天正十年 六月一日

京都 本能寺

織田信長

ふぅ、やっとついたの

濃姫

ここが本能寺でございますかや?

森蘭丸

坊丸、力丸!馬を!信長様、こちらです

織田信長

あぁ、蘭丸、儂別に一人で降りれるから、そんなとこで踏み台にならなくても…

森蘭丸

なりません!この蘭丸めを踏んでくだs…もしものことがあれば、この蘭丸、腹を切らねばなりませぬゆえ!

織田信長

今、変な願望漏れなかった?ま、いいか…じゃ、悪いけど…

ヒョイ

森蘭丸

(ズシッ)恐悦至極!

織田信長

え!?なに!?どうして!?

濃姫

上様ぁ。帰蝶、怖くで降りられぬでございます

織田信長

えー?いつも颯爽と乗り降りしてなかったっけ?木曽の女人武士、巴御前の化身なるぞー、って

プンスコ

濃姫

いいから、お手をお貸しくださいませ!

織田信長

はいはい、気を付けてね

キャピ

濃姫

ふふふ、やはり上様はお優しい殿方でありまするな

メラメラ

森蘭丸

おのれ…!

ニヨニヨ

濃姫

ククク…

織田信長

信忠はちゃんと妙覚寺についたかな?

濃姫

利治めもついておるゆえ、平気でございましょう。それに信忠は吉乃殿に似て頭の良い子です。ご心配召されるな

織田信長

そうだな…まぁ、とにかくずいぶん馬に乗ってたから儂お尻痛くなっちゃった。座敷で休みたい

森蘭丸

お尻が痛い!?

濃姫

妾が揉み解して差し上げましょうぞ

森蘭丸

い、いえ!それは某が!女人様の御手に大事があってはいけませぬ!

濃姫

小姓は黙っておれ!妾とて木曽の女人武士、巴御前の化身と呼ばれる薙刀の名手ぞ!そこらのか弱い女人と一緒にしてくれるな!

森蘭丸

信長様!ここは某にお頼みください!

濃姫

なにを!上様!妾を重宝なさいますかや!?

織田信長

え、えぇっと…あ…あ、そうだ!儂、腹減っちゃったな!じゅ、住職ー!頼んでた夕飯、準備できてるー?

濃姫

上様!お逃げになるのですか!?

森蘭丸

信長様!お待ちください!褥は!褥はこの蘭丸とー!

ナマズは泥に潜った

よし…引き続き、目を離すな。合図の音を聞きもらすなよ

御意に

同刻

備中 高松城

羽柴秀吉 陣中

加藤清正

秀吉様、安芸守様御一行がお見えにございます

羽柴秀吉

おぉ、来おったか。お通ししろ

加藤清正

はっ…

ザッザッザッザッ

毛利輝元

お初にお目にかかる、羽柴殿

羽柴秀吉

輝元殿、わざわざご足労願い申し訳ないの

毛利輝元

・・・

羽柴秀吉

じゃが、大将殿みずから参られた、ということは、ご相談しておった件については承諾してもらえるということでよろしいな?

毛利輝元

左様にございます

羽柴秀吉

ふむ、良い判断とお見受けいたす。あー、なにぶん我が殿は世に聞く『魔王』であるのでなぁ、従わぬものの首は必ず取らぬと気がすまぬタチでの

毛利輝元

…我が家臣郎党と領地は安堵していただけるな?

羽柴秀吉

もちろん、違わぬよ。じゃぁ、彼の城の清水宗治とかいうのはダメじゃな。この儂をサルと小馬鹿にしおった

毛利輝元

ぬぅ…

羽柴秀吉

なに、心配召されるな。こちらからも人質を出すと、その僧兵にも伝えたはずであるが?

安国寺恵瓊

は…黒田殿との申し合わせございますれば…

毛利輝元

…心得た

羽柴秀吉

うむ。清水殿は、その身を持って輝元殿、ひいては毛利家の名誉をお守りになる。大変名誉なことではないか

毛利輝元

…はっ

羽柴秀吉

それと、お頼み申し上げていた軍勢の準備は出来ておられるかな?

毛利輝元

できてございます。あとは如何様にもお使いいただけます…

羽柴秀吉

万事解決、と言ったところかの。よし、酒を持て。清水殿への差し入れも忘れるでないぞ。別れ盃もなしに腹切りなどさせられぬ

加藤清正

はっ、では、準備致します

羽柴秀吉

うむ。他の者は出陣の準備を整えよ。上様にこの義をご報告にまいらねばならぬからな…くふふ、がはははは!

毛利輝元

・・・

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