週末の国道は、多くの車でひしめいていた。

何度目かという赤信号につかまって、運転席の男は溜め息をつき、何度目かの煙草に火をつけた。

瞬く間に、狭い車内に煙が充満する。

悪いね兄貴。休みの日に

まったくだ。忙しい社会人を足に使って自分は旅行。大学生はいい身分だな

助手席の男に声を掛けられ、運転席の男は窓を数センチだけ開けて、ふうっと煙を吐き出した。

それと一緒に苦言も吐き出す。

だが場の空気が険悪になる前に、彼はフッと相好を崩した。

ま、遊べるのも今のうちだけだからな。

それよりも、すっかり渋滞にハマってしまったな。電車の時間は大丈夫か?

ああ、自由席だし、きままな一人旅だ。問題ないよ。荷物持って歩かなくて済む方が助かる。雨も降ってるしな

そうか、と運転席の男が答えたところで、信号が青に変わる。ゆるゆると車が動き出し、男もアクセルに足を乗せた。

一本貰っていい?

ああ

ほら

運転席の男が片手で煙草を軽く振り、飛び出た一本を助手席の男が礼を言って取る。

いい歳したオッサンにしちゃ可愛い煙草だな。前はマイセンじゃなかったか? なんで銘柄変えたんだよ

彼女がこれにしろって言うからさ。縁起が良さそうだからって。

大体オッサンって、俺はまだ二十代――

はいはい

適当に相槌を打ちながら、助手席の男は貰った煙草にシガレットライターで火を点けた。

休日と雨天が相まって道はかなり混んでいたが、それでもゆるやかには流れている。

吸い終わる頃にはつくかな

煙と一緒に、男は助手席から独り言を流した。

アンラッキーストライク 1

facebook twitter
pagetop