天正十年 五月三十日
丹波亀山城
天正十年 五月三十日
丹波亀山城
叔父上殿。利三、戻りましてございます
戻ったか。して、首尾は?
はっ。各所への密偵、早馬の準備、滞りなく終わりましてございます
あい分かった。苦労を掛けたな
滅相もございません。しかし、叔父上。なぜこのような手管を?
うむ…すこし、な…
…?
トタトタ
御免!
構わぬ
戻りましてございます
おぉ、左馬之助か。入れ
はっ
どうだ、家臣達の様子は?
はい、いずれも意気軒昂。安芸守様を返り討ちにせんと、高らかに鬨をあげてございます。藤田殿、茂朝殿の郎党も、直、整いましょう
左様か。苦労であった
はっ…光秀様、ひとつ、よろしいでしょうか?
ん、なんだ、左馬之助?
此度の戦に出られた光秀様は、どこか気が抜けてございます
左馬之助!貴公はなにを申すか!
光秀様。そのようなご様子は士気に関わります。ましてや、光秀様は一軍の将であらせられます。その迷い、我ら最大の敵となりましょう
黙らんか!その首、よほど要らんと見える!
チャキッ
良い、利三。左馬之助の申すことはもっともだ
し、しかし!
私は家臣からの忠言を粗末には扱わぬよ。左馬之助、そなたには私がそのように見えておると?
恐れながら
ふむ、そうか…。利三、お主はどうだ?
…恐れながら…某も、気にはかかってございました…
そうか…
光秀様。我ら、光秀様のいかなる采配をも受け入れる覚悟はできております。迷われず、御心のままに決断されるがよろしいかと
うむ、感謝するぞ、左馬之助。だが…主らの言うように、私もまだ迷っておるのだ。決めかねている
…迷われている、というのは、いったい、どういったことでございましょう?
聞きたいか?
そのための我ら重臣と心得ております
…そうだな…では、しかと聞いてくれ。御屋形様のことだ
…信長様、でございますか…?
うむ…謀反だ…
!!!
!!!