精神科の初診の予約を終えた後、夫が言った。

結局、初診行けるの再来月になっちゃったね~

だから精神科は予約いっぱいって言ったじゃない!

まぁそう言うなって。
時間あるんだしさ、受診までに伝えないといけないこととかまとめておいてね。

わかった。

精神科の初診で伝えることか~

「精神科」「初診」「伝えること」
このようなワードで検索し、色々なページを読んでいく。

出身地や家族構成なんかも情報として必要な場合もあるのか…それもそうか…。

私はこのような感情が激しく動く状態になってしまったのにはいくつか思い当たる点があった。
ひとつは幼少期から「家族を好き」と思った記憶が全くないのだ。
また、物心ついた頃から母親はヒステリー気味だなと感じていたし、とあるきっかけから少々うつっぽくなったこともある。何事にもとても悲観的な人だ。
自分の性格が徐々に母に寄っていくのを感じていた。

このままじゃ良くないよな…少なくとも、娘が物心つくまではにもう少し穏やかな状態になりたい…。

私はある事情からメンタルの病気には10代の頃から関心があったので多少の知識はあった。リストカットなども経験しており自分は「境界性人格障害」ではないかと長いこと疑っていた。

「境界性人格障害」の特徴の一つ、【不適切で激しい怒り、または怒りの制御困難】が私はとても強い。
自傷していた過去や自殺願望が常にうっすら頭をかすめていた時期が長く、こういった症状は年齢とともに落ち着いていくことが多いらしい。
私も自傷や自殺願望は娘が産まれて以来一切なくなっていたが、感情を抑えることがどうにも苦手だった。
なんとかしたくてよく心理学の本やウェブも読み漁った。

「生きづらさを抱えた人」か…。

メンタルの病気に関して調べて行くとよく見かけるこのワードが私は急に気になった。「境界性人格障害」ではどうにもしっくりこないのだが、この激しい怒りは何が原因なのだろう?
この状態って生きづらいっていうの?夫とは喧嘩しまくってるけど…。

生きづらいと思ったことはなかったけど、自覚がないだけかもしれないな…。喧嘩が多すぎるのは人間関係がうまくいっているとは言い難いし。
そもそも「生きづらい」ってどんな感じを指してるんだろう?よくわからないや…。

あまりにも小さいことで大げんかになってしまうのを繰り返している状況は果たして普通だろうか。どういう人が生きづらいと感じているのか。そこで「生きづらい」とはどんな感じか調べ始めた。
ふと、その時見たページのとある言葉が目についた。

愛着障害…。

愛着障害って、赤ちゃんの頃親から放置されたりして起こす障害だったっけ…。
サイレントベビーとか…?
生きづらさと関係あるの…?

子供を産んでから乳児期の接し方など色々なことを調べたので言葉は聞いたことがあるが、ぼんやりと「親から愛情をもらえなかった子が起こす障害」位の認識だった。
具体的にどんな症状を引き起こすのかまで調べたことがなかった。
基本的に娘の要求にはきちんと応えているし、自分には関係ないものと思っていた。

ん…?
いや…ちょっと待ってよ…これ、私自身が当てはまってる…?

思い当たることがたくさん書かれたページを見て驚いた。
色々な条件があったが、
・親から放っておかれた
・親が自分よりも他の兄弟を可愛がった
・親からあまりかまってもらえなかった
・親からいつも否定された
・親の期待や都合ばかり押し付けられた
・親が何らかの愛着障害を有しており、無意識レベルで子供へ受け継がれた
この辺りには身に覚えがある。

私の家はごく普通の家庭ではあったが、幼少期、極端に放っておかれた過去がある。母が再婚家庭で育っていることもあり、不安定なところがあるのも今なら合点がいった。

そうか、私は愛着障害なのかも…。

私には少し年の離れた兄が一人いる。
この兄が、小さい頃は非常に手がかかる子だった。
幼少期はいつも兄が優先的に対応されていたように思う。

私が赤ちゃんの頃はお腹が空いて泣いている時も母は兄の対応に追われ、ようやく様子を見に行くと涙を流したまま寝てしまっていたというエピソードをよく聞かされていた。

ていうか、ネグレクト(育児放棄)じゃねーか…
そこまで行く前に様子見ろよ…。

産まれて間もなくは団地住まいだった。
ある時は寝ている間、母が外で団地の人と井戸端会議をしていると、ミルクの時間をすっかり忘れていたなんていう話も聞かされたことがある。
思い出し慌てて戻るとやはり泣き疲れて眠っていたらしい。

今なら完全に虐待案件だな…

覚えていないだけなのかもしれないが、小さい頃の記憶と言えば兄にいじめられたことばかりで、特に小さい頃は母に遊んでもらった思い出は全くない。母にはいつも怒っていて怖いという印象しかない。
物心ついてからはできるだけ同じ空間にいることを避けていた。

思い出して悲しくなる。

娘を育ててると思うんだよなぁ、「私はたぶんこんなに手をかけてもらってない」って。

よく
「子供を産んで初めて親の大変さがわかった」
「親に感謝できるようになった」
「親の気持ちがわかった」
などとという言葉を聞くが、私にはこの感情はさっぱり湧かなかった。娘と過ごせば過ごすほど、自分が放っておかれた事実を突き付けられるだけだった。
もう一人子供を、と思った時にいつも引っかかるのは「上の子を優先してあげましょう」という言葉。

下の子を放置したことによる弊害はいつもスルーされてるように感じる…。
乳児期に応えてあげることって重要なんだろうに…。

もちろん「上の子を優先」というのは私がされたような極端な放置を下の子にしろということではないのは理解している。
でも、自分がいざ二人育てる時に同じようなことをしてしまうのではないか。逆に下の子を優先しすぎて娘をないがしろにしてしまうのではないか。
そういう不安がつきまとう。

ああ、でもなんか答え見つかった感じがする…。
自分の不安定さの根本的な原因はたぶんこれだろうなぁ…。

まぁでも自己診断は禁物だからね、あくまで可能性が高そう位に思っておこう…。

そんなことを考えつつも、私は愛着障害に関するサイトを読み漁った。初診まではまだひと月以上ある。

続く

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