


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