クロノ

な、なんか後ろにいるんですが……

移動する一行。
相変わらず道草くって、物色して、を繰り返しながら進む。
その道中において、変なのが増えてきていた。

クロノ

グロいグロいグロいグロい!!

現在、彼女達を見つけて追っかけてくる生物兵器もよくわからない腐った系の男だった。
意にも介さない彼らは普通に振舞う。

紅茶

あー……なんだろアレ

スリッ・ポー

別にどうでもいいだろう
追ってくるなら、仕留めるまで

スリッポンがやれやれ、とクロノを降ろして立ち向かう。

スリッ・ポー

仕方ない……
今度はこの俺が直々に、実力の差というものをバケモノに教えてやるか

スリッ・ポー

クックック……
俺の右目が疼いて止まらぬ、敵を屠れと囁き続ける……

何かキメ顔で言っている。何がしたいんだこいつも。
唖然とするクロノに、紅茶は説明する。

紅茶

さっきの質問だけど……
わたしとスリッポンは普通の人間だよ
リアルのことを聞かないのがルールでしょ
自分でクロノさんに説明するのはアンゴラさんに許してもらえたから、教えておくね
わたしたちは、正確に言うとちょっとした特異な能力があるの
あいつは『グリモワール』って世間で言われてる一流の悪魔憑き

紅茶

で、わたしはサイキッカー
俗に言う超能力者なんだ
まだ人間をやめていないよ

……はっ?
何を言っているんだ、紅茶は。
俄には信じ難い事を説明されても……。

紅茶

まぁ、論より証拠だね
みてて、あいつの悪魔術

言われるままにその方向を見る。
彼は手を顔に当てて、呟いている。

スリッ・ポー

――レメゲトン

刹那、目から何がが全面に浮かび上がった。

クロノ

え゛ッ!?

蒼白い……魔法陣!?
それが背後からでもはっきりわかるほど、可視化されて浮かんでいる。
彼は不敵に笑って続ける。

スリッ・ポー

俺と契約している72の悪魔よ
貴様に相応しい舞台が整った

スリッ・ポー

来れ序列八位の公爵
バルバトスッ!!

僅かな時間に、強烈な眩い光が生まれる。
思わず手で目を覆う。
一瞬の出来事に、すぐにどうなったかを確認する。

そこには、聞いたことのある名前の悪魔が一人、人の姿をして立っていた。

バルバトス

何用だ、主よ
余程の事態でなければ喚ぶなと言ったはずだ

スリッ・ポー

見ればわかるだろう、狩人
貴様の出番だと俺が判断した
早く奴を片付けろ

バルバトス

まったく……なんの話――

アレがバルバトス?
なんかかっこいい、背丈の大きい男性の姿をしている。
で、その男性が疲れたように背後を見て、

バルバトス

…………なんだこの珍妙な生き物は?

殴られる一歩手前で、バケモノの振るった拳を受け止めた。
理解できない、というふうだった。
そのままぐしゃっと拳を握り潰してしまう。
……ああ、本物の悪魔だこの人。
汚れた手を見下ろしても顔色一つ変えない。

バルバトス

……脆い……
所詮は人間の作り出した玩具か……
で、主よ
このようなチンケな場所で一体何を探している
我が知っているならば答えるが?

振り返り、主であるスリッポンに問う。
こちらも理解しがたい、という呆れの表情が強い。

スリッ・ポー

浪漫だ、俺たちが探しているのは
何なら貴様も付き合うかバルバトス

バルバトス

謹んで辞退させてもらおう
人間の酔狂に付き合うほど、我らソロモン72柱は暇ではない

クロノ

ソロモン……っ!?
あれはやっぱりあのバルバトスか……

ソロモン72の悪魔。
かなり有名な悪魔たちの集団。
そのうちの序列八位……。
道具なんぞ使ってんじゃねえで有名なバルバトス。
あれがそのオリジナルだというのか。

バルバトス

まぁいい
では何時も通り決めればいいのだな主よ

スリッ・ポー

構わん

バルバトス

承知した

バルバトスはバケモノの頭を鷲掴みにする。
藻掻くバケモノに、ニタリと唇をつり上げ嗤う。
そして、囁いた。

バルバトス

ぶるぁ

クロノ

なんでそこで『ぶるぁ』!?

意味不明な掛け声と共にバケモノの頭をクラッシュ。
ぼとりと足元に堕ちる化け物の身体。

バルバトス

終わったぞ、主よ
また何かあったら喚ぶがいい
但し、今度は少しはまともな場所でな

それで気が済んだのか、バルバトスはさっさと虚空に消えていった。
……アレがバルバトス?
「ぶるぁ」は元々の掛け声だったのか……。

スリッ・ポー

ふぅ、片付いたか……
ん? どうした新人

クロノ

……いえ、何でも……

戻ってくるスリッポンに、どう対応すればいいのか分からないクロノ。
フィクションの中だけと思っていた悪魔憑きが居るなんて。
しかもソロモンの全ての悪魔を統べている、と。
桁が違いすぎる。

スリッ・ポー

なんだ、悪魔が見たいのか?
ならば有名どころなのを何体か暇潰しに喚ぶが

クロノ

呼んでも怒らないんですかッ!?

スリッ・ポー

奴らは基本暇だ
護衛も兼ねて喚んでおけば、恐らくは応じてくれるだろう

……マジっすか。
暇なんですか悪魔の方々って。

紅茶

そんじゃあケルベロスでも呼んでよ

ストレア

じゃああたしはフェネクスを要求するわ
あの鳥を焼き鳥にしてやる

好き勝手言い始めるストレアと紅茶。
一応、格上の悪魔相手なのですが……とツッコミを入れても無駄か。

ミスターアンゴーラ

あんまりよびだして騒がしくするなよ
増えれば移動に時間がかかるからな

アンゴラがそれを許してしまう。
あれよあれよ話は進む。
二人までということで、スリッポンは護衛を呼び出すことにした

フェネクス

誰が焼き鳥だってコラァ!
やんのかテメェバカネコ!

ストレア

ふふっ、相変わらずねデブ鳥
皮をひっぺがして焼いて食べてあげるわ

フェネクス

ちょ、やめ!
爪出すなあぶねえだろうが!!

ストレア

ヘタレ鳥が……
ちょっと暇なの、遊び相手になりなさい
チェシャも一緒にね

フェネクス

はぁ!?
そんなことの為に呼び出されたわけじゃ

ストレア

う、る、さ、い

クロノ

……
悪魔が猫に遊ばれてる……

で、だ。
ケルベロスは腹を下してダウンしていてこれない。
フェネクスがそれを伝えに来て召喚された。
……イメージとかなり違う小鳥のような姿で。
現世では本気出したくないらしい。

チェシャ

ニャニャニャニャニャニャッ!!

ストレア

ほらほら、逃げてご覧なさいよ
ソロモンの悪魔が聞いて呆れるわねェ

フェネクス

ぐふぇ!?
て、テメェら……容赦なさすぎだろ……

フェネクス

ギャァーーーー!!

……何の為にきたんだこいつ。
イメージぶち壊し。酷すぎる。
そんなこんなで。

遊び道具と書いてサンドバックと呼ぶデブ鳥こと、フェネクスが仲間になった!!

VS謎のキモい兵器  (何の犠牲だ!?)

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