事の始まりは二週間前の学校内での事。入学してからしばらく経ち、生徒たちが落ち着き始める頃。休み時間、みんながわいわいやっている時、僕は自分の席で一人勉強をしていた。(真面目だと言われる原因はこれだろうか)
そのとき一人の男子が声をかけてきた。

広瀬

一人でなにしてんだよ。

その男子こそ広瀬だった。今思えばそれを無視しとけばこんな面倒くさい事にはならなかったと思うがそれはおいておく。

竹井

…何か用ですか。

見た目だけで住んでる世界が違うと判断した僕は、すぐさま距離をおこうとした。しかし、そんな僕の気持ちを知らない彼は続ける。

広瀬

一人で勉強なんてつまらなくねぇの?

竹井

いいじゃないですか。あなたみたいに馬鹿にはなりたくないですし。

広瀬

ったく、いきなり馬鹿呼ばわりかよ。
…お前、名前は?

竹井

竹井です。

広瀬

竹井か。俺は広瀬。

別に聞いてない。

広瀬

タケって友達と遊んだ事あるのか?

いきなりあだ名で呼んでくる。なんだこいつは。

竹井

記憶に無いですね。勉強ばかりしてきたので。

広瀬

うそだろ…

やっと会話が終わると思い、再び勉強しようとしたその時、腕を引っ張られた。

広瀬

じゃあちょっとこいよ。

想定外。
僕はどんどん広瀬に引っ張られていく。そして見えた先には女子の群れ。嫌な予感しかしない。
その内の一人が広瀬に気づいた。

女子

あっ!広瀬く〜ん!

女子

え!広瀬君!?

そこにいた女子全員が一斉にこっちを見た。
うん、怖い。
しかし、広瀬はそんなことおかまいなく突っ込んでいく。さすが女たらし、慣れていらっしゃる。
そして目の前に着いたとたん、僕を放り出した。

広瀬

こいつのことどう思う?

なんだその質問は。
しかし、彼女たちはそれを聞いてじろじろ僕を観察する。

女子

う〜ん、ちょっと眼鏡とってみて。

こんな経験はしたことない僕は言われるがまま眼鏡を外す。

竹井

ど…どうでしょうか。

しまった。パニックになりすぎてとても変なことを聞いてしまった。これじゃ自ら値踏みしてくださいと言っているようなもんじゃないか。恥ずかしい。穴があったら広瀬を埋めてやりたい。
自然と顔が赤くなる。

女子

あ、結構かわいいかも。

女子

照れてる〜

経験した事の無い感情に支配された僕はその場から逃げ出した。
っくそ、なんだよかわいいって。せめてかっこいいだろ。ってそういう問題じゃない。

広瀬

女の子に慣れてなさすぎだろ。

という広瀬の声が後ろから聞こえてきた。
いや、お前が慣れ過ぎなんだよ。と、思いつつ僕は屋上に向かって走っていった。

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